新型コロナウイルス感染拡大と教会(2)−大橋秀夫−

・写真:あべのハルカス

大橋秀夫牧師の『新型コロナウィルス感染拡大と教会』の<第2回>です。
世界各国の危機的な状況の中で、日本の教会が直面している課題を明らかにしつつ、今後の歩むべき道を問いかけ指し示しておられる内容です。
皆様、ぜひ、ご一読くださいますよう、ご案内いたします。

第1回 より  <—– クリック!

● 3回の連載:<第2回>

 

 

大橋秀夫
「日本教会成長研究所」
(現、JCGIネットワーク)
コメンテイーター、理事、全国講師
日本福音自由教会
クライストコミュニティ教会  顧問牧師

 

2,教会の対応

 ではキリスト教会の対応はどうなのか。コンコーダンスによると、「疫病」と言うウイルス性の感染症を表すだろう言葉は66回ある。そのうちの1回だけが新約聖書ルカの福音書21章11節にある。そこには次のように書かれている。
「大きな地震があり、方々に飢饉や疫病が起こり、恐ろしい光景や天からの大きなしるしが現れます。」と。これは終末の前兆を知りたがる弟子たちの求めに対して語られたのであるが、他の福音書はもとより、ヨハネの黙示録の終わりの日に下される災いの中にも「疫病」は含まれていない。今回、終末論に結び付けて対応するという過去の間違いを踏襲しなかったのは、教会の成長と言えるかもしれなない。

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キリスト教文書の発行・出版の危機に思う −井草晋一−

 

 

 

井草晋一
SALTY編集長
日本メノナイトブレザレン教団
武庫川キリスト教会  協力牧師
Piyo ePub Communications 代表

『キリスト教文書の発行・出版の危機に思う』

 

 10年前の Apple による iPad の発売とともに、実用化に動いた世界の「電子書籍」市場。

当時、キリスト教文書の発行について危惧していたことが出版業会で起こってきています。

 今回「創文社」の解散に伴って、中世の神学者トマス・アクィナスの『神学大全』の邦訳(全45巻)などが絶版になることなく、講談社や東京大学出版会などが引き継いで、「電子書籍」や POD版(プリント・オンデマンド)として続けて発行されるのは幸いでした。

<産経新聞>  2020年 8月7日

・老舗学術出版「創文社」解散の波紋・・・前書籍などを講談社などが異例の引き継ぎ

https://www.sankei.com/life/news/200807/lif2008070001-n1.html

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コロナ危機による失業問題の積極的な解決策について −金井 望−

論説委員 金井 望

「あなたがたもぶどう園に行きなさい。ふさわしい賃金を支払うから」
「自分の分を受け取って帰りなさい。私はこの最後の人たちにも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ」
(マタイ20:4,14)

  ぶどう園のたとえ

 冒頭に掲載した絵は、イエス・キリストが語ったたとえ話の一場面を描いたものです。紀元30年頃のユダヤ社会には、自分の農地を持たない日雇い労働者がいました。

 ある農園主が夜明け頃に町に出かけて行って、1日1デナリオン賃金を支払う約束で労働者を雇い、ぶどう園に送りました。農園主はその後もたびたび労働者を雇い、「ふさわしい賃金を支払う」と言って、ぶどう園に送りました。その日、早朝から働いた者たち、9時頃から働いた者たち、正午頃から働いた者たち、午後3時頃から働いた者たち、午後5時頃から働いた者たちがいました。夕方6時頃になると主人は管理人に命じて、最後に来た者から始めて最初に来た者まで順番に、労働者全員に1デナリオンずつ賃金を支払わせました。

 すると、最初に雇われた労働者たちが農園主に不平を言いました。
「俺たちは、この暑い日に一日中、辛抱して働いたんだ。それなのに、なぜ1時間しか働かなかったこの連中と俺たちの賃金が同じなのか」
農園主は応えて言いました。
「私は不当なことをしていない。あなたは私と1デナリオンで契約したではないか。私はこの最後の人たちにも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ。自分の金を自分のしたいようにして、何がいけないのか」

 1デナリオンはローマ帝国の銀貨で、当時、一日の労賃の標準となっていた金額です。午後5時頃に雇われた労働者たちは、その時刻にそこに来たのではありません。彼らは一日中そこに立っていたのですが、誰も彼らを雇ってくれなかったのです。雇用者は当然ながら、能力の高い労働者から雇って、連れて行きます。最後に残るのは、能力が低い労働者たちです。元気で勤勉な青年男子は真っ先に雇ってもらえますが、老人や女性、子ども、病人、障がい者、外国人などは後に回されがちになります。けれども、生活費として一日に1デナリオンを必要としているのは、どこの家庭も同じでした。

イエスは「天の国は次のようにたとえられる」と言って、この話をしました。「社会主義の国を造れ」と言っているのではありません。天の父がひとりひとりの人権と生活に配慮しておられること、神の御心が実現する世界ではこの世と異なった価値観が支配することを、イエスは教えたのです。

