
西岡力
日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY- 主筆
「救う会」会長(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)
麗澤大学特任教授
真冬の衆院解散の裏に拉致問題
真冬の衆院解散の大きな目的の一つに、拉致問題を進展させることがある。今年前半に高市早苗首相が北朝鮮の金正恩総書記と会談する可能性が出てきた。会談実現には高市内閣が国民の支持を得ていることを示す必要がある。日程から逆算して、2月に総選挙を実施せざるを得なかったのだ。
●トランプ氏に4月訪朝の可能性
高市首相は19日、衆院解散を明らかにした会見でこう語った。
「当面の(物価高)対策を打つことができたこのタイミングで、政策実現のためのギアをもう一段上げていきたい。拉致問題の解決に向けて、首脳同士で正面から向き合い、具体的な成果に結びつけたい。また、国論を二分するような大胆な政策、改革にも、果敢に挑戦していきたい」
国民の信を問う理由として、拉致問題を第一に挙げた。「首脳同士で正面から向き合い、具体的な成果に結びつけたい」と、金氏との会談について語っていることに注目したい。
4月に米国のトランプ大統領が訪中することは決まっている。金正恩政権はその時にトランプ氏に平壌を訪問してもらうべく昨年から水面下で働きかけてきた。トランプ氏も繰り返し金氏との会談に言及しており、米側の反応は肯定的だと北朝鮮筋は語っている。
トランプ大統領訪朝のため、金氏はトランプ氏の嗜好に関する徹底した調査を行った。ゴルフを好むことを知って、昨年8月に中国からゴルフ選手を招いて、あの巨体でゴルフのレッスンを受けている。核問題では、2019年の米朝首脳会談で隠蔽したカンソンのウラン濃縮施設の廃棄を含む核兵器製造施設の全面廃棄と、米本土に届く長距離弾道ミサイルの廃棄まで考慮している。
トランプ氏は昨年10月、東京で拉致被害者の家族会と面会した際、次に金氏と会う時に拉致問題を議論すると明言した。2019年の首脳会談でトランプ氏は、核を放棄すれば豊かな国になれると金氏を説得した。米国は経済支援をせず、日本が支援するが、その条件は拉致問題解決だとして、金氏に安倍晋三首相(当時)との会談を促した。金正恩氏はそれに応じる意向を示した。今年4月にあり得る米朝首脳会談では同じことが繰り返されるはずだ。
●高市氏も日朝会談準備
だからこそ、高市首相は2月に総選挙に打って出て、国民の支持を得ていることを確認し、それを背景に3月に訪米してトランプ氏に拉致問題での協力を改めて依頼し、4月にあり得る米朝首脳会談とその後に想定される日朝首脳会談に備えようとしているのだ。何としても拉致被害者を取り戻したいという高市首相、拉致問題担当の木原稔官房長官の執念が今回の解散の裏にある。(了)
*国家基本問題研究所ネットコラム「今週の直言」1月26日より転載


