明石清正
SALTY論説委員
カルバリーチャペル・ロゴス東京 牧師
ロゴス・ミニストリー 代表
ピュー・リサーチ・センターという、不偏不党をうたっている調査機関が米国にあります。最近の調査で、日本について興味深い内容が二つありましたので、ご紹介します。
先進国では断トツの反イスラエル
よくイスラエルを支えているのは西側諸国でグローバルサウスと言われるアフリカなどでは人気が低いと言われますが、こちらの調査では全くの逆で欧米でのイスラエル人気は低く、逆にアフリカとインドでは人気が高くなっているのが判明しました。
Most in surveyed nations have negative views of Israel(Pew Research Center)より 南アフリカは最大与党ANCやメディアが徹底してイスラエル批判を展開しているにもかかわらず不人気が52%で抑えられているのはかなり意外です。
なお日本は世界トップレベルにイスラエル嫌いが多い国になっています
https://x.com/onigari_ijousya/status/1930563596901388331
イスラエルを見る時に、「実は自分自身の姿を投影している」ことがよくあると感じます。例えば、「イスラエルは世界から孤立している」と言われるんですが、その時は、我が国が世界から遊離している時ではないかと感じます。イスラエルを通して自分の姿が見えているのかもしれません。「裁く量りで、自分が量られる」というイエスの言葉のとおりです。
上の、引用の言葉は、匿名の中東専門家のアカウントからです。大半の”専門家”の言っているのは、「親イスラエルに偏るのはG7の国ぐらいで、グローバルサウスや他の国は反イスラエル」というお決まり文句です。
けれども、筆者がイスラエルに行き、実際に、世界から集まる、エルサレムの平和のために祈るクリスチャンを見ると、G7以外の国々は多いです。米国も多いですが、福音派のクリスチャンたちが、非西欧圏からかなり集まっています。合計40‐50ヵ国集まります。
エルサレムに大使館を動かしたのに、非欧米の小さな国々があります。そういった大使の方々本人が祈りにいらっしゃいます。
イスラエルは地道な外交の努力で、自分たちの先端農業技術をそういった国々に提供するとか、良い関係を結ぼうと努力していますし。
さらに、南アフリカですが、政権としては、あれだけ国際司法裁判所に提訴した国でバリバリの反イスラエルですが、圧倒的な草の根のイスラエル支持があることを、南アのクリスチャンの人たちから、直接聞いています。
こういったことから、日本の教会が、「米国福音派が政治的にイスラエルに偏っている」と論評している時、世界標準とずれていると肌感覚で感じ取っていました。むしろ、日本のそういった冷たさを、日本の教会の意見から感じ取りますね。なんで、そんなに人に冷たくできるのか?と疑います。クリスチャンなのに。今回は、客観的な統計でそれが浮き彫りにされたのです。
アフリカ・アジア・中南米で福音的教会が活発
次に、世界の宗教の人口について、ピュー・リサーチ。センターが調査した結果を記事にしたものがありますので、まず、ご紹介します。
変化する世界の現状とイスラエル:キリスト教23億人・イスラム教20億人・無宗教19億人(ピュー研究所)2025.6.10

上の記事には、こう書かれていました。
ナン(無宗教)と呼ばれる人が増えていると聞いたことはあったが、その数が、19億人で、24.4%と世界宗教の3位になっていたことに驚かされた。
その最大の国が、キリスト教の最大国であるはずのアメリカであるということに驚かされ、また、その次が日本と、正式にピュー研究所の報告に、名指しで挙げられていることにも驚かされた。
私は、正直、あまり驚かない数字でした。むしろ、日本とキリスト教会が持っている、一種の暗部が見えるような気がしました。
①イスラム教増加への危機感が足りない
イスラム教は、世界をイスラムの支配下に置くことが最終目標の宗教です。なので移民が増えれば、それだけ国の成り立ちを変えさせられるほどの力を持っています。それで、欧米圏では深刻な問題が生じており、日本も国会や言論で、危機感を言い表している人々が多くなっています。
