「帝国の慰安婦」無罪判決の二つの意味 −西岡力−

 

 

 

西岡力

日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  主筆
麗澤大学特任教授
国基研企画委員兼研究員

「帝国の慰安婦」無罪判決の二つの意味

2023年10月30日

 10月26日、韓国最高裁判所は朴裕河・世宗大学名誉教授の著書『帝国の慰安婦』の記述は「学問的主張ないし意見表明」であって名誉毀損罪で処罰される「事実の摘示」と見ることは困難だとして、罰金1000万ウォン(約110万円)を宣告した2審判決を無罪趣旨で破棄し、高裁に差し戻した。学問の自由の観点から歓迎したい。

●学問の自由を重視

 朴氏は2013年に韓国で『帝国の慰安婦』を出版した。それに対して仏教系の慰安婦支援組織ナヌムの家に居住する元慰安婦9人が2014年6月にソウル地裁に販売禁止仮処分申請と名誉毀損民事訴訟を起こし、同時に検察に名誉毀損罪で告発した。
ソウル地裁は2015年2月仮処分申請を認めて同書を販売禁止とし、原告が求めた53カ所のうち34カ所について削除を命じた。
(現在、韓国で販売されているのは削除を行った後の修正版であり、2014年日本で出版された同書も修正版を元に、さらに著者による修正が加えられている)。

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大きく揺らぐ韓国の学問の自由 − 西岡力−

 

 

 

西岡力

日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  主筆

歴史認識問題研究会会長・モラロジー道徳教育財団教授・麗澤大学客員教授

大きく揺らぐ韓国の学問の自由 − 西岡力−

 

慰安婦問題の大学講義で

大学の講義で慰安婦についての自身の学問的見解を述べ、名誉毀損(きそん)罪に問われた延世大学の柳錫春(リュ・ソクチュン)・元教授(以下、柳教授)に、韓国の検察は懲役1年6月を求刑した。来年1月11日に判決が下されるという。韓国の学問の自由は大きく揺らいでいる。

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大学の講義によって刑事事件の犯人とされた柳錫春教授事件を憂慮する −西岡力−

写真:柳錫春教授(YouTubeから)

 

 

西岡力

日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  主筆

歴史認識問題研究会会長・モラロジー研究所教授・麗澤大学客員教授

*この記事は、著者の依頼により、Japan Forward より転載しました。

「大学の講義によって刑事事件の犯人とされた柳錫春教授事件を憂慮する」

2021年9月19日

「韓国は重要な隣国だが、価値観を共有しているとは言えない」。これが、現在の日本政府の隣国に対する評価だ。

2014年までは価値観の共有を認めていた。当時の安倍晋三首相は、「韓国は、基本的な価値や利益を共有する、最も重要な隣国」と演説している。だが、その後、朴槿恵大統領(当時)に関する記事をめぐって産経新聞のソウル支局長が起訴されるという事件が発生し、安倍首相は、2015年の施政方針演説で「韓国は、最も重要な隣国です」として「価値観共有」という評価を取り下げた。

その後、2018年10月に韓国最高裁が1965年の国交正常化の際に両国が解決したと合意した日本統治時代の清算について、日本の統治が当初から不法なものだったから賠償責任が残っているという国際法違反の判決を下す等の出来事があり、日本政府は継続して韓国に対して、「価値観を共有する」という評価をしていない。

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