(Photo by Aney, 2005-08-27)

西岡力
日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY- 主筆
歴史認識問題研究会会長・モラロジー研究所教授・麗澤大学客員教授
参照:「歴史的事実に基づいて反論せよ」
(2022-1/28 SALTYの論説)
毎日と共産の強制連行説に反論
今後ユネスコの審査過程で韓国政府とマスコミが「佐渡金山は朝鮮人強制労働の現場だ」として世界文化遺産登録に反対することが予想されるが、官民が協力して事実に基づく反論をすべきだ。
佐渡金山めぐり韓国に同調
自治体の独自編さんだとしても、強制連行はなかったと思いたい日本政府にとって、都合の悪い公的通史であるのは間違いない〉
〈アジア・太平洋戦争の末期に、佐渡金山で当時日本の植民地支配の下にあった朝鮮人の強制労働が行われたことは、否定することのできない歴史的事実である。新潟県が編さんした『新潟県史 通史編8 近代3』は「朝鮮人を強制的に連行した事実」を指摘し、佐渡の旧相川町が編さんした『相川の歴史 通史編 近・現代』は、金山での朝鮮人労働者らの状況を詳述したうえで、「佐渡鉱山の異常な朝鮮人連行は、戦時産金国策にはじまって、敗戦でようやく終るのである」と書いている。この歴史を否定することも、無視することも許されない〉
左派に支配された古い学説
古賀氏と志位氏に反論したい。歴史を議論する場合、まず大切なのは一次史料、つまり、その当時に作成された文献やその当時に現場にいた人の証言だ。「強制労働」あるいは「強制連行」という言葉は当時はなかった。日本の朝鮮統治が終わって20年くらいたった1960年代から日本の左派系学者らがその言葉を使い始め、90年代頃から韓国でも使われるようになった。つまり後世における歴史評価だ。学説といってもよい。
この古い学説に対して、私は内務省統計という一次史料を使って〈朝鮮から内地への雪崩のような出稼ぎ渡航があったのだが、それを戦争遂行に必要な事業所に秩序だって送ろうとしたのが戦時動員だった。「強制連行」「強制労働」などとは異なる歴史的事実だ(詳しくは西岡力編『朝鮮人戦時労働の実態』産業遺産国民会議)〉と新しい学説を提起して否定した。学問は新しい研究により進歩していく。私の学説を否定するためには古い学説をただ引用しても不十分だ。
一次史料に基づく議論を
また、私は『佐渡相川の歴史』だけを根拠にして強制労働がなかったと書いたのではない。「応募が殺到」については『佐渡相川の歴史』の中に収録されていた朝鮮に労働者を募集しに行った杉本奏二氏の証言を根拠にしている。この証言は一次史料だ。
つまり、私は一次史料を根拠に強制労働はなかったと書いたのだ。それを批判するなら、古い学説ではなく一次史料に基づく新しい議論をしてほしい。
(にしおか つとむ)
*産経新聞<正論>掲載 2022_2/17
・佐渡鉱山が朝鮮人強制労働の現場ではなかったことを示す資料
「歴史認識問題研究会」2022年1月26日
・西岡力編『朝鮮人戦時労働の実態』産業遺産国民会議