第17回『南原繁研究会シンポジウム』開催

 南原繁研究会主宰の 第17回『南原繁研究会シンポジウム』が、2020年11月3日(火)午後1時から学士会館を会場に開催されました。

今回は、新型コロナウィルスの感染拡大の第二波の最中でもあり、会場の学士会館での参加人数を制限しての開催と、ZOOM でのオンライン開催として行われました。

ーーー

 基調講演の前川喜平氏は、「教育勅語」の研究を踏まえて、戦後の教育基本法の制定、日本国憲法の制定、及び、2006年の教育基本法の改正の経緯とその背景、その意味する事柄などをわかりやすく語られました。
基調講演:前川喜平氏

 ご自身の1979年からの文部省(現:文科省)での働きを踏まえ、大平内閣、中曽根内閣、森内閣、小泉内閣、安倍内閣での教育基本法改定への取り組みのポイントも語られる中で、改正された教育基本法の理念の中に、なお、日本国憲法の精神、基本理念を踏まえた、前の「教育基本法」の理念が残されていることは、注目すべきことであると述べられました。

 それとともに、「教育勅語」の精神を復活させようとする政治的な傾向には注意すべきであると指摘されました。

 なお、2018年から小学校で、また、2019年から中学校で始まった「道徳教育」の変更の課題、すなわち、2018年、2019年以降は「検定教科書」を使うように変わっており、それまでの担当教諭の裁量でなされた道徳教育とは異なってきている。

社会科の学習指導要領では記されている「天皇陛下を敬う」が、今後、道徳教育での22の徳目に23番目の徳目として加わってくる可能性もある。

 日本の伝統の再興においては、伊吹文明元衆議院議長(元文部科学大臣)は、日本の伝統というときには、1000年単位での武士道、農民道、商人道(近江商人の精神など)を言われていた。このような見解とは異なる近代の国家神道、天皇中心の国体、教育勅語の復活などを意味する「日本の伝統」への回帰には注意していくべきである。

 南原繁の「人間があっての国家がある」の理解は、とても大切である。

と語られ、ときに出席者の笑いを誘う中での熱意溢れる一時間余りの講演となりました。

ーーー

・写真:パネルディスカッション

パネル・デスカッション: 栩木憲一郎氏・西田彰一氏・高橋勇一氏・森 和博氏

ーーーーーー

第17回『南原繁研究会シンポジウム』
「日本国憲法と戦後教育改革の過去・現在・未来」
(1) 日時 2020年11月3日(火)1:00―4:50
(2) 会場 学士会館210号室
(3) テーマ 日本国憲法と戦後教育改革の過去・現在・未来
(4) 基調講演者 前川喜平様
 (現代教育行政研究会代表・元文部科学省事務次官)
    パネル・デスカッション  栩木憲一郎様
                西田彰一様
                高橋勇一様
                森 和博様
(5) 会費 1,000円 (学士会館)   無料(ズーム参加)
・開会挨拶:樋野興夫(南原繁研究会代表)
・閉会挨拶:加藤 節(南原繁研究会顧問)
場所:学士会館 210号室(東京都千代田区神田錦町 3-28)
主宰:南原繁研究会(代表:樋野興夫  順天堂大学名誉教授)
後援:岩波書店、学士会、東京大学出版会、公共哲学ネットワーク

ーーーーーーーー

・SALTY取材班:井草晋一(記)
(南原繁研究会 会員)