  10兆円の予備費と失業問題

さて、新型コロナウイルス対策を推進するために編まれた今年度第2次補正予算が6月12日の参院本会議で可決、成立しました。一般会計の追加歳出は補正予算として過去最高の31兆9114億円であり、財政投融資や民間融資なども含めた事業規模は117兆1000億円にのぼります。第1次補正予算と併せた事業規模はGDP(国内総生産)の4割にあたります。

 第2次補正予算は(1)雇用調整助成金の拡充(2)資金繰り対応の強化(3)家賃支援給付金の創設(4)医療提供体制の強化 が柱となっていますが、さらに10兆円の予備費が計上されています。これを用いて、コロナ危機による失業問題を解決する方策を、筆者はここで提案します。 “コロナ危機による失業問題の積極的な解決策について −金井 望−” の続きを読む

【動画】SALTY 第1回公開講演会『キリスト者と政治』(東京) 2019 10/22

SALTY 第1回公開講演会『キリスト者と政治』(東京) 2019 10/22

日時:2019年 10月22日(月) 午後2時〜
会場:御茶ノ水クリスチャンセンター

● SALTY 公式ホームページでの<東京>開催報告 (10/22)
https://wp.me/p9MlHb-16D

*注: スマホで後ろから録画している関係で、音声が不明瞭な部分があります。
ヘッドホンやイヤホンで試聴されると、聴きやすくなります。

 

講演1 麗澤大学客員教授・SALTY主筆  西岡 力 先生(基調講演)
『キリスト者が政治に取り組む時に陥る罠』

講演2 大東キリストチャペル  田口 望 牧師
『日本のキリスト者は皇室とどう向き合うべきか』

講演3 サーブ介護センター代表取締役  後藤献児朗氏
 『福祉に対するキリスト者の誤った認識』

 


講演1 麗澤大学客員教授・SALTY主筆  西岡 力 先生(基調講演)
『キリスト者が政治に取り組む時に陥る罠』


講演2 大東キリストチャペル  田口望牧師
『日本のキリスト者は皇室とどう向き合うべきか』


講演3 サーブ介護センター代表取締役  後藤献児朗氏
『福祉に対するキリスト者の誤った認識』


● SALTY 公式ホームページでの<大阪>開催報告 (10/14)
https://salty-japan.net/?p=4167

■ 【動画】SALTY 第1回公開講演会『キリスト者と政治』(大阪) 2019 10/14
https://wp.me/p9MlHb-18W

 

キリスト教はイエス・キリストを信じる −三浦三千春−

*写真:『イーゼンハイム祭壇画(第1面)』グリューネヴァルト 作_Wikipedia  より

 

 

 

三浦三千春
著述業
元・クリスチャン新聞大阪支局長

キリスト教はイエス・キリストを信じる
<寄稿文>

 日本国内の世論が、他の多くの、自由な言論が許された諸国と同じく、大きく真っ二つに分断されているような感覚を私は抱いています。それは、「右」と「左」の対立というようにいわれますが、左右の両者が実のある対話を行い、共存して生きていかなければならないことと思います。
ことにキリスト教徒(クリスチャン)は見解を左右異(こと)にしていても、相互に深く信頼し、深く話し合える基盤を有していると思います。その共通の基盤は何なのか確認する論を提示したいと思います。実のある対話がさらに進むことを願いつつ……。

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「第1回 公開講演会 in 東京」 −大阪で行われた講演会に引き続き大盛況!− 

● 写真:御茶ノ水クリスチャンセンター

 

 

 

 

日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-
「第1回 公開講演会 in 東京」

−大阪で行われた講演会に引き続き大盛況!− 

 10月14日(月)に大阪で行われた公開講演会に引き続き、10/22(火・祝日:即位礼正殿の儀)に、東京でも準備し開催した「第1回 公開講演会」では、テーブル席(30名分)では足りないほどの方々が参加されました。

司会:明石清正牧師

日本のキリスト教界の左傾化を憂う者たちが、ネットの世界から現実世界に飛び出し、共に集った記念すべきこの講演会。祝福の内に開催されましたことを、神様に感謝いたします

遠くは北九州から駆け付けた方もおられ、西岡力教授の講演を前のめりで聴いておられる皆様の表情がとても印象的でした。

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変わりゆく世界の教会と変わらない日本の教会(3)− 大橋秀夫 −

・写真:秋の花_エルサレムアーティチョーク

● 3回の連載:<第3回>

 

 

大橋秀夫
「日本教会成長研究所」
(現、JCGIネットワーク)
コメンテイーター、理事、全国講師
日本福音自由教会
クライスト・コミュニティ教会 顧問牧師

 

変わりゆく世界の教会と変わらない日本の教会(3)

