元慰安婦の挺対協批判と日本の教会 −西岡 力−

・写真:ムクゲの花(韓国)と桜(日本)

西岡 力 教授(SALTY 主筆)

 

 

 

西岡 力

日本キリスト者オピニオンサイト
-SALTY-  主筆
国基研企画委員兼研究員
・麗澤大学客員教授

 

元慰安婦の挺対協批判と日本の教会

 牧師が教会員から献金を集め、ある問題の被害者を支援する団体に寄付した。ところが、被害者が「集められた寄付金は団体リーダーが勝手に使っていて、自分たちの支援に使われていない、団体は自分たちを資金集めに利用してきた、もうその団体主催の行事に参加しない」と批判し、連日、マスコミがその団体とリーダーの不正を暴露し、検察が本格的に捜査に入り、団体事務所が家宅捜索を受けた。そのような事態が起きたとき、その牧師はどうすべきか。少なくとも、献金をしてくれた教会員に現状を報告し、団体に対する評価を間違えてしまったことを謝罪すべきではないか。私はそう考える。

 今、韓国で約30年間、元慰安婦のおばあさんたちを前面に立てて、日本を含む全世界から莫大な寄付を集め、継続して反日活動を展開してきた挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会、数年前に正義連と改称)とその前代表で国会議員当選者の尹美香氏が、30年共に運動をしてきた元慰安婦李容洙氏から激しい批判を浴び、それが契機になって連日、会計不正と政治的偏向などが暴かれ、ついに検察が事務所を家宅捜索する事態が起きている。

 李容洙氏は挺対協が30年近く、ソウルの日本大使館前で続けているいわゆる水曜集会についても、憎悪を煽るだけで解決につながらないと批判して不参加を宣言した。

 日本の牧師やキリスト教関係者で水曜集会に参加して謝罪を行い、寄付金を渡してきたものはかなりの人数になる。それらの方々が現在の事態について考えを公表したものをいまだ、私は目にすることができない。

 私はキリスト者学者として慰安婦問題に30年取り組んできた。その立場から、現在の事態について書いた拙文二つをクリスチャン・オピニオン・サイトであるソルティ(SALTY)にアップする。主の前にタブーのない、議論をして行けたら幸いだ。

 

・暴露された慰安婦支援団体の偽善(2020-5/25)

・【韓国情勢】韓国でも暴かれ始めた慰安婦問題の虚構(2020-5/25)

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暴露された慰安婦支援団体の偽善

2020.05.25 (月)

国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力

 

 韓国で、元慰安婦の李容洙氏が支援団体の元代表、尹美香氏を寄付金使途不明などで激しく批判したことを契機に、不正会計、寄付金横領疑惑、活動の政治利用などが連日暴露され、ついに検察が本格的捜査に入った。

 ●募金流用など疑惑続出

 元慰安婦支援団体「正義記憶連帯」(旧称は挺対協=挺身隊問題対策協議会)の会計報告が収入額と支出額の不一致などずさんだった上、支出先とされているビアホールや葬儀会社は代金を寄付したと証言し、裏金づくりの疑惑も生じた。
また、募金集めに尹氏の個人口座が使われたことや、尹氏の預金が3億ウォン(約2600万円)あり、ローンを組まず現金で2億ウォン(約1700万円)のマンションを買い、1年に1億ウォン(約860万円)程度かかる米国の大学に娘を留学させていることなどから、募金の流用が疑われている。

 それだけでなく、尹氏が親北活動家の夫らと一緒に、北朝鮮から亡命した食堂従業員の女性らを北朝鮮へ戻すため説得工作を行っていたことも暴露された。夫らは、北朝鮮の革命歌謡を歌い、北朝鮮の独裁者を称賛する言動をしていたというから驚きだ。

