明石清正
SALTY論説委員
カルバリーチャペル・ロゴス東京 牧師
ロゴス・ミニストリー 代表
クリスチャンのみなさんへ
ホロコーストの時のキリスト者の過ちを繰り返してはいけない、そして、その決意は今しなければいけないことを申し上げます。
10月7日にハマスがイスラエル人を惨殺し、大虐殺を実行して間もなくして、あるユダヤ教ラビが、クリスチャンたちへの呼びかけがありました。一つは、祈ってほしいこと。次に、声を上げてほしいことです。
ホロコーストの再現
今、世界中で暴力的デモが多発しています。ロシアでは、テルアビブ発の飛行機が降り立った途端、群衆が飛行機にまで押し寄せてきて、イスラエル国籍の者がいたらなぶりものにするために集まってきています。トルコでは、イスタンブールで、「ユダヤ人お断り」の標識を付けたお店まで出てきました。
ホロコーストは、ナチスドイツだけで起こったのではありません。彼らはユダヤ人の影響力を悪魔化して、ユダヤ人を何とかしなければ世界にとって危険であると流布し、歴史的にユダヤ人に対して反感や敵意を抱いていた、ドイツ以外の国々の人々もその動きに同意しました。各国は、反ユダヤ政策がドイツで取られているのを知りながらも傍観していました。
ナチスは、ユダヤ人種をどうすればよいかの「解決」策をいろいろ立て、ある時は一気に世界のどこかの違う地域に移住させるというものもありましたが、たった今、ネット上ではその話が普通の日本人もしています!そして「最終解決(Final Solution)」として、ガス室送りにしたのです。
ハマスが行った残虐な行いは、未だすべて明らかにされていません。それは、あまりにも残虐の実態がすさまじいからです。生きたまま火あぶり、赤ん坊や少女の斬首、手足の切断、赤ん坊も含める女性への強姦(骨盤が骨折するほどのもの)、殺傷した人のスマホを使い、それをその人のフェイスブックにアップするなど、こうした虐待に加え、約240名の拉致です。いつもは遺跡を発掘する考古学庁が、その技術を使って、灰の中にあるお骨を探しているのです。
以下は、ブリンケン米国務長官による証言:
「 4人家族。6歳と8歳の少年少女と両親が朝食のテーブルを囲んでいる。父親の目は子供たちの目の前でえぐり取られた。母親の乳房は切り取られ、女の子の足は切断され、男の子の指は切り落とされた。 そして死刑執行人たちは座って食事をした。それが、この社会が扱っていることなんだ」
Secretary of State @SecBlinken shares testimony of Hamas’s atrocities:
“A family of four. A young boy and girl, 6 and 8 years old, and their parents around the breakfast table. The father’s eye gouged out in front of his kids. The mother’s breast cut off, the girl’s foot… pic.twitter.com/CoUBh9v13o
— Aviva Klompas (@AvivaKlompas) October 31, 2023
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以下は、生存者の証言集です。
想像を絶することが起こっています。こういうことが起こると人間は、正常性バイアスがかかります。あまりも衝撃的なので、何事もなかったように逆に過ごしてしまうのです。
黙っていたキリスト者
話を戻しますと、ホロコースト時、キリスト者は、当時、うすうすユダヤ人が迫害されていることを知りながら、声を出しませんでした。少数の人々が、個々のレベルで勇気を出して救助したという話、例えば、コーリー・テン・ブームの「わたしの隠れ場」(いのちのことば社)に出てくるような、救出の証しがあります。
そしてこのリンク先のフェイスブックのシェア元の記事を読んでください。ちなみに、投稿主は、イスラエルの中でもアラブ人との平和共存を志向する、ご主人が知日派のヘブライ大学教授の方です。私が先に書いた記事と同じことを書いておられます。ハマスを作り上げたのは、イスラエルを含め世界各国なのだということです。その中で日本は、ガザ支援に対する最大の国の一つなのです。(参照記事:「実は、ハマスにはいてほしい全世界」)
左翼思想に支えられた中東業界
しかし、日本政府の方針は、第四次中東戦争後の石油ショック後に作り上げられた、「アラブ寄り、イスラエルとは距離を取る」という方針を貫いています。アラブ諸国はハマスをテロ組織に認定して、ものすごく嫌っています。イランは大敵です。アラブボイコットなど、何も気にしなくてよいのです。
そして、その親パレスチナの政策を理論的に支えているのが、中東業界の学者らの考えです。日本赤軍がイスラエルの空港で銃乱射した事件と相通じる左翼思想を根拠としています。つまり、被抑圧者であるパレスチナを解放するには、抑圧者のイスラエルに暴力的手段で抵抗することは正義であるという考えです。
したがって、国際政治学者など専門家は、軒並み、ハマスが邪悪なテロ組織であることを言及せず、ガザのハマスに対するイスラエル攻撃を非難するのです。(参照記事:「岸田首相はイスラエルの自衛権を擁護したのか?」)
繰り返します。ナチスによるホロコーストは、ナチスだけによって可能になったのではありません。歴史的、構造的な、ユダヤ人に対する悪意ある二重基準が、距離の置き方、冷たさ、ナチス容認の立場が可能にしました。
ところで、日本人は、先の大戦で空襲や原爆の被害を受けました。現在は北朝鮮の拉致被害者のことで心を痛めています。ですから、イスラエルの人々の痛みを共有できるはずです。けれども、そのような反応はほぼ見られません。(関連記事)
神学枠組みの違いではなくキリスト者の良心
従来、キリスト者は、神学的にもユダヤ人が呪われてもかまわないという考えをどこかしら持っていました。日本のキリスト教の界隈では、ユダヤ人やイスラエルのことをディスペンセーション神学云々という議論に持ち込んで、矮小化していると感じています。キリスト者としての倫理、つまり、ユダヤ民族は神に愛されており、その神の契約をキリストにあって私たち異邦人にも受け継がれたのだという聖書の語る基本メッセージから、話を逸らしてはいけません。
現代イスラエル国のしていることに対する批判は大いに結構です。イスラエル国内でも、イスラエル人も大いに行っています。しかし、今は、生存がかかっている大きな危機なのです。そこで批判する暇があるなら、この基本的なところで、叫ばないといけないのです。今、叫ばないでどうするのですか?
以下、1939年、バプテスト教会の牧師が、礼拝説教で、「中立という名にある倫理的問題」として説教した内容です。
フォスディック(牧師)は、また、恐ろしい暴力に直面したときの不作為は、批判的に評価され、道徳に根ざしたものでなければならないと主張した。アメリカの多数派に属する多くの人々について、フォスディックは、「彼らが中立を貫く理由は、あまりに表面的で、あまりに利己的で、深い根拠がなく、倫理的に十分に擁護できるものではない」と指摘する。
“The Ethical Problems of Neutrality: A Columbus Day Sermon of Rediscovering America“