戦時中の信仰者の苦しみは、現在の中国の兄弟姉妹の苦しみ −臼井猛−

臼井猛
SALTY論説委員

 NHK連続ドラマ「エール」は、設定がクリスチャン家庭ということもあって、実際の聖公会の信者である立教大学の先生が演技指導に関わっていることもあり、かなり細かいところまで気を使った設定になっているようです。そして、10月16日は、焼け野が原で薬師丸ひろ子さんが、「うるわしの白百合」の讃美歌を、彼女が玉川大学出身ということもあり、自ら歌いたいと申し出て、ネットで話題になっていますね。

 ところでキリスト者のオンラインニュースサイト「クリスチャンプレス」が、「エール」とキリスト教のつながりを連載しています。以下の部分が目に留まりました。

NHK連続テレビ小説「エール」とキリスト教(6) 特高ににらまれていたクリスチャン

「1943年、裕一(窪田正孝)のもとにも召集令状が届く。その頃、妻の音(二階堂ふみ)の実家、愛知県豊橋にある関内家では、信徒仲間らしい婦人が窓から外の様子をうかがいながらカーテンを閉め、母親の光子(薬師丸ひろ子)に、「次の礼拝は、瓜田さんとこでやることになったで」に伝えるシーンがある。

光子が「大丈夫なの」と心配すると、「瓜田さんとこでやるのは初めてだで、まんだ大丈夫だわ。ほいでも、おたくは特高に目をつけられとるみたいで、たいへんでしょう」と婦人は気づかう。光子はうなずきつつ「さっきも表にいたでしょう」と言うと、「特高にバレんように、気つけておいでんね。司祭さんが大事な話があるちゅうて言うとったで」と声をひそめる。」(テレビの場面)

 グッと来ます。何か?と言いますと、これが、中国の家の教会(いや公認教会もそうなっているかもしれません)の状況に重なるからです。現体制下で、外国の勢力、特にアメリカとのつながりを疑い、キリスト教会に対して、中央政府の諜報機関が直接、現在、取り締まりをしています。

(参照記事:「習近平政権が進める「宗教の中国化」とは
<参照記事の投稿者> 江藤 名保子 Naoko Eto
・日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所地域研究センター副主任研究員)

江西省徳興市にある、教会の集会所が宗教事務局によって閉鎖された時、貼り付けられた取締告知書 Bitter Winter

 誰がブラックリストに載っているかを気にしながら、集まる家を注意深く選別し、何とか礼拝を守っているという状態の教会が多いでしょう。そして、監視体制は戦時中の日本以上です、ハイテクを駆使してスマホの情報を当局が完全掌握しているので、どこで何をしているのかも知られてしまっています。

 日本の教会の方々が、少しでも、祈りの中でも、同じ兄弟姉妹が昔の先輩たちと同じようなところを、まさに今、通っていることを覚えて、苦しみと痛みを共にしていただけたらと願います。

「一つの部分が苦しめば、すべての部分がともに苦しみ」(コリント第一12章26節)

 

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・写真(トップ):タカサゴユリ(台湾原産)
撮影:2015-8/22    宝塚市
撮影者:@ Shinichi Igusa