織田元空将の正論に申し訳ない−西岡力−

 

 

西岡力
日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  主筆
麗澤大学特任教授
国基研企画委員兼研究員

織田元空将の正論に申し訳ない

産経新聞 令和6年2月8日

1月16日付「正論」(産経新聞コラム)で元空将の織田邦男氏が書いた「憲法に自衛隊明記が必要な理由」を読んで私は恥ずかしくてならなかった。織田氏は結論でこう書いた。

<国防という崇高な使命を果たす自衛隊を憲法に明確に位置付ける。自衛官に名誉を与えるだけでなく、国民に国防の当事者意識を持たせることになる。「13・2%」という異質性は、大いに改善されるだろう。ひいては抑止力強化に繫(つな)がり、結果として平和が守られることになる>(13・2%は「もし戦争が起こったら国のために戦うか」の問いに「はい」と答えた日本人の比率)

民間人が率先すべき論陣

自衛隊員に名誉を与えるべきというこのような論説を、命がけで国防に従事してきた元自衛官自身に書かせてはならないと私は考えてきた。われわれ民間人が率先してその論陣をはるべきだからだ。

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【対談】西岡×中川「統一協会解散請求への疑義」5−中川晴久−

【 沈黙容認した宗教審議会 】



中川
 ところで岸田首相による突然の基準変更ですが、基準が新しくなって、それで昔の出来事、それも決着済みの民事判決を遡って蒸し返して裁けるのでしょうか。法の不遡及の原則という法理念に照らして腑に落ちない話です。

西岡 恐怖を覚えたことは、まだあります。宗教法人審議会の委員に宗教者がたくさんいました。私のよく知るプロテスタントの牧師で私が以前勤めた大学の前理事長もいました。日本基督教団総幹事もいれば、神道や仏教からも入っています。その人たちが全員、異論を言わず賛成したのも信じられないし、ショックですよ。一体、信教の自由をどう考えているのでしょうか。
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【対談】西岡×中川「統一協会解散請求への疑義」2−中川晴久−

【 メディアの偏向と政府による無理な法解釈変更適用 】

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法の下の平等はあるのか

西岡 過去に刑事事件を起こし、解散命令の請求が出されたけれども解散命令は却下された宗教法人があります。
 法友之会は一九九〇年、教祖と信者七人が海岸で懺悔をさせると称し、信者に暴行を加え溺死させた。世界救世教は一九六八年、幹部らが信者に心霊療法を施し死亡させ、理事二人が贈賄容疑で逮捕されました。
 いずれも教祖や教団幹部による刑事事件です。こうした先例がありながら民事訴訟判決にまで適用対象を拡大して解散命令請求に踏み切るからには、懺悔させるとして溺死させることや心霊療法による死亡、それ以上にひどいことが旧統一協会で行われていたことが誰の目にも明らかであれば、基準が変わることも、まだ理解できます。
しかし、繰り返しますが、そうした事情は見当たりません。

【対談】西岡×中川「統一協会解散請求への疑義」1−中川晴久−

【 統一協会解散請求への疑義 】

 

    

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統一協会解散請求への疑義
中川晴久(東京キリスト教神学研究所幹事)・西岡 力(モラロジー道徳教育財団道徳科学研究所教授)
出所:月刊「正論」令和25年12月号

