カルト脱会者からこそ学べ ~統一教会問題~ (1) ー中川晴久ー

 

 

 

中川晴久
東京キリスト教神学研究所幹事
日本基督神学院院長
SALTY-論説委員

 

私が統一協会の恐ろしい実態を知る切っ掛けは、私が27歳の時です。
開拓を手伝っている教会に、母とその娘の親子2人が訪ねてきました。教会の近所に2人で暮らしていました。娘さんは当時23歳。牧師が言うには、その娘さんが「統一協会」というキリスト教の異端に通っていることで母親と喧嘩をするようになり、近所のキリスト教会に通うことで話がつき、私たちの教会にやって来たというのです。その後、娘の方は週に何度か牧師と聖書の話をするようになり、母親ともども私含めてすっかり安心していました。
ところが、三ヶ月ほどして突然、娘さんは家出をし合同結婚式のために韓国へと行ってしまったのでした。
夜中に窓から裸足で家を抜け出したのです。後ほど彼女から入った連絡では、その理由というのが私の教会の人たちから拉致監禁される危険を察知したからなのだというのです。
何で私たちが拉致監禁なんてしなければならないのか?一体、何の話しているのか?目の前では、一人残された母親の泣き崩れる姿がありました。この統一協会という団体がどれほどトンデモナイ犯罪集団であったかを私が知ることになったのは、それが始まりでした。

※フロント画像は、この娘さんが置いていったピアノで母親から私の教会に寄贈されたものです。現在、礼拝にて使用されています。

< 「家庭」を壊す統一協会 >

 家庭とは、それが夫婦関係であれ、親子関係であれ、そこには何らかの傷や痛みがあり、その関係にはひび割れだってあるでしょう。そもそも、それが家族というものです。家庭こそ最も身近な人間同士による生の営みなのですから。
 たとえば、よくドラマで見かける光景。娘からさんざん悪口を言われて普段は嫌われている父親でも、娘の結婚式では父への感謝の手紙を読まれて、あれだけ言われ放題であった父親が涙して喜んで娘の結婚を祝う。ドラマでなくとも結婚式では普通にある話です。子供のいない私には体験できないことだけれども、そこには尊い何かがあるというのはよく理解できます。
 霊の家族だといっているキリストの教会にだって、人間同士の集まりであれば傷や痛みはいくらでもあります。それでも何かしらで傷や痛みが覆われているわけで、そこには「愛」としかいえないものがあるわけです。
 私はよほどの事がないと人様のご家庭の内情には立ち入らないことにしています。家庭内の問題はその構成員でしか分からない複雑な感情や、難しい関係があり、外の人間にはまるで空気を読み取らねばならないほどの繊細さがあります。そこに他者が土足で入り込まない方がいいのです。神でしか入ってはならない領域に、人間の分際で入り込むのは良くないと考えるからです。牧師という立場上、どうしても家庭内事情が見えてしまうこともあったりするのですが、でもそれは見えなかったことにするか、どうしても立ち入らればならない場合も役割を終えたらすぐに離れます。そっと陰で祈りつつ、いろんな傷や痛みを抱えつているその家庭が、神の御手の中で守られることを願います。
 ところが、どの家庭も持っているそのような傷や痛みを見て、あえてそこに塩を塗り「痛い!」と叫ぶと、やさしく手を置いて「痛いのね!かわいそうに!」といって、さらに塩を塗ったらどうでしょう。私が統一協会に対して最も許せないのはそれです。
 余計なことですが、聖書の語る塩はそういうことに使うのではありません。
マタイによる福音書5:13(新改訳聖書)

あなたがたは、地の塩です。もし塩が塩けをなくしたら、何によって塩けをつけるのでしょう。もう何の役にも立たず、外に捨てられて、人々に踏みつけられるだけです。

 図のノートは統一協会の霊の親の役が、23歳の娘さんに愛について語っているノートです。

 

 


<聞いて呆れる「理想家庭」>

 パンクブーブーという漫才師のネタに、「ある結婚詐欺師がこんな良いことを言っていました!」と語る相方に対して「それ結婚詐欺師!」とツッコミを入れる漫才がありました。
では、詐欺師が「愛してる。」というのと、結婚を真近に控えた恋人が「愛してる。」というのではどう違うのでしょうか。「どう違うって、まるで違うに決まってるだろ!」とツッコミを入れるでしょう。しかし、事実、どちらも相手がそう信じるまで訴えてくるのです。さらに、詐欺師の方は人間的にも魅力的に情熱的に愛を語ってきます。まして、詐欺師だなどとは知らされていないのです。
 相手が何者であるか、どうやって判断するのでしょか。
 私たちの主イエス・キリストは次のように語っています。

 聖書が見事に見分け方を教えています。

マタイによる福音書7:15-20 (新改訳聖書)
15 にせ預言者たちに気をつけなさい。彼らは羊のなりをしてやって来るが、うちは貪欲な狼です。
16 あなたがたは、実によって彼らを見分けることができます。

ぶどうは、いばらからは取れないし、いちじくは、あざみから取れるわけがないでしょう。
17 同様に、良い木はみな良い実を結ぶが、悪い木は悪い実を結びます。
18 良い木が悪い実をならせることはできないし、また、悪い木が良い実をならせることもできません。
19 良い実を結ばない木は、みな切り倒されて、火に投げ込まれます。
20 こういうわけで、あなたがたは、実によって彼らを見分けることができるのです。

 キリストの福音が傷や痛みを治癒し関係を修復する方向であるならば、統一協会がやっていることは家庭の傷を広げ親子関係を破壊することです。そして自分たちの「理想家庭」とやらに組み込もうとします。
 しかし、何のことはない、教祖の文鮮明が自慢気に語っていた「理想家庭」は文鮮明の死後、崩壊も甚だしく、冗談にもならない状態となっています。

 後継となるかと思われていた文鮮明の息子である文顕進(3男、ブラジルで人を蹴っている動画)を文顕進の母である韓鶴子(教祖文鮮明の妻)と文亨進(7男、圧が凄い動画)が追い出し、すると今度は韓鶴子が文亨進を追い出してしまう。母と子が裁きあい敵対する無残な三つ巴の「崩壊家庭」の様相を見せています。
こういうわけで、あなたがたは、実によって彼らを見分けることができるのです。」(マタイ7:20)
 聖書は見事にこの統一協会の何たるかを教えてくれています。
つづく