日本人キリスト者のできるイスラエル支援② ~明石清正~

 

明石清正
SALTY論説委員
カルバリーチャペル・ロゴス東京 牧師
ロゴス・ミニストリー 代表

日本人キリスト者のできるイスラエル支援①」の続きです。

福音的信仰のもたらした中東和平

 米国では、福音派の信仰を持ちながら政治の中心にいる人々が数多くいます。トランプ前政権には、側近たちは、ペンス副大統領、ポンペオ国務長官を始めとする、福音的信仰を持つ人々に囲まれていました。聖書信仰を持つ人々が、中東の平和に政治的にも関与しているのが、今の情勢です。2020年に結ばれた、敵性国家同士であった、イスラエルとアラブ諸国が和解した、歴史的な合意は「アブラハム合意」と呼ばれています。信仰に深く関わる合意であることは、その名から容易に分かるでしょう。ユダヤ教とキリスト教とイスラム教の共通の父祖であるアブラハムの名によって、現実的な政治が進展しています。

トランプ米大統領、UAE シェイク・アブダッラー・ビン・ザーイド外務大臣、バーレーンのアブドゥル・ラティーフ・アル・ザヤーニ外務大臣、イスラエルのベベニヤミン・ネタニヤフ首相が、ホワイトハウスのトルーマンバルコニーから手を振る(AFP)

福音的信仰者の日本人国会議員

 しかし、日本においてはどうでしょうか?日本における最も大きな課題は、福音的信仰を持つキリスト者が、非常に少ないということです。イスラエル国内で、親イスラエルの日本のキリスト教団体と言えば、「幕屋」を挙げるイスラエル人が多いです。イスラエルに対して、幕屋の方々は実質的に最も大きな貢献を果たしています。しかし、福音派の日本の教会の存在は、ほとんど知られていません。

 けれども、日本の国会に、福音的信仰を持つ人が、選出されました。金子道仁議員(維新)です。彼が、エルサレム祈祷朝餐会から招待を受けました。そして、クネセット(イスラエル国会)にて、スピーチを頼まれました。その内容が、金子議員本人が動画「国会で語った聖書メッセージ イスラエル報告Ⅱ」で説明している、ルツ記における、異邦人信者とイスラエル人との平和です。モアブ人が、イスラエルの神への信仰を持ち、イスラエルの共同体の一部となり、ダビデの曽祖母となり、イエス・キリストの先祖ともなりました。そしてその和解と平和が、五旬節(シャブオト)にて、種なしパン(ユダヤ人)と、種ありパン(異邦人)を一つに献げるところで、表れています。

非西欧圏=反ユダヤ・フリー地域

 日本またアジアは、ユダヤ人を祝福するのに、大きな利点があります。それは、西欧キリスト教社会にある、根深い反ユダヤ感情とは無縁だということです。アジアを訪問するイスラエル人は、しばしば、「反ユダヤ・フリー」だとして、そうした緊張する空気から自由にされている世界に入ってくることで、ほっとしている感情を表します。イスラエルの友人は、日本に何度となく訪問していますが「日本に反ユダヤ主義は感じるか?」と聞くと、即座に首を振ります。中国人にも、反ユダヤを感じないと言っていました。これは大きな利点なのです。

 それが大きく現れたのが、日本陸軍の対ユダヤ人の方針でした。日本国は、ナチス・ドイツと提携を結びました。しかし、ユダヤ人に対する人種差別政策には、加担しませんでした。河豚計画と呼ばれる、ユダヤ難民を満州国に招き入れ、ユダヤ人を多数受け入れた国家を建設する計画まで画策していたのです。この計画は実行されなかったものの、日本統治下の中国は戦争終結までユダヤ人の避難場所となりました。

 樋口季一郎中将に至っては、ナチスの反ユダヤ政策に対する厳しい批判を公言し、オトポール事件と呼ばれますが、ユダヤ難民を、満州鉄道によって避難させました。上海ゲットーには、多くのユダヤ人が生活し、環境は劣悪でしたが、戦後、他のゲットーや強制収容所で起こったことを知って、自分たちがどれほど恵まれているかを知るに至りました。

イスラエルと福音派信者の議員との連携

 金子議員が「イスラエル訪問報告①」で説明していますが、私たちはクネセットで、日イ友好議連のメンバーの何人かお会いしました。しかし、彼らは同時に、「クネセット・キリスト者議員同盟(Knesset Christian Allies Caucus)」と呼ばれる、クネセット最大のコーカスにも所属しています。コーカスは、世界で孤立しやすいイスラエルが生き残るために、世界のキリスト者の議員と共に、それぞれの国で政策のために働きかけることです。

 議員たちをつなぐ働きをしている、ジョッシュ・レイステイン(Josh Reinstein)氏は、主に三つの政策を具体的に取り上げていましたが、その一つが、BDS運動に対抗するということです。BDSとは、「ボイコット(Boycott)、投資撤収(Divestment)、制裁(Sanctions)」の頭文字を取ったものです。イスラエルの非合法化を、実質目指しているもので、イスラエル国はこれを、新たな反ユダヤ主義の動きとして強い警戒をしています。

 日本にも、実際に存在します。けれども、金子氏は私に、「BDSって何ですか?」と、私に、個人的に尋ねて来られました。おそらく、読者の大半も同じ反応ではなかったでしょうか?これは良いことで、日本では、ほとんど耳にすることのないほど、影響力の小さい運動です。欧米諸国では、「パレスチナの人権」という美辞麗句を隠れ蓑にして、新しい形態での反ユダヤ主義を推進しています。しかし、日本では、そうした根深い、ユダヤ人に対する悪意が想像の域を超えているので、盛り上がりに欠けるのです。

 このように、キリスト教の負の歴史が、根深く残っている欧米から離れたところに生きている私たちが、純粋に聖書信仰を通して、選びの民であるイスラエルのために祈り、具体的に行動する恵みがあることを、ぜひ知っていただければと思います。