西岡力
日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY- 主筆
麗澤大学特任教授
国基研企画委員兼研究員
慰安婦の真実めぐる戦いは続く
ソウルで開催 学術シンポジウム
慰安婦問題の真実を巡る激しい闘いが続いている。9月5日、ソウルで日韓の学者らが集まって学術シンポジウムを開いた。実証的研究をもとに「慰安婦は軍が管理した公娼(こうしょう)であって、強制連行された性奴隷ではない」との立場でシンポが韓国で開かれるのは史上初だった。私を含む日韓の参加者は「慰安婦のウソと戦う日韓真実勢力共同声明」を採択し、次のように主張した(一部略)。
<なぜ、慰安婦は公娼ではなく、日本軍に強制連行され、性的奉仕を強要された性奴隷だという、噓が拡散し、日韓関係を悪化させてきたのか。その元凶は、強制連行、性奴隷説を広めていった日本と韓国の噓つき勢力だ。日本の朝日新聞が、職業的噓つきである吉田清治の「強制連行」証言を繰り返し大きく報道した。
日本人活動家が韓国で元慰安婦らを探し、日本政府を訴える裁判を起こした。挺対協と遺族会という韓国の2大反日団体が日本発のこの噓を韓国で大々的に広めた。それを韓国の新聞、テレビが第2の独立運動であるかのように大きく報じた。日本では30年間、戦いを続け、朝日が吉田証言を噓だと認めて過去の記事を取り消すところまでいたった。
私たちは宣言する。日韓の真実勢力が力を合わせて日本、韓国、北朝鮮の噓つき勢力の陰謀と工作を暴露し、彼ら、彼女らの責任を追及する。韓国と全世界に立てられた噓の象徴である慰安婦像を必ず撤去させる>
最高裁は「学問的表現の自由を実質的に保障するためには、学問研究結果の発表に使用された表現の適切性は、刑事法廷で識別するより自由な公開討論や学会内部の同僚の評価過程を通じて検証されることが望ましい」として、学問的表現に対する名誉毀損罪の適用に慎重さを求めた。
一方、韓国の慶熙大学哲学科の崔晶植教授が講義で「日本軍慰安婦の多数は生計のために自発的に慰安婦になった」などと話したことで非難の的になっている。
9月10日、慶熙大学哲学科の同窓会は、崔教授の解任を求める声明文を公開した。9月21日、韓国の市民団体である庶民民生対策委員会は、崔教授を虚偽事実による名誉毀損容疑で刑事告発した。
大学教授が講義で慰安婦に触れて非難を受け、刑事告発されるのは初めてではない。本欄でも紹介した延世大学の柳錫春教授は2020年10月、検察に名誉毀損罪で在宅起訴され、現在もソウル地裁で刑事裁判が続いている。
同裁判では今年3月に判事が朴裕河教授への最高裁判決が出ていないことと、検察が強制連行の証拠を出していないことを理由に裁判の事実上の中断を宣言した。朴教授の最高裁判決が柳教授裁判にどのような影響を及ぼすのかはまだわからない。韓国では今も真実勢力が厳しい戦いを続けている。
その論議で欠けている大切な事実がある。杉田氏はそのとき国連に何をしに行ったのかということだ。日韓の噓つき勢力は1992年から国連に足繁(しげ)く通い、慰安婦は強制連行された性奴隷だという噓を広めてきた。それに対し民間人の立場で国連で反論を試みたのが杉田氏と山本優美子なでしこアクション代表らだった。
2人は2015年に女性差別撤廃委員会の委員らの前で、慰安婦強制連行説は根拠がないとスピーチした。同委員会は各国の識者らが委員となって、加盟国に対し条約を順守しているか審査を行う。委員らはそれまで国連にやってきた日韓の活動家らからそのような話は聞いたことがないとして、日本政府に強制連行の有無について質問した。
16年に日本政府は強制連行と性奴隷を明確に否定し、朝日新聞が吉田清治氏の虚偽証言を報じたことにより、そのような噓が広まったと明確に回答した。当時、外務省職員だった松川るい参院議員らがその回答文作成にあたった。
産経新聞 2023/11/21 「正論」より転載