中川
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を文化庁が東京地裁に請求しました。キリスト教の牧師としてここまでの政府の動きを見てきましたが、私は大変問題があると考えています。
政府が解散命令を請求した際、解散命令が認められない事態などまず通常は考えにくいのですが、それが成り立つのは正しい動機、正しい主張に基づいた請求である場合の話であって、今回はそうではない。
スイスのカトリック神学者、ハンス・キュンクが「半分の真実は半分の偽りである」と言っています。私が痛感するのは、明るみに出ていることの陰で、隠されていることが存在することです。もう半分の真実という、全く表に出ずに私たちには見えていない部分があって、皆が一面だけを見て物事が進んでいるように思えてなりません。
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例えば、今回の解散命令請求には、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が集めた証拠や裁判資料、知見の数々が使われています。「事実なので問題ない」という人もいるかもしれませんが、一民間団体、それも教団と長年敵対・対峙してきた組織の主張を政府が代弁し、情報も依存しているに近い。手続きの中立性という意味で大いに疑問です。
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西岡 私は恐怖すら覚えました。そもそも旧統一協会が解散されなければならない事情がいつ生まれたのか、が不可解です。旧統一協会には、相当以前からさまざまな批判があったが当時の国、文科省は一貫して「解散命令請求はできない」という立場を繰り返し示してきました。
岸田文雄内閣も昨年十月十四日にその立場を閣議決定しました。二〇一二年に文科省が解散命令請求をしないことは違法だとして全国弁連が国家賠償請求訴訟を起こしましたが、これも二〇一七年、東京地裁は訴えを棄却しています。にもかかわらず今回は請求に踏み切りました。
それは閣議決定のわずか五日後の昨年十月十九日に岸田首相が、その解散命令の根拠対象を刑事、刑法に違反した行為だけでなく、民法七〇九条の不法行為も含めると一晩で答弁を変えて広げたからで、そこから今日の事態につながっています。その時も私は恐怖を覚えましたが、そもそも、旧統一協会を宗教法人として解散させなければならない、一体どのような出来事や事情の変化があったでしょうか。

パレスチナ問題健忘症-田口 望-

田口望
田口望

 

 

 

 

田口 望
我孫子バプテスト教会 牧師
SALTY 論説委員

そもそも今回の問題の主因は何年前の出来事に起因するのか?

日本のマスコミはイスラエルのガザ地上侵攻に対して
「無辜の一般市民を巻き添えにするな」
「即時停戦」
の大合唱です。そして、そもそも、10月7日のハマスからイスラエル一般市民への凌辱、拉致、殺人、放火などの第一撃ですらイスラエルによるパレスチナへの「不当な占領」が遠因であるといいます。そのあと、解説として2000年前のユダヤ人国家の亡国、100年前のイギリスの三枚舌外交、50年前の中東戦争、30年前のオスロ合意などの解説をして、「自分は中立ですよ」としたり顔で解説で終わる・・・。
そんなyoutube動画、新聞解説、テレビ報道がいっぱいです。
国際社会は無責任です。そして忘れっぽい。

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【スクープ 統一教会問題】岸田総理は国民に「嘘(小西案)」を告げた ‐ 中川晴久 ‐

 

 

中川晴久
東京キリスト教神学研究所幹事
日本キリスト神学院院長
SALTY-論説委員

 

< 恐ろしいトーク >

今月13日に統一協会に対する解散請求がなされました。そこに至る最大のターニングポイントは昨年10月19日での岸田文雄総理の宗教法人法81条1項の宗教法人解散要件の解釈変更にあります。

前日18日衆議院の予算委員会では「法令違反は刑事事件に限る。」といい、刑事事件を起こしていない統一教会に対して解散請求ができないことことを示唆しました。ところが、翌日19日の参議院予算委員会では「民法の不法行為」も入りうるとし、統一協会の解散命令請求が「ありうると考えている」と語ったのでした。
質問に立っていた小西洋之議員(立憲民主党)は、「朝令暮改にも程がある。確認だが民法の不法行為責任について解散命令の請求ができるというのが政府見解でいいか」と問いただしたところ、岸田総理「ご指摘のように、政府としては改めて考え方を整理した」と述べたのでした。

しかし、恐ろしいことに、この一日の解釈変更について今年8月20日における「放送不可能。Ⅱ」上映後のトークイベントにて、小西洋之議員(立憲民主党)が、岸田総理に対して国民に「嘘」の説明する内容まで伝授したことを暴露していたのである。

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【統一協会問題】誤った情報で安倍元総理が殺され無理な解散請求へー中川晴久ー

 

 

中川晴久
東京キリスト教神学研究所幹事
日本キリスト神学院院長
SALTY-論説委員

 

