拉致被害者救出の絶好のチャンスを生かしたい(2)トランプ大統領が、拉致問題を米朝会談に出すと約束 -西岡力-


拉致被害者救出の絶好のチャンスを生かしたい(2)

トランプ大統領が、拉致問題を米朝会談に出すと約束

 

 

西岡力
日本キリスト者オピニオンサイト − SALTY − 主筆

 私は先日(4月8日)、本サイトに「拉致被害者救出の絶好のチャンスを生かしたい」と題する一文をアップした。4月17日、トランプ大統領が来たるべき米朝首脳会談で拉致問題を出すと語ったという。それについて書きたい。

前回私は、3月末、家族会・救う会が政府に日米首脳会談に関して次のような要請をしたと書いた。

 「安倍晋三首相は、4月に訪米してトランプ大統領と会談し、対北政策をすりあわせする予定だという。安倍首相には、5月の米朝会談において米国が単に拉致問題を議題にするだけでは不十分であり、全被害者の一括帰国を求めなければならないとトランプ大統領を説得してほしい。
日本政府はこれまで被害者の生存を示す多くの情報を集めてきているはずだ。その情報を活用して大統領に、13歳で拉致された少女を含む多くの無辜の民が北朝鮮で助けを待っていることを明示して説得してほしい」。

その観点から、日米首脳会談についての評価を書きたい。

 安倍晋三総理大臣が日本時間4月18日午前(現地時間4月17日)、米国フロリダ州のマーラ・ラゴにおいて、トランプ大統領との間で日米首脳会談を行った。最初にトランプ大統領と通訳のみを入れての単独会談、その後、少数の幹部が出席する会談を行った。その両者で拉致問題を含む北朝鮮問題が主要テーマとなった。少人数会談には米側からジョン・ボルトン新補佐官も出席した。前回書いたように、ボルトン補佐官は2003年、横田めぐみさん拉致について聞いて顔を真っ赤にして怒りを露わにした熱血漢だ。

 まだ、2回目の会談、ゴルフ会談などが残っている。現段階で公開されている発言からも、トランプ大統領の拉致問題への真剣な姿勢が分かる。

 まず、特筆すべきことは、トランプ大統領が「我々は拉致問題を提起するし,そのほかの問題も話すべきことはたくさんある。これはあなた方にとっても大きな問題だ。」と語り、金正恩との会談で拉致問題を取り上げると明言したことだ。
これはうれしいことだ。安倍総理が「米朝首脳会談において,拉致問題について日本が重視しているということをご理解いただき,取り上げていただけると言明していただいたことに対して御礼を申し上げたい。」とお礼している通りだ。

 トランプ政権成立以来、安倍総理らが行ってきた外交活動の成果である。私たち家族会・救う会は2000年の初めての訪米以来、20年近くかけて米国に対して拉致問題を訴えてきた。それが実りつつあるとも言える。ある意味感慨深い。
しかし、米朝首脳会談で拉致問題を取り上げるだけでは不十分だ。トランプ大統領が、めぐみさんらが生きており祖国に帰る日を切望しているという事実を心に刻み、金正恩に拉致被害者全員の一括帰国を迫るかどうかが勝負の分かれ目だ。そのため、継続して働きかけなければならない。4月30日から5月6日まで、家族会・救う会は拉致議連とともに訪米して、トランプ政権と米国要路、それから国連の関係国代表部への訴えを行う予定だ。私も参加する。

 二番目に注目されるのは、安倍総理が、金正恩が今年に入り対話攻勢に入ってきたことを、日米が主導した圧力の結果と見ていることだ。「日米が国際社会をリードして圧力を最大限に高めた結果、北朝鮮から話し合いを求めてきた。私たちのアプローチは成果を上げている。
特に、米国の軍事的圧力の効果を以下のように評価していた点が注目される。「(米朝首脳会談は)あらゆる選択肢がテーブルの上にあるという姿勢でもって圧力を最大限まで高めていく,米国は圧倒的な世界一の軍事力を持っているわけでありますが,それを背景に圧倒的なこのレベルの圧力をかけた成果だと思います」

 安倍総理は日朝首脳会談だけが予定にないのでバスに乗り遅れると焦っているという一部の見方は完全に的外れだ。総理は自分とトランプ大統領が進めてきた最大限の圧力をかけて北朝鮮の政策を変えさせるという戦略に自信を持っている。

 三つめの注目点は、トランプ大統領も安倍総理と同じ見方をしているということだ。大統領は総理と同じように、日米の主導した圧力が金正恩を対話に引き出したと見ている。やはり自信を持っており、次のように述べている。

