明石清正
SALTY論説委員
カルバリーチャペル・ロゴス東京 牧師
ロゴス・ミニストリー 代表
(*動画は、下をご覧ください。)
第一回からの続き
私(明石)が大使に質問する時、心構えとして「ユダヤ人に寄り添う」ということがあった。
それは、無条件にイスラエルに肩入れすることではなく、当事者が、どのように感じて、考えているのかを、日本の人々に伝えるという報道が、これまでなされてこなかったのはないか?という疑問からである。ハマスによって被害を受けたイスラエルが、今、どのような傷を受けているのかを知ることが先決だと感じていた。
ハマスによる大虐殺を、「イスラエル建国以来、最大の悲劇」あるいは、「ホロコーストの再来」とイスラエルの人たちが多く発言しているのだ。この点について、まずお尋ねした。
質問2.次の質問は、とてもお答えになるのが辛いことになると思います。ハマスの大虐殺です。私個人は、大虐殺(Massacare)という言葉よりも、ジェノサイド(genocide)と呼びたいのですが、イスラエルの人々から、「建国以来の最大の悲劇である」「ホロコースト以後のジェノサイド」という言葉を聞きました。
私(明石)も、かつて、ホロコースト博物館に初めて訪問した時の気持ちがよみがったのですが、日本の人々に、あなたがたの抱いた痛みと苦悩を、どのように理解していただくことができますか?例えば、原爆投下による痛みであるとか。
ホロコーストは、国連によってジェノサイドとして定義された言葉です。(参照記事)宗教や信条にしたがって抹殺されることですが、ナチスによって第二次世界大戦の時にユダヤ人が600万人、抹殺されました。
けれども、あなたの言われた、イスラエル人の気持ちは、ホロコーストや他のものと比べたくありません。この悲劇は、建国以来、最も痛く、衝撃的です。ハマスは、可能であったならば我々全員を殺したことでしょう。1000万人のイスラエル人を全員です。なぜなら、彼らは抹殺すると言っていますから。
けれども、その残虐性は、近現代で前例のないものでしょう。赤ん坊を殺害し、生きたまま火炙りにしました。子供の前で親を殺したり、強姦したり、斬首、手足の切断などをしました。誘拐し、処刑しました。ナチスは、あの残虐な行為を隠蔽しようとしました。ユダヤ人に対してだけでなく、世界に対しても隠そうとしていました。これはもちろん、人道に対する罪で、戦争犯罪です。しかし、ハマスの場合は、これを誇っていました。テロリストどもは、体に装着するカメラで撮影していたのです。喜んでいました。赤ん坊を処刑したり、女性を強姦したりすることを、自慢しているのです。
個人的なことを言いますと、私の息子二人は今、ガザに従軍しています。妻と共に心配しています。130名の人質が、まだそこにいます。女子供、男たちもみなが、そこにいます。ハマスは弄び、解放しません。私たちにとって、最も困難な時にいます。父に二週間前に話したのですが、彼は80歳近いです。こう教えてくれました。「息子よ、私はこの国に80年生きているが、こんなものを今まで見たことがない。」こんなに悲劇的で、こんなに痛く、傷を受けたことがありません。
民族抹殺を意図するテロ組織の一掃と、人質解放
私たちがしているのは、復讐ではありません。もう二度と、同じことが起こらないようにするために動いています。ハマスは、イスラム国のようなテロ組織ですが、「私たちは、何度でも同じことをする」と言っているのです。10月7日は予告篇にしかすぎないと。
このようなことを、どの国も受け入れられないでしょう。隣接しているところに、平和に暮らすには、ハマスがそこで統治しないようにしたいのです。それから、人質を解放させることです。これらが、我々がガザにいる唯一の理由です。
多くの国が即時停戦を唱えていますが、今、軍事作戦を停止したら、イスラエルの人質をだれが解放するのでしょうか?いつまで待てばよいのでしょうか?10年ですか?20年、40年、50年?日本は、北朝鮮による拉致被害者の帰国を長いこと待っていますが、私たちは待てません。そして、近い将来、ハマスもイスラム国も、北にいるヒズボラも支配するのを許しません。何度でも攻撃することを企てているからです。どの国も、許容できないでしょう。
もし、何か、ハマスを根絶するのに、もっと良い対案があれば、それを行います。アメリカは、アルカイダとイスラム国を潰すのに、3年を費やしましたが、私たちはそんなに長いことかけません。でも、何か良い解決法があれば、教えてほしいです。ハマスを根絶し、イスラエルの市民の被害を最小限にするための方法です。今のところ見つかりません。
IDF(イスラエル国防軍)は、道徳のある軍隊です。ガザ市民を北部から南部へ退避するように、呼びかけました。その中には、人質を連れて退避したハマス指導者や、病院関係者もいます。
ですから、そのとおりです、建国以来、最も心の痛む悲劇です。
質問3.次の質問は、一部をすでに答えてくださいましたが、この戦争は、非常に困難だと感じています。通常の戦闘では、双方の軍が、それぞれの民間人を守るために戦います。しかし、イスラエル軍は自国民を守りながら、同時に、ガザの民間人も守らないといけません。非常に困難な戦争だと思います。
そこでお尋ねしたいことは、イスラエル兵士にどのように、交戦規定を守るように教育し、どれだけ遵守したかを評定しますか?イスラエルの市民は全員が、若い時に、この教育を受けたと思いますが(注:イスラエルでは、男女徴兵制)、ご紹介願いますか?
