荒地から緑の生い茂る地に –明石清正–

 

 

明石清正
カルバリーチャペル・ロゴス東京 牧師
ロゴス・ミニストリー 代表

日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  論説委員

※イスラエルへは過去五回訪問したことがあり、二回は、聖地旅行の企画を手がけています。「ホーリーランドツーリスト」「聖地旅行記

地図によって微妙に変わるイスラエル領

第一次中東戦争後の休戦ライン 出典:http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/iraq/draft/iraq-1_palestina.htm

 イスラエルとその周辺の地図を見ると、少しずつその国境線が違うことに気づきます。しばしばそれが政治的な争点になることさえあります。「ヨルダン川西岸」「ガザ地区」「ゴラン高原」そして「エルサレム」が、イスラエルの帰属になっているのかどうか、その見方や立場の違いで、色分けをしています。日本地図では、北方領土は赤色になっているけれども、他の国々ではロシア領になっている、というようにです。

 これを知るのは、イスラエルが1948年に独立宣言を出してすぐに勃発した独立戦争(第一次中東戦争)において定まった休戦ラインがその元になっています。六日戦争(第三次中東戦争)において、イスラエルがガザ地区とシナイ半島をエジプトから奪取、ゴラン高原をシリアから、そして東エルサレムはヨルダンが占領していましたが、イスラエルが奪取しました。ゴラン高原と東エルサレムをイスラエルは国内法によって併合したため、イスラエル国内やイスラエルへの旅行ガイドの本には、これらがイスラエル領となっていますが、他の国々の地図ではそうなっていないのは、これが休戦ラインだからだという認識のためです。

「グリーンライン(緑の境界線)」と呼ばれるわけ

 そして今、その休戦ラインが「グリーンライン」と呼ばれています。私がイスラエル旅行に行き、ダビデがゴリアテと対決したエラの谷に向っている時のことです。ほんの一部、道路はイスラエル領からパレスチナ自治区へ、それからイスラエル領へと戻るのですが、その時に驚きました。検問所がなかったとしても、はっきりとどちらの領域かが分かるのです。自治区ではオリーブの木々が生えているものの、基本的に荒地であったのに、そこからイスラエル領に入ると、急に緑が生い茂る地に変わるのです。

 その時に、イスラエルに降り立ってから見ていた森や野原、農地は、すべて野生のものではなく、植林や開墾したものであることに気づきました。

 歴史を紐解くと、こういうことです。オスマン・トルコ統治(14世紀~20世紀初頭)の後期、そこは不在地主の土地でした。木に課税するという政策が取られたため、地主は木を抜いてしまいました。それで荒地と沼地になりました。そこに、東欧のユダヤ人が越してきて高額な値段を付けられたけれども土地を購入して開墾したのです。後に、ユダヤ人国家基金と呼ばれるものが植林のプロジェクトを始めました。50年間で2億2千万本を植えました。

 そして、イスラエルの最大の都市テルアビブですが、1909年、帰還(移民)してきたユダヤ人の住民が、近郊のヤッファの町から、地中海海岸の砂丘に土地を購入しました。これがテルアビブの始まりです。イスラエルにある家々や町々も、木々や農地に合わせて著しく発展していったのでした。

著しく増える人口

 そして人口も著しく増えました。1517年にユダヤ人は5000人いたところ、1882年には24000人、1918年には60000人、1931年には174610人とうなぎのぼりに増えていきます。東欧からの移民に加えて欧州に広がるホロコーストから免れる避難民が押し寄せてきたからです。そして独立戦争が勃発した1948年は716700人であったところが、50年には一気に1203000人になります。これは、周囲のアラブ諸国からユダヤ人が追放され、大量のユダヤ難民が発生したのですが、新生イスラエルが彼らをそのまま吸収したためです。そして、一切減少することなく、2017年には6484000人になっています。これは、イスラエル国内で子供が生まれるだけでなく、世界中からのユダヤ人がイスラエルに帰還するからです。

段階的に回復させる預言

 祭司エゼキエルは、第二次バビロン捕囚(紀元前597年)にバビロンに捕え移された預言者です。イスラエル人の偶像礼拝などの罪によって、神殿から神の栄光が去って行ったことを告げましたが、神殿が破壊されたことを告げに来た人が彼のところに来たとたんに、主は彼に回復の言葉を与えられました。終わりに、神が神殿を回復してくださり、その中にご自分の栄光をもって戻ってきてくださるのですが、その回復は一挙に行われるのではありません。

 神殿の回復(40章以降)は、36章から39章にかけて、段階的な回復のお膳立てがあって行われます。36章には「土地の回復」、37章には「国の回復」、そして38‐39章には「安全保障の回復」があり、それぞれの部分の終わりに神が御霊が注がれるという、最終的な霊的回復も約束してくださっています。

 それで36章には、荒廃していた地に人々が戻ってきて、そこを耕し、種が蒔かれ、実が結ばれる。家畜も増え、多くの子を生む。町々に人が住みつき、廃墟が建て直されることが書かれているのです。

だが、おまえたち、イスラエルの山々よ。おまえたちは枝を出し、わたしの民イスラエルのために実を結ぶ。彼らが帰って来るのが近いからだ。というのは、わたしがおまえたちのところに行き、おまえたちのところに向かうからだ。おまえたちは耕され、種を蒔かれる。わたしはおまえたちの上、イスラエルの全家に人を増やす。町々は住む所となり、廃墟は建て直される。わたしはおまえたちの上に人と家畜を増やす。彼らは増えて、多くの子を生む。わたしはおまえたちを、昔のように人の住む所とし、以前よりも栄えさせる。そのときおまえたちは、わたしが【主】であることを知る。」(エゼキエル36章8‐11節)