ベネズエラの独裁者逮捕は国際法違反ではない −西岡力−

 

 

 

西岡力
日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  主筆
「救う会」会長(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)
麗澤大学特任教授

ベネズエラの独裁者逮捕は国際法違反ではない

2026年 1月4日(日)

米軍によるベネズエラの独裁者逮捕について国際法違反だという意見が多く出ています。プーチンによるウクライナ侵略と同じような力による現状変更だと批判する声も多いです。しかし、私はその意見に賛成できないです。その理由を書きます。

 プーチンによるウクライナ侵略はウクライナの領土を武力によって奪い取る行為です。力による現状変更そのものです。これが認められればまさに国際社会は弱肉強食のジャングルになります。一方、トランプ大統領は領土的野心を一切持っていません。逮捕されたマドゥロは刑事犯として米国の裁判にかけられます。米軍は民主的な政府が樹立されたら撤退するとも明言されています。

 次に強調したいことは、今回の事態を判断するときに、同時多発テロ勃発後、武力行使あるいは自衛権行使に関する国際法の基準が大きく変わったことを見逃してはならないということです。2001年9月の同時多発テロ勃発直後に、ブッシュ(子)政権の米国はテロとの戦争を宣言しました。そして日本政府はそれを全面的に支持しました。私たち家族会・救う会はテロ攻撃の半年前に訪米して拉致はテロだ、テロは全世界の敵だ、米国も拉致という北朝鮮のテロに対して一緒に戦って欲しいとアピールしました。

 ブッシュ政権の「テロとの戦争宣言」は国際法の新たな地平を開くものでした。それまでテロは犯罪とされて、警察が対処していましたが、同時多発テロはあまりにも被害が大きかったので、国家ではないテロ集団に対して国家が戦争、すなわち自衛権の行使を宣言して軍隊を動員しました。刑事事件であれば犯人を逮捕して3審制の裁判にかけますが、戦争であればその場で犯人を殺害します。

 米軍は同時多発テロの首謀者ビン・ラディンを10年後の2011年5月、殺害しました。2011年5月2日(米国現地時間5月1日)、バラク・オバマ大統領はパキスタンのアボッターバードに潜伏していたビン・ラディンを米国海軍特殊部隊に殺害させました。このとき、パキスタンを含む国際社会は米国の行動を容認しました。

 テロとの戦争によって自衛権の範囲が軍人同士の武力行使、伝統的戦争から、制服を着ていない非軍人への武力行使まで広がったのです。この大きな国際法解釈の拡大、あるいは変更を国際社会は支持あるいは容認しました。日本政府もテロとの戦争を支持しました。我々救う会は、拉致はテロだと主張して、この国際法の基準変更を利用しました。

 今回のベネズエラへの米軍の攻撃も、麻薬取締という刑事事件に軍隊を使ったケースです。国家ぐるみで麻薬販売をしているという事実がその背景にあります。私は2001年の米国のテロとの戦争宣言で武力行使に関する国際法の基準が変わったことが今回のベネズエラ事態の背景にあると思っています。

 まず、自国の領土、国民、名誉を守ることが第1で、そのためには使うべきだと判断すれば武力を使う世界に私たちは生きています。わが国もそのために軍事力整備と情報機関整備に早くとりかかるべき時です。

西岡力

 

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