変わりゆく世界の教会と変わらない日本の教会(3)− 大橋秀夫 −

・写真:秋の花_エルサレムアーティチョーク

● 3回の連載:<第3回>

 

 

大橋秀夫
「日本教会成長研究所」
(現、JCGIネットワーク)
コメンテイーター、理事、全国講師
日本福音自由教会
クライスト・コミュニティ教会 顧問牧師

 

変わりゆく世界の教会と変わらない日本の教会(3)

—–> <前回、2. 教会の構造が変った  より続く>

3. 世界の潮流が変わった

 世界の福音派教会に強い影響力を与えたのは、「ローザンヌ世界宣教会議」でしょう。1910年のイギリスで開催されたエディンバラ宣教会議を経て、1974年にスイスで開催された「第1回ローザンヌ世界宣教会議」がその潮流をけん引しました。2010年第3回の会議が南アフリカ共和国のケープタウンで開催され、そこで発表された「ケープタウン決意表明」の初めのところに次のような一文があります。「1910年のエディンバラ宣教会議から100年の間に世界のキリスト教会に大転換が起きた。その変化とは、全世界的キリスト教会の成長である」。

 何がそれをもたらしたのでしょうか。第1回ローザンヌ世界宣教会議の主たるテーマは、①福音的宣教の使命を明文化。②未伝地の発掘。③包括的な福音宣教論の構築でした。この会議のイニシャチブを取ったのは、欧米の白人教職者たちであり、アジアやアフリカから招待された人々は、会衆席を埋めるにとどまっていました。

 1989年の「第2回ローザンヌ世界宣教会議」では、様相が一転していました。福音宣教を担うのは最早欧米の教会ではないことが明らかになりつつあったのです。それを象徴するように会議はフィリピンのマニラで開催されました。この会議のテーマは、<全福音を・全教会で・全世界へ>でした。会議を導くリーダーたちは、このテーマを実行する勇気を持っていました。参加者は福音派だけではなく、ペンテコステ派からの参加者が全体の半分を占めていたのです。

 「第3回ローザンヌ世界宣教会議」は、2010年南アフリカのケープタウンで開催されました。そこで採択された「ケープタウン決意表明」は、この会議を総括して次のように書いています。「この事実(南アフリカで開催されること)こそ変化にほかならない。今や全世界のクリスチャンの3分の2以上が、南側諸国と非欧米諸国に住んでいる」。

 事実1910年代、南アフリカのクリスチャン人口は2%に過ぎませんでした。それが今や80%に成長しているのです。こうした教会成長は私たちの隣国である韓国はもとより、過去10年間で見れば台湾やフィリピン、タイ、モンゴルなどでも起こりつつあるのです。

 さらにもう一つ付け加えたい変化は、これまで考えられないような新しいコンセプトを持った教会が誕生しつつあると言うことです。例えば、女性の立場から見た教会形成。信徒の立場から見た教会形成。第3世界の立場から見た教会形成。有色人種から見た教会形成。次世代(new generation)リーダーたちの台頭による教会形成などです。これらポストモダンと言われる時代を見つめた斬新な教会形成は、これからも拡大傾向が顕著です。

 世界の教会は、このような大きな変化を遂げながら「全世界に出て行って、すべての造られた者に福音を伝えなさい」と言う主の宣教命令を達成しようとしているのです。

 以上はローザンヌ世界宣教会議を通して見た流れの大筋です。ところが「関西ミッションリサーチセンター」が記している<ローザンヌ運動の歴史>には、次のように書かれています。「1989年の第二回ローザンヌ世界宣教会議以降、日本の福音派教会は当時のローザンヌ世界宣教会議運動に不安を感じ、教会を守る配慮から運動とのかかわりを停止したのです。」。(*注2)

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(*注2)

 「第2回ローザアンヌ世界宣教会議」以降も、運動は停止していません。アジアでは、ほぼ2年に一回の割合で「アジア、ローザンヌ宣教会議」が開催されていました。けれども日本の教会は正式メンバーから外されていました。

 2010年の会議が開催されると言う中で、実行委員長・総裁になるダグラス・バーザル師は、日本で宣教するアジアンアクセス(旧、ライフミニストリー)の総裁を辞して、大役を引き受けられました。
2006年にニューヨーク、ボストンの教会を訪問したおり、当時ゴードンコンエル神学校の中にお住まいだったバーザル師をお訪ねして、こうお願いしたことを覚えています。
「先生、今回のローザンヌ世界宣教会議には、ぜひとも日本の教会へも招待状を送ってください。」
その時先生は、
「わかっています。必ずそうします。」
と約束してくださったのです。
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結び

 以上のことから私が何を申し上げたいのかお分かりいただけると思います。世界のキリスト教会の潮流は、日本の教会を取り残したままずっと先に進んでいるのです。しかも日本の教会の宣教が停滞する中で、世界の教会は成長を続けているのです。変化できない日本の教会は、多元化するポストモダンの社会の中で孤立しているのです。

 問題を先送りして決められない日本の政治を揶揄して<Japanese Government>と言う国際的な認識が出来上がってしまっていると聞きました。日本の教会も変化できないまま、70年以上も立ち留まり続けているのです。成長できない教会をある人々は<Japanese Church>と揶揄します。

 世界の中では只の一教会の会員数に過ぎない小さな会衆が、一つの教団教派を形成しており、そこで伝統や神学を保持するのにエネルギーを使い果たしています。

 私は申し上げたいのです。「分断された教会は、分断された社会に向かって語るべきメッセージを持っていない。」そればかりではない、「刷新できない教会が、どうして人々に新しいく生ま変わるメッセージを語れるのでしょうか。」

<終わり>

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大橋秀夫

一九三九年 東京都港区出身
一九七一年 より兵庫県尼崎市で開拓伝道に従事
一九八〇年 ルツ・ウインズ師らと「教会教育推進会」を創立。
一九八八年 から「日本教会成長研究所」
(現、JCGIネットワーク)コメンテイーター、理事、全国講師
一九九一年 “Homestead College of Bible” より名誉神学博士号授与、
その他、日本福音自由教会 協議会会長、同教役者会会長を歴任
現在、クライスト・コミュニティ教会 顧問牧師

 

<寄稿文>
『変わりゆく世界の教会と変わらない日本の教会』
1. 聖書の読み方が変わった
2. 教会の構造が変わった
3. 世界の潮流が変わった

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*・写真:秋の花 — エルサレムアーティチョーク(菊芋の花)
・撮影場所:「能勢川キリスト教会」の会堂脇
・撮影: Shinichi Igusa      ・2012-1003