—–> <前回、2. 教会の構造が変った  より続く>

3. 世界の潮流が変わった

 世界の福音派教会に強い影響力を与えたのは、「ローザンヌ世界宣教会議」でしょう。1910年のイギリスで開催されたエディンバラ宣教会議を経て、1974年にスイスで開催された「第1回ローザンヌ世界宣教会議」がその潮流をけん引しました。2010年第3回の会議が南アフリカ共和国のケープタウンで開催され、そこで発表された「ケープタウン決意表明」の初めのところに次のような一文があります。「1910年のエディンバラ宣教会議から100年の間に世界のキリスト教会に大転換が起きた。その変化とは、全世界的キリスト教会の成長である」。

 何がそれをもたらしたのでしょうか。第1回ローザンヌ世界宣教会議の主たるテーマは、①福音的宣教の使命を明文化。②未伝地の発掘。③包括的な福音宣教論の構築でした。この会議のイニシャチブを取ったのは、欧米の白人教職者たちであり、アジアやアフリカから招待された人々は、会衆席を埋めるにとどまっていました。

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変わりゆく世界の教会と変わらない日本の教会(2)− 大橋秀夫 −

・写真:秋の花_エルサレムアーティチョーク

● 3回の連載:<第2回>

 

 

大橋秀夫
「日本教会成長研究所」
(現、JCGIネットワーク)
コメンテイーター、理事、全国講師
日本福音自由教会
クライスト・コミュニティ教会 顧問牧師

 

変わりゆく世界の教会と変わらない日本の教会(2)

—–> <前回、1. 聖書の読み方が変わった  より続く>

2. 教会の構造が変わった

 宗教改革が打ち立てた大きな三つの原則は「聖書のみ・恵みと信仰のみ・信者のみ」で、これには変りはありません。しかし、いわゆる「信者のみ」に基づく万人祭司に基づく教会の構造的な変化が世界中で起こりつつあるのです。

 宗教改革者 マルティン・ルターがこだわったのは、恵みと信仰による救いでした。反対に彼がほとんど関心を示さなかったのは、当時のカトリック教会の礼拝儀式です。彼は「礼拝の儀式などは、福音に反しない限りどちらでもよいこと」(アディアフォラ)として儀式の多くを残してしまったのです。

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変わりゆく世界の教会と変わらない日本の教会(1) − 大橋秀夫 −

・写真:秋の花_エルサレムアーティチョーク

この度、SALTYからの執筆依頼に快く応じてくださった、大橋秀夫牧師から寄稿文が届きました。
長らく伝道・牧会に携わり、また、「日本教会成長研究所」の講師として、様々な教団教派の牧師の継続教育や育成に尽力されてこられた、大橋牧師の論説は、世界の教会の動向に対して、日本の教会の課題を明らかにしつつ、危機感を持って問いかけておられる内容です。

3回の連載として掲載いたします。

● 3回の連載:<第1回>

 

 

大橋秀夫
「日本教会成長研究所」
(現、JCGIネットワーク)
コメンテイーター、理事、全国講師
日本福音自由教会
クライスト・コミュニティ教会 顧問牧師

 

変わりゆく世界の教会と変わらない日本の教会(1)

はじめに

 過去2000年にわたって教会は変化し続けて来ました。ここで言う変化とは<刷新>と言う方が適当かと思います。そこには二つの刷新、すなわち霊的刷新と構造的刷新がみられます。

 そもそも教会が誕生したペンテコステの出来事を通して、そこに誕生した群れを最初の教会と呼ぶならば(*注1)、誕生した教会はそれまでのユダヤ人社会の中に存在していた形態、コミュニティーの伝統と形を全く変えてしまうほどの教会でした。

「信者となった人々はみな一つになって、一切の物を共有し、財産や所有物を売っては、それぞれの必要に応じて、皆に分配していた。そして、毎日心を一つにして、宮に集まり、家々でパンを裂き、喜びと真心をもって食事をともにし、神を賛美し、民全体から好意を持たれていた。主は毎日、救われる人々を加えて一つにしてくださった。」(使徒の働き2章44~47節)

ーー
(*注 1)
「教会」と訳されている言葉は、旧約聖書では「全会衆」であり、やがてそれはギリシャ語で「共同体」と訳されます。したがって、教会は旧約聖書の時代から存在していた と主張する人たちもいます。
ーー

 こうした当時のユダヤ人社会ではありえない出来事、革新的な掟破りの行為が教会の誕生でした。以来教会は、2000年の間に様々な変化を経験して今日に至ってきました。私たちのプロテスタント教会もその変化=刷新の結果誕生したと言えます。(無論、「私たちの教会の精神は、初代教会から連綿と引き継がれてきた」と主張する人々がいないとは申しませんが、所詮それは、被宣教国である日本でいくら主張したところで意味を持たないことです。)

 そこで私は近年起こっている教会の変化について考えてみようと思います。

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