北朝鮮は孤立している。

私と安倍総理のおかげで、先日の五輪が開催でき、また南北の対話が出来ると言うことは、我々のリーダーシップのおかげだと言っても過言ではない

 四つめに注目しなければならないのは、トランプ大統領が、今後、米朝首脳会談がうまくいかない可能性もあるという認識を持っており、その場合には、軍事行動を含む厳しい圧力をかけると明言したことだ。大統領は米朝首脳会談で金正恩が望ましい政策変化を約束すればよいが、それが「うまくいかない」可能性もあるとみており、その場合は「強い姿勢」つまり、軍事行動も含む強い圧力をかけると発言した。

「金正恩氏との会談があるかもしれないが、それは6月の初旬かその前かもしないが、うまくいくように願っている。もし、うまくいかなかったら、強い姿勢で臨みたい

「金正恩と会うことに期待している。それが成功することを願っているが、うまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれない。そのうち分かるだろう。うまくいかなければ違う手段を考えなければならない

 大統領が語っているように、金正恩が本当に核ミサイルを完全に廃棄することを決断するなら、すべての拉致被害者を返す決断をも行う可能性は高まる。核ミサイル問題で不十分な姿勢しか見せないなら、拉致でも従来からの姿勢を変えないだろう。その意味で、日米は圧力を最大限に高め続けて、金正恩が政策を変えるのを待つという現在の姿勢を変えてはならない。その点で、安倍・トランプ両首脳が意見の一致を見たことは、たいへん心強い。

 今後の展開を祈りつつ見つめていきたい。

 

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《資料》

4月17日 日米首脳会談での両首脳の冒頭発言抜粋

1 単独会談冒頭

(安倍)  日米が国際社会をリードして圧力を最大限に高めた結果、北朝鮮から話し合いを求めてきた。私たちのアプローチは成果を上げている。その中で、米朝首脳会談を決断したトランプ大統領の勇気に対して賞賛したい。[傍線は西岡、以下同]
北朝鮮の核・ミサイル問題、そして日本にとって大切な拉致問題について積極的に話し合いたい。

(トランプ) 北朝鮮は孤立している。または韓国と北朝鮮による南北首脳会談について話すことがあると思います。朝鮮半島における朝鮮戦争が終わることについて、私は強く望んでいます。今後とも願っている。
今回は、私と安倍総理のおかげで、先日の五輪が開催でき、また南北の対話が出来ると言うことは、我々のリーダーシップのおかげだと言っても過言ではないと思う。北朝鮮は五輪に参加することさえできた。この戦争を終結させられるように、今以上に見守りたいと思います。
米日関係は非常に強いもので、北朝鮮ついて、まったく意見は一致している。金正恩氏との会談があるかもしれないが、それは6月の初旬かその前かもしないが、うまくいくように願っている。もし、うまくいかなかったら、強い姿勢で臨みたいと考えています。

2 少人数会談の冒頭発言

(安倍総理) 北朝鮮の問題については、歴史上初めて米朝首脳会談が予定されています。その前には、南北首脳会談が行われるわけでありますが、平昌五輪から起こった大きな変化はまさにドナルドが確固たる信念と決意でこの問題に相対峙した結果だと思います。

あらゆる選択肢がテーブルの上にあるという姿勢でもって圧力を最大限まで高めていく,米国は圧倒的な世界一の軍事力を持っているわけでありますが,それを背景に圧倒的なこのレベルの圧力をかけた成果であり,まさにトランプ大統領が強い決意で臨んだ成果だと思います。あらためて敬意を表したいと思いますし,この史上初の米朝首脳会談を通して,核の問題,そしてミサイルの問題,さらには日本にとって重要な拉致問題が解決に向かって進んでいく歴史的な会談となることを期待しています。そして,そのために,この場において,真剣なそして徹底的な話し合いをしたいと思います。

(トランプ大統領) 北朝鮮の問題は長い間大きな問題だった。何十年も前に解決されておくべきだった。しかし今,解決しなければ私が解決せざるを得ない状態だ。どう解決するかは,対話なのか,違う方法なのか,まだ今のところ,その方向性は分からないが,いずれにしても,金正恩と会うことに期待している。それが成功することを願っているが,うまくいくかもしれないし,うまくいかないかもしれない。そのうち分かるだろう。うまくいかなければ違う手段を考えなければならないということだ。彼らは私たちに敬意を払っているし,我々も北朝鮮に敬意を示しているが,いずれにしても,我々は拉致問題を提起するし,そのほかの問題も話すべきことはたくさんある。これはあなた方にとっても大きな問題だ

(安倍総理)米朝首脳会談において,拉致問題について日本が重視しているということをご理解いただき,取り上げていただけると言明していただいたことに対して御礼を申し上げたい。