高市政権は永住者の急増を止めよ −西岡力−

写真: 法務省

 

 

西岡力
日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  主筆
麗澤大学特任教授
国基研企画委員兼研究員

 

高市政権は永住者の急増を止めよ

2025.10.20 (月)

 今年6月末現在の在留外国人統計が公表された。在留外国人数は395万6619人で、過去最高を更新した。昨年末に比べ18万7642人増加した。この趨勢だと、今年末には400万人を超える。国別で見ると、1位が中国で90万738人(在留外国人の22%)だ。ついに在留中国人が90万人を超えた。2位ベトナム66万483人、3位韓国40万9584人、4位フィリピン34万9714人、5位ネパール27万3229人だ。

在留資格別では、永住者が93万2090人で一番多い。永住者の国別内訳を見ると、やはり中国が1位で35万722人、2位フィリピン14万2745人、3位ブラジル11万7232人だ。なお、戦前から在留する韓国・朝鮮人などの特別永住者はこの他に27万292人いる。

不十分な与党政策論議

 この在留外国人とどのように付き合うのかが、大きな課題として浮上している。高市早苗新政権に与党として参画することを決めた日本維新の会は自民党との政策協議で「外国人比率の上昇抑制と外国人総量規制を含む人口戦略の策定」を要求した。

 しかし、外国人を巡る政策論議では、永住者の急増を止めよという、国基研と私が平成22(2010)年以来繰り返し提言してきた論点はいまだに無視されている。永住者は、在留期限と活動の制限がなく、いつまでも在留でき何をしても許される在留資格だ。まさに移民と言える。この永住者が平成9(1997)年末には8万1986人、在留外国人の5.5%だった。それから30年弱で、永住者は在留外国人の23.5%を占めるまでになった。中国人永住者は2万8445人から急増している。 

永住者急増の理由は、平成10(1998)年に法務省入管局(当時)が突然、永住資格申請要件を大幅に緩和したことだ。具体的に言うと、それまで原則として日本在住20年を基準としていたが、それを半減させ10年とした。また、日本人を配偶者に持つ者は在住3年に大幅に緩和された。この緩和は法律改正に基づかない法務省の行政判断でなされた。緩和が決められたとき、国会や与党内で一切議論が行われず、マスコミも報道をしていない。

 何のために要件緩和を行ったのかと法務省に質問したところ、平成15(2003)年版入管白書で「規制緩和と事務の簡素化」という説明をしているというとんちんかんな回答を得た。事実上の移民である永住者を急増させる政策決定がきちんとした議論なしに国民の知らないところで行われたのだ。

国益重視の外国人政策を

 国基研の政策提言を受けて、平成30(2018)年の入管法改正に際して参院法務員会は「入管法22条(日本国の利益に合すると認めたときに限り、永住を許可)の厳格適用」を求める付帯決議を行ったが、その後も状況は変わっていない。国基研は昨年9月、「国益を基準にする外国人政策を確立せよ」という政策提言を出して、永住者急増を止めよと再度問題提起した。高市政権はぜひこの問題に正面から取り組んでほしい。(了)

 

国家基本問題研究所
「今週の直言」より転載
 2025.10.20 (月)
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・写真: 法務省(Wikipediaより)
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