けれども、日本の教会は、そもそも「宣教」という思いが希薄です。自分たちの生活圏の内側だけに信仰があるように捉えられています。果敢に外に向かっている人々は少数派です。しかし、キリスト教会こそが、ムスリムの人々に愛をもって福音を語ることができるのであり、見方を変えれば、世俗的な日本人よりも、話を聞いてくれるでしょう。
②未だに一般の日本人と同じく「欧米=キリスト教」だと思っている
確かに欧米圏には、キリスト教の長い伝統と文化があります。けれども、実際に信じているか?については、かなり前から欧米圏の脱キリスト教、そして非欧米圏における、キリスト教の拡がりが指摘されていました。
その最大の大陸がアフリカです。日本は聖書に出てきませんが、クシュ(スーダン)、エジプトなど、アフリカは聖書の舞台の一部になっています。エチオピアは、ユダヤ教においても、キリスト教においても、独自の古来からの歴史と伝統を持っています。そして現エチオピア政権の首相は、ペンテコステ派教会の信者です。
他のアフリカの国々にも元首が、福音派クリスチャンというところがいくつかあります。
そしてアジア、中南米など、素朴で熱い信仰を持っている福音的な信者が広域に存在します。世界宣教大会やイスラエルに行くと、その大きな広がりに触れることができますが、日本にいると、なぜか欧米、しかも米国の教会で教えられていることばかりが、入ってきますね。
③日本はアジア圏なのに、リベラルに傾く西欧圏の教会と連動する
日本の教会は、明治維新以降から、この傾向がありました。お隣、韓国では、長老派系の教会が根を張り、他の教派も合同されるなどして、欧米特有の細かい神学や礼典の違いなどは気にしないのですが、そこら辺が日本の教会には、そのまんま入ってきています。
また、ドイツ神学に典型的な、リベラル的なものが入り込んでいます。観念的なものが、知的なもの、より高尚なものだというきらいが、今の日本の教会のオピニオン・リーダーの間にも見え隠れします。
米国において、脱キリスト教が進んでいるのは、ずっと前から話されていたこと。教会の著名な人たちが性的罪などでいなくなったり、ワーシップリーダーが信仰をどんどんなくしたり。
また「福音派左派」という、政治左派の考えをキリスト教の教えに混ぜ合わせる流れもあります。日本ではしばしば、政治右派の考えがキリスト教会に入り込んでいると指摘する人々が多いですが、その逆も真であるということについては、指摘する人たちは少ないです。
米国は米国で独自の歴史があり、日本とは大きく異なり、特殊な事情があってこその教会の流れや教えがあるのですが、日本になぜか、その文脈が外されて、字面だけが入ってきているという印象を受けます。(米国の教会とつながっている者としての、感想です。)
そして今回、米国の無宗教化と、日本の無宗教性が並列になったというのは、私には特段、驚くことではありませんでした。ずっと前から存在していた問題で、むしろ、日本の教会は「米国以外の、主の働かれている世界を見ないと。一緒に衰退してどうする?」という危機感を持っているので、ああ、その通りになっていると感じています。
④人口増加するイスラエルについて、知らない
そもそも、「現代イスラエルは、聖書とは関係がない」とする考えの人々が、日本の教会に多いので、知られていないのでしょう。けれども、イスラエルにユダヤ人の帰還が一気に増えていること、また人口も増えていることについて、聖書が何度となく語っていることの証しです。
先端技術を発展させているのに、家族を大切にするイスラエルは、日本にとっても模範にしていい知恵が多くあるのですが、日本は情報鎖国っぽくなっていて、やたら、イスラエルについて語るのを恐れていますね。でも、何が自分たちに足りないのか、良い例を見て、触発されたらいいのにと思います。
結論:愛が冷えている日本、教会の「世の光」の使命
記事の筆者、石さんがご指摘のように、私も、世の終わりの「愛が冷える」というのが、日本の流れであると感じます。だから、教会は、キリストの愛による情熱を、ますます抱かないといけないのでは?という危機感を抱いています。
参考資料:「教会の趨勢が衰退したのではなく、移行した」
欧米圏では教会が衰退しているが、非欧米圏では急伸していることについて、以下の記事にて、キリスト教研究機関での調査で明らかになっていることを伝えています。