JINFの当該記事より
JINFの当該記事より

元慰安婦の李氏は、①支援団体がソウルの日本大使館前で行っている水曜集会は憎しみをあおり解決につながらない ②先月の韓国総選挙で与党比例代表として当選した尹氏が国会議員になることに反対する―とも訴えた。
しかし、尹氏らの偽善は問題の一部に過ぎない。日韓のマスコミは沈黙しているが、李氏が尹氏批判に踏み切った背景には、慰安婦問題それ自体の虚構性が表面化してきたことがある。

 ●慰安婦問題の虚構打破の契機に
李氏は最近、元慰安婦としての自分の証言の信ぴょう性に韓国内で疑問が提起されているのに、尹氏や挺対協が守ってくれないと不満を吐露していたという。
李氏は1993年に挺対協が出した証言集で、貧困のため家出して日本人の女衒ぜげん(周旋業者)について行って慰安婦になったと述べ、女衒から赤いワンピースと革靴をもらってうれしかったと語っていた。ところが、その後、日本軍に強制連行されたと証言を変えた。その点を2018年、インターネットニュース「メディアウォッチ」の黃意元記者が詳細に取材して長文の記事を書いた。すると、尹氏らは黃記者に抗議せず、むしろ李氏を運動から遠ざけ始めた。

 昨年出版され、韓国でもベストセラーになった『反日種族主義』は慰安婦の強制連行・性奴隷説を否定し、貧困による人身売買だったとの説を提示した。昨年12月から毎週水曜日に日本大使館前で、黃記者や『反日種族主義』の著者らが、挺対協の集会に対抗する慰安婦像撤去集会を持ち、そこで挺対協の証言集を手に取って、強制連行・性奴隷説は虚構であり、慰安婦は貧困のために売られたのだと演説している。

 日本ではすでに、朝日新聞などが1990年代初めに火をつけた慰安婦強制連行キャンペーンは捏造ねつぞうだったことが広く知られるようになった。ついに韓国でも真実の力がウソを打ち破る日が来るのか、固唾を飲んで見守っている。(了)

[財] 国家基本問題研究所(JINF)
【今週の直言・第683回・特別版】2020-0525

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【韓国情勢】韓国でも暴かれ始めた慰安婦問題の虚構

2020.05.25 (月)

西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

 元慰安婦の李容洙氏が30年間ともに運動をしてきた元慰安婦支援団体「正義記憶連帯」(正義連、旧称は挺対協=韓国挺身隊問題対策協議会)とそのリーダーの尹美香氏を批判した後、韓国では連日、尹氏らの不正、偽善、運動の政治利用が暴露され、検察が本格的な捜査に入った。

韓国の左派マスコミや与党内でも、検察の捜査で会計上の不正の証拠が出てくれば、尹氏を庇いきれないという雰囲気が広まっている。しかし、5月25日付の「今週の直言」(注: 上記参照)にも書いたように、李氏が尹氏批判に踏み切った背景には、慰安婦問題それ自体の虚構性が表面化してきたことがある。

李氏は正義連が30年あまり続けている日本大使館前の水曜集会を批判し、不参加を宣言した。しかし、集会は続けられている。一方、昨年12月から、『反日種族主義』の著者の1人である李宇衍氏らが立ち上げた「反日銅像真実究明共同対策委員会(共対委)」が、正義連の集会のすぐ横で水曜集会の中止、慰安婦像撤去を求める対抗集会を敢行し続けていることは、本欄でも紹介してきたとおりだ。

5月20日の対抗集会では、慰安婦問題それ自体の虚構性が正面から取り上げられ、強制連行、性奴隷、戦争犯罪という慰安婦問題の3つのウソが崩壊しつつあると力強く語られた。

共対委の共同代表の1人である金丙憲(キムビョンホン)・国史研究所所長の演説を全訳して以下に紹介する。

過去の記事はこちら

3つのウソがついに崩壊した

金丙憲・国史研究所所長

 

日本軍慰安婦問題が解決されないことを望んでいる人は誰ですか。尹美香(前「挺対協」代表)です。日本軍慰安婦問題が解決される瞬間、尹美香と挺対協(最近、「正義連」と改称)の存在意味が消えてしまいます。ですから、尹美香と挺対協はこの慰安婦問題をどうしてでも引っ張っていかなければなりません。とても強い意志で30年あまり引っ張ってきましたが、ついに崩壊することになりました。

なぜか。尹美香と挺対協は30年あまりこの問題を引っ張り続けるため、数多くのウソをついてきたからです。そのウソの中でも重要なウソは国際的に行った詐欺劇です。国際的に米国に行き、英国に行き、ヨーロッパに行って語った話の数々、そこで話した元慰安婦のおばあさんたちに言わせた話しが全部ウソで、まさに国際詐欺劇として暴露されたのです。どのようなものがあるか。3つです。

●強制連行というウソ
第1は強制連行です。日本軍に強制連行されたということ。第2は性奴隷。朝鮮の女性が日本軍の性奴隷だったということ。第3が戦争犯罪。朝鮮女性が日本軍の戦争犯罪被害者だったということです。

強制連行については、すでに尹美香と挺対協は証拠を提示できませんでした。代表的な人物として今回の李容洙氏の場合は、2019年、裁判所に行っても自分は日本軍に強制的に連れて行かれて電気拷問を受けた、裁判官先生、私の訴えをきいてくださいと声を高めました。しかし、李容洙氏は初期の証言集では、日本人が一つの包みを渡して開けてみろといったので見ると赤いワンピースと革靴が出てきた、李容洙氏本人の言葉で、その赤いワンピースと革靴を見た瞬間、自分でも知らないうちにそれに惹かれてついて行ってしまった、と証言しました。

●性奴隷というウソ
ところで、自分を連れて行った人、すなわち慰安所主人ですね。その人が李容洙氏に軍人の部屋に入れと言ったが入って行かなかったから電気拷問をしたというのです。ですから、電気拷問をしたのは日本軍人ではなくて慰安所主人でした。そして李容洙氏を連れて行った人も慰安所主人でした。その当時、日常的に存在した人身売買犯と慰安所主人によって連れて行かれて慰安婦生活をしたのです。

それなのになぜ、性奴隷というのか。日本軍の性奴隷だとまたウソをつきます。当時の慰安所規定には軍人たちの階級によって、利用時間によって料金が決められていました。金学順氏の場合、兵士は1円50銭であって将校が泊まっていく場合は8円をもらったと言いました。金学順氏はお母さんから養父、すなわち人身売買犯に40円で売られていった人です。

普通の兵士が1円50銭、将校は8円であれば、これは売春です。言い換えるならば、日本軍人はお金があれば慰安婦を利用でき、お金が無ければ利用できません。それなのにどうして性奴隷ですか。奴隷は主人がやりたい放題できるのが奴隷です。日本軍人が朝鮮の女性をやりたい放題に閉じ込めてだれでもやりたいように利用できましたか。お金を払ってはじめて利用できたのです。

●戦争犯罪というウソ
最後に戦争犯罪です。これこそが最も悪質なウソです。なぜならば、戦争犯罪というものは占領地で占領軍が現地の女性たちを強制的に拉致して強姦し殺害する、これが戦争犯罪です。ところで、日本軍慰安所がなぜできたのですか。尹美香も話しているし、韓国の女性家族部(省)のホームページにどのように書いてあるか。慰安所を設立した目的のなかで第1は、戦時に占領軍による強姦を予防、防止するためだと書きました。性暴力、戦争犯罪を防止するために設立した慰安所で働いた慰安婦がどうして戦争犯罪被害者になるのですか。これは論理的にも正しくありません。

尹美香と挺対協は30年にわたり、強制連行、性奴隷、戦争犯罪被害者、これを使って食べてきたのです。世界的に詐欺を働いたのです。ですから、日本軍慰安婦問題は国際詐欺劇だったと、断定できます。

ありがとうございました。

[財] 国家基本問題研究所(JINF)
【国基研ろんだん】2020-0525

 

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