< はじめに >

日本政府は10月にも統一協会に対する宗教法人解散請求を裁判所に提出するといわれています。私もアンチの立場から25年の間観察してきた経緯もあり、この組織については関連記事をいくつか書いてきました。ただ、その中で日々思わされるのは、世間の風評と実態との乖離です。当初、紀藤正樹弁護士と日頃から親しい有田芳生氏、鈴木エイト氏、西田公昭教授などが、テレビに出演しこの問題を語っていました。私には一つのグループがそれぞれに一つの意見を言っているようにしか見えなかったのですが、さすがに別の角度からの議論も起こるだろうと思っていると、まるでブレーキがかかる気配すらなく、あれよあれよという間に話が1つの方向に進んでいくではありませんか。
 全国霊感商法対策弁護士連絡会 (以下「全国弁連」)は政府に解散請求を出させたく世論を動かしたい意図は分かるのですが、普通はそこに両論併記や反対意見などの議論があって方向の修正や矯正がなされるものです。ところが、市場に出回っている情報は過度に一部が強調されすぎています。1つのグループの1つの意見のみが全体を覆っているように私には見えます。
 第二ヴァチカン公会議の神学者ハンス・キュンクの言葉を借りれば「半分の真理は半分の偽りでもある。」のです。とくに宗教の問題にあっては、世相を騒がす芸能人や政治家のスキャンダルと同じような結果になってはなりません。もっと慎重を要するはずです。とくにこの問題は、安倍元総理が殺されたことに端を発して騒ぎが拡大したもので、安倍元総理の殺害に至るまでには、多くの誤情報が積み重なっていました。ですから今考えられている以上に根深い問題としてみる必要があります。

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慰安婦問題の認識が韓国で逆転した日 −SALTY−

写真1:向かって右から李宇衍氏、西岡力会長、金柄憲氏

 

以下は、日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY- の 西岡力 主筆 が代表を務める「歴史認識問題研究会」の 3月25日の記事です。

SALTY として転載いたします。

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慰安婦問題の認識が韓国で逆転した日

私たち歴史認識問題研究会(以下、歴認研)は3月15日から3月20日まで韓国内の歴史認識を調査するために訪韓しました。第一日目となる3月15日は毎週水曜日に日本大使館前で行われる水曜デモを見学しました。

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日本人の半分以上が誤用している「政教分離」

日本人の半分以上が誤用している「政教分離」

先月11日は建国記念の日、戦前は紀元節と呼ばれた日でした。これは1873年に神道の日本書紀に基づく祝日として、制定されました。戦後、政教分離原則に反するものとして、1948年に廃止されたのですが、1968年に再び「建国記念の日」として祝日法と政令で定められました。これを「戦前回帰」、「逆コース」と見なした日本のキリスト教界は以来、2月11日を「信教の自由を守る日」として、その大切さを覚える日としています。もとい、「政教分離」は信教の自由を守るための制度的保障なのですが、某カルト宗教の一件以来巷ではこの用語が全く逆の用語で使われてしまっています。

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本来語るべき統一協会問題 ~市議会は裁判で統一協会に負ける~ -中川晴久-

 

 

 

中川晴久
東京キリスト教神学研究所幹事
日本キリスト神学院院長
SALTY-論説委員

< はじめに >

2022年7月8日、安倍晋三元総理が暗殺されて以降、統一協会問題は本来的なものでなく政治利用されてしまった。政治問題化する方向で世論が煽られ報道されていることに対して、私は当初より警鐘を鳴らしてきた。同時に、私は繰り返し「安倍元総理と統一協会は関係ない」と伝えてきた。事実、今に至るも憶測以上の何の証拠もでてきてない。統一協会と直接関係があったとすれば、トランプ氏が出るということで一緒に出演したビデオメッセージのみとなっている。しかし、時の経過は何が真実であったか、誰が真実を語っていたかを明らかにしてしまう。
私は統一協会と安倍元総理の双方をずっと見てきた。そのような者にとっては、ワイドショーが偏向した情報を発信し、世論が煽られ、それをワイドショーがさらに加速させている状況を見せられると、人々が真逆に全力疾走しているかのように思えてしまう。以下、統一協会問題として本来語られるべき事とこの問題のあるべき方向を確認したい。
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