『集団免疫』を求めるのか、それとも『日本民族の姿』を求めるのか? −井草晋一−

 

井草晋一
SALTY 編集長
日本メノナイトブレザレン教団
武庫川キリスト教会  協力牧師

『集団免疫』を求めるのか、それとも『日本民族の姿』を求めるのか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する感染防止の取り組みについて、西洋社会の一角、それも、20世紀以来の福祉国家と言われる、スウェーデンの「集団免疫政策」の報道を知り、驚きを禁じ得ません。

<Newsweek 2020-0501>
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93307.php

しかし、日本の場合は、発熱者、体調不良の自覚者のみを検査し、軽症以上の人を自宅待機、指定されたホテルでの自主隔離、また、重病の方や重症化の危険性のある方のみを入院させるという方法は、この「スウェーデンの集団免疫政策」に近いのかも知れません。(4月末現在)

 

そこで大切なのは、重症化の危険性のある人たちを受け入れる病院や病床の確保、医療従事者、人工呼吸器、また、「人工肺とポンプを用いた体外循環回路による治療のECMO」の十分な確保でしょう。
それとともに、ワクチンや治療薬の速やかな開発と治療方法の確立も。

・今、求められる「国民としての品格、品性、人となり」

そして、何よりも求められるのは、弱者や隣人を省みる「国民としての品格、品性、人となり」です。

今回の新型コロナウィルス問題で、世界で一番「人権に対する制限」をかけず、都市の封鎖(ロックダウン)をせずに、外出や企業活動の「自粛要請」で対応している日本は、特殊(特異)だと思います。

 

それを、日本民族として長年の歴史の中で培ってきた「国民性」や「武士道精神」と捉えるか、あるいは、近代以降のミッションスクールや社会福祉、地域教会としての働きなどで影響を与えた「キリスト教精神・倫理観」で見るのかは、見解の相違もあるでしょう。

それでも、このような日本の状況の中で「新型コロナウィルスの病禍」に、極力、亡くなられる方の人数を低くし、時間がかかっても社会全体として勝利するとすれば、これは世界に誇れることだと思います。

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・主張の変節、変遷への疑問

今年の3月14日に施行された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(改正)の審議過程において、憲法違反である、また、基本的人権の制限にあたる、と主張し、また、反対をしていた政党や人々がありました。
キリスト教会の一部にも。

しかし、そのような方々が、その後、日本をはじめ各国での著しい蔓延の現実に直面し、また各国の都市封鎖(ロックダウン)や処罰の実行、強制的な処置を見聞きする中で、<同改正案>をさらに厳格に適用すべき、あるいは、より人権などの制限や強制的な命令や執行などができるようにすべき、と主張を変えてきたことを見聞きしました。

政策や主張を変えることがあっても良いとは思います。
しかし、それならば、<前言で主張したこと>の撤回や、自らの主張の転換をきちっと説明した上でなすべきことだと、真に思わされます。

このことを内省しないまま、以前と同様に政府の諸政策に単なる反対を述べているならば、果たして、国民の代表なのか、また、様々な社会組織の一応の代表者なのか、その責が問われると思うのです。

私は、この<変節・変遷>している現実、また、そのような政党や国会議員、また、自らも何らかの形で所属している社会組織などのしかるべき代表者の<変節した姿>、また<拘っている姿>をTVやメディアで見聞きしました。
これは、自らの記憶にとどめておきたいと思います。

・医療従事者や様々な領域での救命救急の働きを担う人々に感謝いたします

そして、何よりも、このような社会の現実の中で、医療現場でいささかの主張や反対意見も述べずに、患者と向き合い、必死で患者の方々の治療と回復のために、心血を注いでおられる医療従事者や様々な領域での救命救急の働きを担う人々に、心より感謝いたします。そして、しっかりと心に刻みたいと思います。

このような現実にありつつも、日本民族に神の栄光が現されますように、また、病の中にある人々の速やかなる癒し、そして、日本人としての「慈悲深い心」「キリストに倣う愛の姿」が現されますようにと、お互いのために、それぞれのご家族のために、心より祈ります。

「自分のことだけでなく、他の人のことも顧みる」こと、また、『あなたの隣人を自分自身のように愛しなさい。』の聖書の言葉、キリストの教えを心に、互いに歩んでいくことができれば、なんと幸いなことでしょうか。

2020-0501

 

<写真>
・「武士道とキリスト教」 笹森建美 著
(新潮新書:2013_1/20 発行)

2017年8月15日に、85年の生涯を終えて天国に帰られた、日本キリスト教団 駒場エデン教会 牧師の 笹森建美先生(小野派一刀流 宗家)の著書。

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2020_4/7
『三つの祈りと五つの言葉』
〜受難週における「緊急事態宣言」の中で〜

https://wp.me/p9MlHb-1eW