日本宣教と放送伝道_ティモシー・セランダー

 

 

 

ティモシー・E・セランダー

太平洋放送協会(PBA)常務理事

日本宣教と放送伝道

主の御名においてご挨拶申し上げます。

TEAMの宣教師、ティモシー・セランダーです。太平洋放送協会(PBA)にリクルートされ、1981年に来日しました。

日本宣教。これは私が執筆を依頼されたテーマです。 何を書けばいいのか、長い間苦労しました。 今、書き始めた記事の冒頭ですが、結末がどうなるのか、そしてこの文章がその結末に到達するためにどのような道をたどるのか、まだわかりません!

日本の人々と文化を愛するようになった私

特別な資格はありません。 学者でも、戦略的思想家でもありません。 私は日本宣教で 40 年以上働いてきましたが、それは放送伝道という狭い分野にすぎませんでした。 そしてそこでも、私の仕事のほとんどは、機械、カメラ、マイク、ケーブルといった最も重要でない部分に関するものでした。

私の唯一の資格は、日本の人々と文化を愛するようになったということのようです。 そして、イエスが「わたしを通してでなければ、だれも父のみもとに行くことはできません。」と言われたことを信じています。 イエスを通して御父のもとに来た日本人が非常に少ないのは痛ましいことです。そのため私は、日本宣教に非常に興味があり、また日本の教会にも大きな敬意を払っています。

なぜ日本にはクリスチャンがこんなに少ないのでしょうか? 長年にわたり、私は日本人牧師と外国人宣教師の両方から多くの理論を聞いてきました。 2023 年 4月の「SALTY神戸宣教会議」では、非常に興味深く説得力のある理由をさらにいくつか聞きました。 結局のところ、なぜもっと多くの日本人が神に従おうとしないのかは「心の秘密を知っておられる」神だけが知っているのでしょう。

2023 年 4月「SALTY神戸宣教会議」

「ライフ・ライン」テレビ番組の制作に携わる中で

私の「日本宣教」の働きのほとんどは、1989 年に始まった「ライフ・ライン」テレビ番組の制作に携わることでした。「ライフ・ライン」のカメラマンとして、日本人クリスチャンへのインタビューを記録するために、日本中を旅する機会に恵まれました。 私は千人以上の人が自分たちの信仰について、そして、なぜ日本人であるにもかかわらずイエスに従うことを選んだのかについて証言するのを聞いてきたと思います。これは何という素晴らしい特権でしょうか?

通常、初めて誰かに会うときには、たわいのない事について雑談します。しかし私たちの場合は、初対面の人とあっという間に一緒に祈り、人生の苦労、御言葉の中にある力と慰め、人生の流れを変えてくれたイエスとの出会いについて語り合います。そして、毎週「ライフ・ライン」を視聴している約100万人の人々とその話を分かち合うことができるのです。なんと恵まれたキャリアでしょう。

証し 1

証しは比較的シンプルなこともあります。

ある男の人が教会の前を通りかかると、看板にこう書かれていました。「すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。イエス・キリスト」。「こんな大胆な主張ができる人がいるだろうか?このキリストについてもっと調べなければならない。」と思ったそうです。彼はさらに調べ、信じたとのことです。

証し 2

信仰と救いを見いだすまでには、長く厳しい年月がかかることがあります。

ある女性には虐待的な夫がいました。 彼の虐待は時間が経つにつれてますますひどくなりました。 夜眠れるように夫から隠れる場所を見つけなければなりませんでした。別の部屋のベッドの下に寝たこともありました。夫は愛人を家に連れて来て、妻に愛人のために料理と洗濯をさせました。 彼女は何年も大きな恐怖の中で暮らしていました。 ある日、これ以上耐えられなくなり、子供たちを連れて逃げました。 住む場所を見つけましたが、夫に見つかるのを恐れて雨戸やカーテンを開けませんでした。

カメラを設置し、眩しいライトを点けると、たいていの人は緊張し、制作スタッフが家に『侵入』していることを強く意識します。しかし、この方は大きなソファにじっと小さく座り、照明や機材に気づかない。顔を見ると、はるか彼方の別世界に迷い込んでしまったことがわかる。彼女は静かに悲しみの物語を語りながら、自分の悲惨な人生を追体験していました。

話を続ける中で、彼女は自分の奇妙な行動に気づいた牧師のことを語りました。やがてその牧師は、彼女のために死んでくださったほど彼女を愛しておられる神と出会う手助けをしてくれたのでした。

証し 3

またある時、地元で成功した実業家の息子のお証を撮影しました。 

どうやらこの息子は、欲しいものはほとんど何でも手に入れて育ったようです。 大人になっても、彼は高級ワインが大好きでした。 そのため彼はお金を使いすぎて、飲酒が彼の人生を支配しました。 この息子は、父親が病気になって亡くなったとき、ヨーロッパに滞在中で酒を飲んで過ごしていたため、そばにいませんでした。 彼が日本に帰国したとき、飲酒をとても心配していた幼なじみが彼に聖書を見せました。「また、ぶどう酒に酔ってはいけません。そこには放蕩があるからです。」と書いてありました。彼は、「間違いない。これが真実だ 」と気づかされたのです。そしてその気づきこそが、彼のイエスへの信仰への旅の始まりでした。

これらのインタビューはすべて、「太平洋放送協会」と呼ばれる宣教団体ではなく、日本の教会によって企画・録画され、テレビで放送されました。 そして、テレビだけでなく、日本の教会が ラジオ番組「世の光」も制作し放送していました。

日本全国の教会による「ライフ・ライン」と「世の光」の支援・協力会

日本全国の約2,000の地方教会が「ささえる会」と「協力会」という協会を結成しています。 放送を利用して地域社会に福音を宣べ伝えたいと考えているこれらの教会は、教派の枠を超えて協力しています。 日本の教会は、放送料と制作費に必要な資金を集め、リスナーや視聴者からの質問に答えるために地元の牧師を任命しています。

PBAはプログラムを作成していますが、福音が広く宣べ伝えられるように費用を払っているのは日本の教会です。 日本の人口の80~90%は、日本の教会が テレビ「ライフ・ライン」、ラジオ「世界の光」を放送している地域に住んでいます。 一部の地域では、ラジオとテレビの両方を放送しています。

アメリカの地元教会が、他の教会の成長を助けるために資金を出し合って、地域社会を一緒に宣教するための長期プロジェクトに協力することを決めた、という話は聞いたことがありません。 日本の教会はすごいです。

しかし、放送は教会が伝道のために使用するツールの1つにすぎません。 聞いてきましたすべてのお証しを思い返すと、他の伝道方法のヒントがあるかもしれません。 すべての人は神とのユニークな旅をしていますが、「ライフ・ライン」で人々にインタビューするときに繰り返し出てくるテーマが3つあります。それは、「三浦綾子」、「大草原の小さな家」、「居場所」です。

3つのテーマ:「三浦綾子」、「大草原の小さな家」、「居場所」

日本のクリスチャンが「三浦綾子の本で初めてキリスト教に興味を持った」という話を何度も聞いてきました。 または、「 『大草原の小さな家』を見て、彼らのような家族が欲しかったのです。食事のときに祈ってくれる家族です。」 そして「友人に連れられて教会に行きました。牧師の話はとても難しかくて何を言っているのかさっぱり分かりませんでした。でも教会の人たちは温かくて、私が教会にいることを喜んでくれました。居場所がありました。」と多くの人がインタビュー中に言って下さいました。

ここに、日本の伝道に携わる人のためのヒントがあると思います。 

三浦綾子の文章が与えた影響については、ほとんど説明する必要はありません。 これを読んでいる人は、おそらく私よりもはるかに多くの洞察を持っているでしょう。しかし、三浦さんの本を読むことで、信仰、倫理、そして人生の意味についての問いに心を開かれたというお声をたくさん聞いてきました。
したがって、「三浦綾子読書会」 ( https://miura-ayako.com ) はおそらく伝道のための素晴らしいツールになると思います。

三浦綾子の文章は、こうしたことを深く考える人たちに訴えかけるものですが、それ以上に、テレビ番組『大草原の小さな家』で見た温かい感情や幸せな家庭生活に感情移入する人たちも多いです。彼らはこの家族の愛や、夕食時に祈りを捧げることに憧れていました。

家族に対する困難は、あらゆる文化に見られる人間の現状でもあります。この番組は家庭生活が困難な人々の心に届いたのではないでしょうか。そのような困難には福音が癒しをもたらすのです。

引きこもり、不登校の問題が大きくなるにつれ、私たちは皆、安全な場所、自分らしくいられる場所を求める人間の欲求に気づいてきました。居場所です。そして、人々のお証を聞きながら、教会で「居場所」を見つけたという声を何度も聞いたことをとても嬉しく思います。初めて教会に行った理由はさまざまですが、教会にいることについては、みんな同じようなことを言いました。 「牧師の話は何も理解できませんでした。でも、みんな私に温かく接してくれました。」「私が来たことを喜んでくれました。」「歓迎されました。 居場所がありました。」 日本の教会が「互いに愛し合いなさい」というイエスの命令を果たしており、見知らぬ人に対しても教会に歓迎の場があることは、日本の教会にとっての素晴らしい証拠です。

この文章を読んでくださった皆様、私自身がが歩んできた道をご一緒にたどってくださってありがとうございます。同じ日本宣教と関わりがあるお一人として、あなたに神様の平和と祝福が豊かにありますように。

 

(執筆: 2023年 7月)

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<参考動画>

『羽鳥明先生の働きと PBA(太平洋放送協会)』

日時:2017年9月25日
発題:PBA常務理事: ティモシー・セランダー 先生

このビデオは 『2017 JEA 宣教フォーラム@神戸』での収録です。