11月29日 産経新聞に掲載された韓国最高裁の三菱重工への不当判決に対する談話
西岡 力
・モラロジー研究所教授、麗澤大学客員教授
日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY- 主筆
日本は戦時労働の実態を広報するための備えをせよ
先人たちが知恵を絞ってつくった日韓の国交正常化の枠組みを、根底から覆す判決が再び出た。今回の判決も「日本の植民地支配は不法だった」と論理がみられるが、日本は1910(明治43)年の日韓併合条約や併合の時期は合法だったとの立場で一貫してきた。韓国はその日本から1965(昭和40)年の日韓請求権協定で当時の国家予算に匹敵する3億ドルを受け取った。後になって日本の立場はけしからんから日本の民間企業に賠償させるというのは、これまでの日韓関係をあまりにも無視した判決で、到底容認できるものではない。
65年の協定で日本側は、韓国に置いてきた財産や、韓国が52年(昭和27)に一方的に李承晩ラインを設定したために、拿捕(だほ)され亡くなった日本漁民らをめぐる請求権もすべて放棄した。韓国はそれらを再び取り上げ、国交正常化交渉をやり直すというのだろうか。それが韓国の国益にかなうのか、韓国政府には冷静に考えてほしい。
日本政府がやるべきは、日本企業の財産権を守ることだ。請求権問題は65年の協定ですべて解決しているのだから、日本企業の財産が侵害されないよう、韓国政府に強く申し入れる必要がある。
心配なのは、敗訴した日本企業の財産の差し押さえに向けた訴訟が、米国で提起される可能性があることだ。国際社会に誤解が広がらないよう、「徴用」が反人道的な不法行為でなく、合法的な賃労働だったと、強くアピールしなくてはならない。政府は、歴史認識問題について調査研究する財団を創設するなど、国際広報の態勢を早急に整備すべきだ。
一部に日本企業が資金を出して基金をつくる案があるようだが、類似の取り組みはこれまでも失敗してきた。絶対に乗ってはいけない。(談)