「永住外国人」の急増を止めよ −西岡力−

写真:「第1回 外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する
関係閣僚会議」_2025-1104(首相官邸ホームページより)

 

 

西岡力
日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  主筆
麗澤大学特任教授
国基研企画委員兼研究員

西岡力 / 2025.11.24 (水)
 

「永住外国人」の急増を止めよ

高市政権で問題解決を

 高市早苗首相は外国人政策を内閣の重要課題に挙げた。その指示内容には「在留資格の審査の厳正な運用と在留資格のあり方・日本国籍取得の厳格化検討」と「外国人受け入れの基本的なあり方に関する基礎的な調査・検討」が含まれている。 私は15年前から事実上の移民と言える永住許可が急増していると警鐘を鳴らしてきた。ぜひ、その問題も真摯(しんし)に取り上げてほしい。

 令和7年6月末現在の在留外国人数は395万6619人で過去最高を更新した。前年末に比べ18万7642人増加した。この趨勢(すうせい)だと年末には400万人を超える。国別で見ると1位が中国で90万738人で22%を占める。2位ベトナム66万483人、3位韓国40万9584人、4位フィリピン34万9714人、5位ネパール27万3229人だ。

 在留資格別では永住者(永住許可を得た者)が93万2090人で一番多い。その国別内訳はやはり中国が1位で35万722人、2位フィリピン14万2745人、3位ブラジル11万7232人だ。 永住者は戦後50年以上経た平成9年末には8万1986人(在留外国人の5・5%)だった。それから約30年で93万人(同23・6%)に、中国人永住者は2万8445人から35万人に急増した。

 永住者は在留の期限も活動制限もない。配偶者や子にも在留資格が付与される、外国人として最も恵まれた在留資格だ。

周知の通り中国は国防動員法を定め、在外中国人も有事の際の動員の対象とし、従わない場合には罰則規定まである。

 永住外国人急増の理由は、平成10年に法務省入管局(当時)が突然、永住資格申請要件を大幅に緩和したことだ。具体的に言うと、それまで原則として日本在留20年を基準としていたが、それを半減させ10年とした。また日本人配偶者は3年に大幅に緩和された。

納得できぬ要件緩和

 この緩和は法律改正に基づかない、法務省の行政判断でなされた。緩和が決められたとき国会や与党内で議論がなされずマスコミも報道していない。法務省に、何のために要件緩和を行ったのかと質問したところ、平成15年版入管白書で「規制緩和と事務の簡素化」という説明をしている、というおかしな回答を得た。これは事実上の移民である永住者を急増させる政策決定の理由にならない。

 平成30年の入管法改正に際して参議院法務委員会は「入管法22条(日本国の利益に合すると認めたときに限り、永住を許可)の厳格適用」を求める付帯決議を行ったが、その後も状況は変わっていない。私が企画委員として参画している「国家基本問題研究所」は昨年9月、「国益を基準にする外国人政策を確立せよ」との政策提言を出し、永住者急増を止めよと再度問題提起した。しかし永住者急増への危機感は広がっていない。

 私が永住者急増に強い危機感を持つ理由は、朝鮮問題専門家として北朝鮮を支持する在日朝鮮人の活動と40年以上向き合ってきた経験があるからだ。戦前から日本に在留する朝鮮半島出身者などとその子孫に与えられる特別永住者は一般永住者93万人と別に27万人おり、韓国24・5万人、朝鮮2・2万人だ。この中で北朝鮮を支持する者が作った朝鮮総連によってわが国は多くの国益上の困難を経験してきた。

 内閣情報調査室の当時の調べで朝鮮総連は1990年代初め、年間1800億円から2000億円相当の資金と物資を北朝鮮に秘密裏に送り核開発の原資になっていたという。大金が送金できた背景には組織的な税金逃れがあった。現在わが国は朝鮮総連傘下の在日本朝鮮人科学技術協会の核・ミサイル専門家5人に対し北朝鮮を渡航先にする再入国許可を禁じている。わが国の安全を脅かす北朝鮮の核・ミサイル開発にわが国に在留する特別永住者が大きく貢献してきた背景がある。

 朝鮮総連は平成9年、横田めぐみさんの拉致が明らかになり家族会と救う会が活動を始めたとき、でっち上げだと批判した。ところが14年に北朝鮮が拉致を認めると多くが組織を離れ、韓国籍を取得したり日本に帰化したりし朝鮮籍は2・2万人まで激減した。

国益の観点から見直しを

 わが国は平成10年に旅券を持って日本にやってきた外国人に永住許可を大量に与える政策決定を行い、その結果、永住者は急増した。彼らはデモや集会などの政治活動もできる、民族学校を作って自国の独裁者を賛美する教育を行うこともできる、金融機関も作れる、新聞雑誌も出せる。

 私は合法的活動を取り締まることには絶対に反対だ。だが、国益の観点から永住許可の要件をまず、平成10年以前の在留20年に戻し、その上で、永住制度を廃止して在留期限がある、言い換えると在留資格延長時に国益の観点から不許可にすることができる定住制度に一本化することを提案している。ぜひ、早急に検討してほしい。(にしおか つとむ)

(産経新聞11月24日掲載より転載)