私自身、兵士でしたし、今は息子たち、そして娘も兵士です。息子たちは予備軍に入隊しました。私たちには、厳格な交戦規定があります。兵士に対してのみしか、交戦できません。ハマスの問題は、巧みに操作することです。ヘブライ語で呼びかけたりします。それで、残念なことに、自分たちの人質を殺してしまいました。本物のイスラエル人だと思わず、ハマスがごまかしていたと思ったのです。また、私たちをおびきよせて、殺すこともします。
しかし、イスラエル軍の司令は明確です。白旗を振っている者は射撃しません。民間人、女子供に撃ちません。守ろうとします。それで、シファ病院から移動するように呼びかけました。保育器を持ち込みました。手当するための機器を用意しました。避難するための救急車も用意しました。
しかし、ハマスは司令部として病院を使っていました。病院の地下にトンネルを掘っています。彼らは、トンネルのためのお金を使えば、二つの病院と学校を一つ、を建てられたことでしょう。でも、トンネルのために費やしたのです。これが、心の痛むことなのです。
ハマスは自分の民など度外視です、彼らを人間の盾に使っています。でも私たちは気にします。例えば、空軍のパイロットが、ある家にテロリストがいることがわかって攻撃する時、もし、そこに市民が、子供を視認したら、攻撃を中止します。そして、指揮官に中止を伝えます。
(明石)パイロットが中止の決断をするのですか?それとも、指揮官に尋ねるのですか?
指揮官からは、出撃の時に指示を得ています。けれども、時に、市民や子供が見えます。パイロットに、自分で中止の決定をする権限が与えられています。これが、イスラエルが、道徳性のある軍隊だと言っている所以です。
日本政府は、イスラエルには、国際法に従った自衛権を尊ぶこと言っていますが(参照記事)、私たちがしているのは、ロケットを打ち込んでいる発射台が家屋にあって、親の部屋、子供の部屋も、その家にあります。ロケットを発射しているのですから、そこを攻撃しないといけません。
そこで、私たちは、その建物の屋根に小さな爆弾を落とします。それを「屋根をノックする」と呼びますが、ただ音を立てるだけです。それによって、中にいる人々が逃げることができるようにします。そして、この建物を打撃しないといけません。
これが、複雑な実際なのです。邪悪な殺人鬼のテロ組織と戦う時に直面する、ジレンマです。彼らは、民間人の中に隠れているのです。
質問4.ニュースでは、パレスチナ人の犠牲者の数ですが、それがハマスの発表であるわけですが、民間人と戦闘員を一緒くたにしています。どのようにして、イスラエル側では、実際の民間人の数を、戦闘員と分けて計算していますか?
そう、ここが問題なんです、ハマス発表の人数は信用できないのです。「保健省」というのは、ハマスの配下にあります。民間人の犠牲者は、残念ながら出ています。その中には、ハマスの戦闘員もいて、彼らは軍服を着ていないのです。銃を取ったときに初めて、その違いが分かるという状態です。
ハマスの戦闘員は1000名殺していると思います。捕虜にしている者たちもいます。けれども、被害者のうちの、民間人とハマスのテロリストの割合について、正確な数字が分かりません。ハマスは、そのことをもって、イスラエルが病院を空爆したと悪玉にしようと引き込もうとしています。実際は、彼らのロケットが病院に落ちています。
これが、民主主義国がテロ組織と戦う時の姿であり、問題なのです。イスラエルは、自国民を守るために戦いますが、ハマスは市民を人間の盾にして、市民の中に隠れるのです。モスク、学校、民間の建物の下に隠れるのです。私たちが民間人を殺したと、非難の矛先を向けさせようとするのです。
私たちは、だれも死んでほしくありません。子供や民間人は死んでほしくありません。ハマスにだけ弾が当たってほしいのです。パレスチナの人々に対する戦いではなく、ハマスに対する戦争です。
イスラエルを悪玉に見せる手法を熟知するハマス
以上、質問2から4までの、コーヘン大使の返答を掲載した。ハマスによる、前代未聞の大虐殺によって、深く心が傷つき、トラウマが続いている中で、人質の奪還と、ハマスを一掃するための戦争を繰り広げなければいけない、イスラエルの苦悩が伝わってきた。
国際法や国際人道法に則って自衛権を行使することについて、イスラエルは遵守するべく努めているが、相手がテロ組織であり、これらの法を完全に度外視して戦いを挑んでくることで、置かれているジレンマも伝わってくる。ハマスはむしろ、国際法を利用して、イスラエルが民間人を殺し、病院や学校を攻撃しているようにかのように見せていき、国際世論を自分たちに引き込むことも熟知しているようだ。
キリスト者たちの集まりで、コーヘン大使が同席の中、イスラエルの兵士たちの安全のためにも祈った時、この祈りが最も心動かされたと大使は仰った。前線で戦う、息子さんたちのためにも祈らなければいけないと思った。
➡️ 第3回に続く