日本人キリスト者のできるイスラエル支援① ~明石清正~

 

明石清正
SALTY論説委員
カルバリーチャペル・ロゴス東京 牧師
ロゴス・ミニストリー 代表

 

 5月28日から6月4日にかけて、参議院議員であり、キリスト教の牧師でもある金子道仁氏のイスラエル訪問に同行させていただきました。その中心的な目的は、「エルサレム祈祷朝餐会(Jerusalem Prayer Breakfast) 」と呼ばれるイベントに参加することです。そこは、イスラエルの国会議員や政府関係者と、世界中からの国会議員やキリスト教関係者が集まり、エルサレムの平和のために共に祈りを献げる、というものです。

 キリスト教の放送局による報道です。

 金子議員ご本人からも報告がありますので、下の動画二つをご覧ください。

イスラエルに行ってきました!イスラエル訪問報告①

国会で語った聖書のメッセージ イスラエル訪問報告②

根深いキリスト教会の反ユダヤ主義

 この祈祷会の意義を知るには、キリスト教会とユダヤ人の間にある、長い、わだかまりの歴史を辿る必要があります。主イエスが、弟子たちに対して、国々をご自分の弟子しなさいという命令に従って、キリスト教会は歴史を通じて、他の国々に対して宣教の働きをしてきました。しかし、その中で西欧のキリスト教会は、数々の過ちを犯しました。例えば、国が先住民を同化させるために、教会が、強制改宗や民族浄化を積極的に行ったなどです。


The Burning of the Jews, woodcut from the *Schedelsche Weltchronik*, 1493

 こうした、西欧のキリスト教の宣教について、世界の中で最も負の歴史を被ったのは、ユダヤ人と言えます。初代教会の時代から、ユダヤ人はキリストを殺した民であるとして、教会がイスラエルに置き換わり、彼らは呪われていて、神から捨てられているとする神学が生まれました。中世においては、職業の自由、財産の自由も剥奪され、時には国から追放されました。私たちキリスト者にとっての十字架は、御子さえ惜しまずに罪の犠牲となってくださった神の愛の現れでありますが、ユダヤ人にとっては、十字軍の掲げるものであり、自分たちを征服し、虐殺するという恐怖の対象なのです。

 続けて、スペインで起こった異端審問は、強制的な改宗が大体的に行われ、その余波は日本にも及びました。ポルトガル商人の中に、キリスト教徒と名乗っていた隠れユダヤ人もいたほどです。そのようにして、ユダヤ人としてのアイデンティティーを、根こそぎ、キリストの名で取り除こうとされました。そして、ルターが晩年に反ユダヤの本を書き記したドイツで、ホロコーストが起こったのは、決してナチスだけの責任ではなく、長年に渡って抱かれていた反ユダヤ感情の結実であると、ユダヤ人はみなしています。

聖書信仰から始まった親ユダヤ

 しかし、聖書信仰に立てば、ユダヤ人は、福音では敵対していても、父祖のゆえに神に愛されている(ロマ11:28)とあります。長年、キリスト教会はユダヤ人迫害の急先鋒であったと同時に、宗教改革以後、聖書信仰に立ち返った者たちの間で、ユダヤ人への愛と祈りを積み上げてきました。

サムエル・クーパーによるオリバー・クロムウェル

 英国においてユダヤ人を追放したのは、キリスト教徒の王国エドワード一世でしたが、再入国を実現したのは、同じくキリスト教徒、しかし清教徒であるクロムウェル護国卿です。神学的に、ピューリタンたちは、ユダヤ人の回復を信じて行き、敬虔主義運動が始まってからは、イスラエルの回復のために祈り始め、そして欧米列強の中東進出の時期に、世界宣教の幻も与えられ、聖公会が、当時オスマン・トルコ統治下のエルサレムに、中東で初めて教会を建てました。そうして、次第に、信仰の中だけのイスラエル回復が、政治の世界にも波及して、ついに第一次世界大戦がおわる時に、バルフォア宣言というユダヤ民族郷土を認める書簡によって、国際的にユダヤ人の国が認知されたのです。そして、1948年5月14日に独立宣言をもってイスラエルが建国されました。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、「キリスト者ほど、イスラエルの味方はいない。彼らがいなければ、イスラエルという国ができなかった。」という旨を、はっきりと述べています。(動画)イスラエル人の中には、長年に渡るキリスト教に対する不信があると同時に、イスラエル国外でイスラエルを支援する人々はキリスト者、特に福音的な、聖書信仰を持つキリスト者であることも知っている人が増えています。

 下は、去年のエルサレム祈祷朝餐会に、ネタニヤフ首相が参加した時の、ご本人によるツイートです。

 以上、イスラエルの中に、複雑な感情を持ちながらも、積極的に福音派のキリスト者たちに歩み寄っている人々が現れています。

 もちろん、すべてのイスラエル人やユダヤ人が、福音派の人たちに好感を抱いているわけではありません。今、宗教右派の一部が、キリスト教会の施設を破壊したり、キリスト者に嫌がらせをしており、福音派やメシアニック・ジュー(ユダヤ人のキリスト者)の集会を妨害したりします。しかし、歩み寄っているイスラエル人は、そのような動きを非難しています。ユダヤ人とキリスト者の関係は複雑であり、彼らの不信は根深いですが、しかし、少しずつ、和解は着実に進展していると言えるでしょう。

続き「日本人キリスト者のできるイスラエル支援②