【 書評 】桜林美佐著『危機迫る日本の防衛産業』-中川晴久-

 

 

 

中川晴久
東京キリスト教神学研究所幹事
日本基督神学院院長
SALTY-論説委員



防衛問題研究家である桜林美佐さんの著書『危機迫る日本の防衛産業』が出版されました。桜林さんは防衛問題について長年地道な取材を続けられ、「チャンネルくらら」では毎週土曜日『桜林美佐の国防ニュース最前線』にて日本の安全保障の重要な情報提供をしてくださっています。

 昨今の北朝鮮や中国、ロシアなどの近隣諸国おける軍事的脅威が高まるなかで、安全保障の問題は早急に議論されていかねばならない問題です。
 しかし、ほとんどの人は突っ込んだ内容になるとよく分からなくなっているのではないでしょうか。というのも、私自身ある程度の知識を得えようと、この分野での本を読み漁ったことがありました。ところが一向に理解が進みませんでした。
 複雑に入り組んでいる問題であればあるほど、そこに単純な解決を求めたくなる心理がはたらくものです。しかし『危機迫る日本の防衛産業』を読むと、問題解決のためにまず必要なことは、安易な解決策を一つ選ぶことではなく、その問題を含めた視野全体の解像度を高めることなのだということが分かります。

 その時、桜林氏のように地道な取材を重ね総合的に日本の防衛問題を語かたり、私たちに分かりやすく伝えてくださる存在はありがたいです。

 私が『危機迫る日本の防衛産業』から特に教えられたことは、日本の「防衛産業」への配慮や連携なしに語られる議論は安全保障全体の方向性をゆがませてしまうのだということです。桜林氏は、まさに「防衛産業」を「第四の自衛隊」(陸海空&内局+防衛産業と考えると「第五の自衛隊」)と明確に位置づけ、日本の安全保障が抱える問題を「いかなる問題であるか」として語ってくださっています。何が問題でありなぜ解決が難しいのか。どのような問題がいかにして存在しているか。それが実に分かりやすく書かれているのです。

 桜林美佐氏の著書『危機迫る日本の防衛産業』は、日本の防衛問題全体の解像度を高める上で、最上のテキストといえるはずです。