*写真:「ゴルゴダの道」_宮地聴 作_1985・日展入選作品
バイブル・ソムリエ:亀井俊博
「西宮北口聖書集会」牧師
「芦屋福音教会」名誉牧師
「中国キリスト教の躍進に学ぶ」(第3回)
<第3回(最終回)>
・3回の連載で掲載いたしました。(SALTY編集部)
<第2回>より <—– クリック!
「中国キリスト教の躍進に学ぶ」
(C)中国キリスト教躍進の要因分析と日本キリスト教の学ぶべき点
中国宣教は、世界の教会の悲願でしたが、無神論共産主義に阻まれ、宣教の門は閉じられていました。多くの欧米のチャイナ・ミッションは中国から撤退させられたのです。しかしその閉鎖状況の中に、教会は大きく成長していたのです。まさに神の恵みであり、人間的には奇跡と言うほかありません。同時に、人間的視点からその発展の要因を探る事も、無意味ではないでしょう。以下わたしの要因分析を述べます。
要因①
まずミッションが残した中国人信徒は、決して“ライス・クリスチャン”ではなかった。主イエスへの信仰を抱き続けていたのです。一粒の種がまかれたなら、多くの実を結ぶと言う、主の約束の真実さです。またそれを信じ続けた信徒の誠実さが称賛されます。省みて今日の日本キリスト信徒にそのような一途さがあるか大いに疑問です。教養キリスト教、ご利益キリスト教の段階に留まっているなら、苦難の中に主と共に歩んだ中国信徒の信仰姿勢に襟を糺すべきだと思います。
要因②
また政府が中国への外国勢力の干渉を嫌い(それは近代中国史の西欧列強による植民地争奪の草刈り場にされた苦い経験によるもので、日本もその責めの多くを負います)。キリスト教会にも自治、自養、自伝の三自愛国を求められたことです。結果、外国ミッション依存を止め、中国教会の自立を促しました。省みて日本の教会は、いまだに膨大なミッションの経済的遺産の上に胡坐(あぐら)をかいて、遺産を食いつぶしていると言う面があります。欧米ミッションが引き上げれば次は韓国教会に寄生しよう、更に盛んになった中国教会に乗り換えようと言う、情けない依存体質を改めない限り発展はないと思います。
要因③
中国の教会は、教会堂中心より、家の教会がベースにあると言う事です。教職中心でなく信徒活動中心だと言う事です。神様との個人的交わりと、信徒相互の交わりが密で、その相互扶助・伝道が篤い、一言で言うと信徒の主イエスの弟子化が進んでいる。また都市部の教会は知的な富裕層も多く、財政的にも豊かで、政府は教会の財力に警戒を抱くほどですが、そこから様々な慈善や寄付活動も生まれているのです。
省みて日本のキリスト教は、教育、福祉、医療事業は社会的に高く評価されています。しかし、教会は停滞、弱体化しています。確かに教育・文化・福祉事業は重要です。よき社会的証になっています。しかしそれを生み出し、絶えず活性化する霊的信仰の養いが教会でなされなければ、やがて時代を経てキリスト教事業は形骸化します。また何より、普通の生活をしている大多数の市民生活の中に福音が浸透しなければなりません。プロテスタント宣教150年の失敗です。これを率直に認め、再建を図るべきです。
それには聖書が説き、ボンフェッファーの強調した、信徒の弟子化が必須です。聞くところによると、日本宣教への重荷を抱く中華系キリスト者が増加しているとの事。これからは、東アジアのキリスト教の盛んな中国・韓国・台湾と停滞する日本のキリスト者の交流、宣教協力の時代が到来すると思います。まさに謙虚に中国の信徒、教会から学ぶ時が来ています。
さもなくばキリスト教を無視する日本社会は、米中対立に際しどちらに就くか、等と踏み絵論を嘆いているうちに、いつの間にかキリスト教によって結びついた米中両国に相手にされなくなる可能性があるのです。わたしは日本の現状と将来がキリスト教への態度にある事を強調し、結びとしたいと思います。
この貧しいエッセイへの中国キリスト教研究者の資料提供に感謝しつつ。
「神の国は、一粒のからし種のようなものである。地にまかれる時には、地上のどんな種よりも小さいが、まかれると、成長してどんな野菜よりも大きくなり、大きな枝を張り、その陰に空の鳥が宿るほどになる」(マルコの福音書 4章30~32節)
(資料)
- 「中国における国際教会の拡大」(村上志保、立命館国際地域研究、第47、2018-3)
- 「中国共産党政権による宗教政策の変化と現在―プロテスタント教会をめぐる事例を中心に」(村上志保、同上)
- 「中国キリスト教の研究状況と課題」(中生勝美、「法、政治、社会学」第1号、2019年度)
- 「改革開放以降における中国大陸と新華僑の宗教」(李歳寒、東京大学宗教学年報、39巻、2020)
く第3回 (最終回)終了>
*写真:「ゴルゴダの道」_宮地聴 作_1985・日展入選作品
●<第1回へ(戻る)>
・執筆:2021・2・18
ーーーーーーーーーーーーーー
亀井俊博(かめい としひろ)
1942年香川県に生まれる
単立「西宮北口聖書集会」牧師、「芦屋福音教会」名誉牧師
同志社大学法学部法律学科卒、日本UPC聖書学院卒
(同志社大学神学部、神戸改革派神学校、神戸ルーテル神学校聴講)
元「私立報徳学園」教師、元モンテッソーリ幼児教室「芦屋こどもの家」園長
元「近畿福音放送伝道協力会」副実行委員長、
*<亀井俊博牧師のブログ>
「西宮ブログ」の『バイブルソムリエ』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
● 亀井俊博牧師の著書(電子書籍)を以下にご紹介します。
・「電子書籍」制作・出版 ”Piyo ePub Communications”
☆ Amazon Kindle ストア(亀井俊博 著)
「アルファ新書シリーズ」全7冊 <電子書籍版・POD版>
https://amzn.to/2FrzSsA
(4)「モダニテイー(下巻):近代民主主義、近代資本主義とキリスト教」講話
● 『人生の味わいフルコース』
内容:お料理の味付け、甘辛酸苦旨の五味を人生論風にバイブルから説き明かしたキリスト教入門書。
● 『1デナリと5タラントの物語』
内容:亀井俊博牧師による、わかりやすく、また、心を癒す聖書のメッセージです。現代社会の課題の一つ、「二極格差」の只中に生きる私たちに、慰めと希望、生きる力を与える、「必読の一冊」!
●「電子書籍」5社より販売中
「亀井俊博」で検索ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー