写真:北朝鮮拉致被害者家族会と訪日中のトランプ米大統領が面会(10/28)

西岡力
日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY- 主筆
麗澤大学特任教授
国基研企画委員兼研究員
拉致家族に「何でもする」と語ったトランプ氏
10月28日、北朝鮮拉致被害者家族会と訪日中のトランプ米大統領が面会した。被害者横田めぐみさんの母の早紀江さん、弟で家族会代表の横田拓也さん、被害者田口八重子さんの息子で同会事務局長の飯塚耕一郎さんをはじめ9家族14人と支援組織「救う会」会長の私が参加した。
●被害者帰国へ日米連携が復活
当初は、大統領ではなくルビオ国務長官との面会が設定されていた。ところが、控え室で待機していた私たちに政府関係者が、冒頭の写真撮影にトランプ大統領が出てくると告げた。11時45分、整列していた私たちの前に高市早苗首相に先導されてトランプ大統領が現れた。撮影の後、記者団の前でトランプ大統領はこう語った。
「(拉致問題は)何年も続いています。私はずっとご家族と共にいました」「私たちは拉致問題について(北朝鮮指導者金正恩氏と)討議するつもりです」「私たちはいつもこのこと(拉致問題)を念頭に置いています。これに手を着けたのが安倍晋三氏だからです」「私たちは力の限り何でもします」
その後、トランプ大統領は横田早紀江さん、横田拓也さん、被害者有本恵子さんの姉妹(北谷昌子さん、有本郁子さん)らと言葉を交わしながら、退場した。大統領は有本恵子さんの姉妹が額に入れて持参した、自身から姉妹の父の故有本明弘さんに宛てた手紙のサインを見て「きれいなサインだな。誰のかな」と話しかけ、隣に立っていた横田拓也さんがあなたのサインですよと返事をする一幕もあった。面会時間は約3分だった。その後、ルビオ長官との面会が22分間続いた。
日米が一体となって金正恩政権に拉致被害者の帰国を迫るという安倍政権が第1次トランプ政権時に作った構図が高市政権で復活した。これは大変心強い。
面会2日前、時事通信がワシントン発で、トランプ氏が家族会との面会に慎重な姿勢を示しており、拉致問題は「解決済み」と主張する北朝鮮を意識している可能性があると報じ、面会者が国務長官になったことから、トランプ政権が拉致問題解決を求める姿勢を弱めたのではないかと心配する向きもあった。しかし、それは杞憂だった。トランプ氏の日程管理担当のスージー・ワイルズ首席補佐官が米国内で関心が低いという理由で大統領と家族会の面会に消極的だったらしいが、最終的にトランプ氏本人が決断したという説明を関係者がしている。
●年内にも米朝首脳会談の可能性
金正恩政権の目標は平壌にトランプ氏を呼ぶことだ。トランプ氏が何を好むのか、何が嫌いなのかについて徹底的な調査をしている。その一環として金正恩氏は最近突然、側近とゴルフの練習に熱中しだした。米朝両国は水面下で接触を続けている。トランプ氏は今回のアジア歴訪時の米朝首脳会談について「時期の調整がうまくいかなかった」と29日に話した。少し時間をおいて、早ければ年内か来年の早い時期に米朝首脳会談があるかもしれない。そのときこそ、拉致問題解決への最大のチャンスだ。(了)
「今週の直言」 2025.10.29 (水) より転載


