【スクープ 統一教会問題】岸田総理は国民に「嘘(小西案)」を告げた ‐ 中川晴久 ‐

 

 

中川晴久
東京キリスト教神学研究所幹事
日本キリスト神学院院長
SALTY-論説委員

 

< 恐ろしいトーク >

今月13日に統一協会に対する解散請求がなされました。そこに至る最大のターニングポイントは昨年10月19日での岸田文雄総理の宗教法人法81条1項の宗教法人解散要件の解釈変更にあります。

前日18日衆議院の予算委員会では「法令違反は刑事事件に限る。」といい、刑事事件を起こしていない統一教会に対して解散請求ができないことことを示唆しました。ところが、翌日19日の参議院予算委員会では「民法の不法行為」も入りうるとし、統一協会の解散命令請求が「ありうると考えている」と語ったのでした。
質問に立っていた小西洋之議員(立憲民主党)は、「朝令暮改にも程がある。確認だが民法の不法行為責任について解散命令の請求ができるというのが政府見解でいいか」と問いただしたところ、岸田総理「ご指摘のように、政府としては改めて考え方を整理した」と述べたのでした。

しかし、恐ろしいことに、この一日の解釈変更について今年8月20日における「放送不可能。Ⅱ」上映後のトークイベントにて、小西洋之議員(立憲民主党)が、岸田総理に対して国民に「嘘」の説明する内容まで伝授したことを暴露していたのである。

< 一日にしての法解釈変更 >

こちらの動画をご覧ください。3:00からのところです。
「放送不可能。Ⅱ」上映後のトークイベント。#小西洋之 #鈴木エイト @K’sCinema 2023.08.22 – YouTube

去年10月14日に閣議決定で「解散請求できない」とされ10月18日にその見解を国会で述べているにも関わらず、岸田総理が19日に突然撤回したことに対して、小西洋之議員は以下のように鈴木エイト氏に語っています。

< 撤回するときの理由まで官邸に授けたんですね・・・実はあの10月18日の総理の国会答弁をひっくり返したのですけど、統一協会には「解散命令は適用できない」と政府で閣議決定(14日)してたんです。それをひっくり返せるのをどうするかというと、「『いままでは文化庁が信教の自由は大事だと一つの役所だけで考えていたのを、あらためて岸田政権全体、内閣法制局も法務省も呼んでみんなで議論したら、宗教法人法の解散命令に民法の不法行為も適用できるっていう風に考えを変えました。政府全体で議論した。』と言ったらいい」と。「そこの部分は追及しないから」って言ったら、岸田総理はその通り言っているんです。これ嘘なんですよ。だってその前に閣議決定(14日)やっているわけですから、内閣法制局から法務省も政府全体で「適用できない」という解釈をつくっているわけですから。>(3:20-4:17)

< 内閣法制局および法務省の見解 >

内閣法制局および法務省の見解は、2022年10月14日に閣議決定したものです。つまり、昨年の2022年10月18日の国会の衆議院予算委員会において、統一協会の解散命令請求の要件を巡る長妻昭衆院議員(立憲民主党)や宮本徹衆院議員(日本共産党)の質問に対し、岸田総理の答弁「法令違反は刑事に限る。」つまり民法の不法行為は入らないという解釈であることがはっきり述べられており、これが内閣法制局および法務省の見解だったということです。

18日の衆議院予算委員会の後に、岸田総理は「内閣法制局も法務省も呼んでみんなで議論し」ていないのです。翌日の19日に岸田総理が発表したのは「小西案」だったのです。

小西案とはつまり岸田総理は19日の国会答弁です。
岸田総理は小西案を受けて次のように語りました。「改めて関係省庁で集まり議論した。宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたと考えられる場合などには、個別の事案に応じて解散命令の請求を判断すべきで行為の組織性や悪質性、継続性などが明らかで、宗教法人法の要件に該当する場合、民法の不法行為も入りうると整理した」。

< 裁判所は立憲主義無視の解散請求にどう判決を下すのか >

小西議員が伝授した「嘘」を岸田総理が「共有したのであれば、立憲主義を護らんとする内閣法制局および法務省の正しい見解自体は、どう救済されるのでしょうか。
政府が裁判所に訴えるとほぼ99%政府が勝つという話があります。しかし、それは前提が正しい訴えであるからです。そもそも前提自体が政治の力で「法解釈」が曲げられ「内閣法制局および法務省」の見解と反対のことを国民に伝えたことが明らかになっている時点で、裁判所はどうこれを審判するのでしょうか。

追加:新たな情報提供がありました。
2つの画像はTKMTさんの提供で、この記事とこの2つの画像が、小西さんと岸田総理の合作による「内閣法制局および法務省」無視の国民への嘘という蓋然性を高めることになります。
一つは、2022年10月18日に「内閣法制局および法務省」と会議を開いた議事録がないことを教えています。もう一つは、次の日の19日に岸田総理が答弁の前に小西議員と会っています。これは小西議員の話と辻褄があいます。