最後のマエストロ達(3) −亀井俊博−

 

 

 

 

バイブル・ソムリエ:亀井俊博

「西宮北口聖書集会」牧師
「芦屋福音教会」名誉牧師

「最後のマエストロ達」(第3回)

 

(第2回)より

(d)最後の K.マルクス

(1)「人新世の『資本論』」

 終わりに昨年刊行以来ベストセラーの少壮経済・社会学者斎藤幸平(1987~)「人新世の『資本論』」を“最後のマルクス”と言う視点で、少し詳しく取り上げます。その理由は本書が人類存亡の危機、地球環境破壊の解決策として注目され多くの読者を得、英訳が出版されている程ですから。

 さて斎藤の研究によると経済学のマエストロ、カール・マルクス(1818~1883)は主著たる資本主義の崩壊と革命による社会主義社会の到来への実践書「共産党宣言」と、資本主義経済社会の社会科学的分析研究書「資本論」を出版後、15年もの長い沈黙があった。しかし最近、晩年までの長期沈黙時代の膨大な研究ノートが整理解明刊行され MEGA(Marx-Engels-Gesamtausgabe)と呼ばれる。そこで有名な大月書店版「マルクス・エンゲルス全集」とは別に、新しい「マル・エン全集」100巻刊行が進み、斎藤もその編集者の一人だと言う。とりわけマルクスの「研究ノート」が新たに発見され、マルクス晩年の驚くべき、思想の大転回が発見されたと言う。これを私は”最後のマルクス“と言う訳です。

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最後のマエストロ達(1) −亀井俊博−

 

 

 

 

バイブル・ソムリエ:亀井俊博

「西宮北口聖書集会」牧師
「芦屋福音教会」名誉牧師

「最後のマエストロ達」(第1回)

2021・6・16

(A)巨人の背中の小人

  “われわれは巨人の肩に乗った小人のようなものだ。当の巨人よりも遠くを見わたせるのは、われわれの目がいいからでも、体が大きいからでもない。大きな体のうえに乗っているからだ。”これは1676年ニュートンがライバルのロバート・フックに宛てた手紙の有名な一文です。実はこの言葉はニュートンの独創ではなく、中世12世紀フランスのキリスト教スコラ哲学・神学者シャルトルのベルナルドウスの言葉とされています。

 世の中は大多数が平凡な人間ですが、中には天才的な人物が現れ、世界を変えることがあります。そのような思想的巨人のお陰で人類は英知を得ることが出来ます。その英知を教育という形で次代は受け継ぎ、人類の遺産として活用します。ですから、われわれはニュートンやアインシュタインのような天才ではありませんが、彼らの苦闘の結果得た最先端英知を日常に生かして生活しています。

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