論説委員 金井 望 「あなたがたもぶどう園に行きなさい。ふさわしい賃金を支払うから」 「自分の分を受け取って帰りなさい。私はこの最後の人たちにも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ」 (マタイ20:4,14)
ぶどう園のたとえ
冒頭に掲載した絵は、イエス・キリスト が語ったたとえ話の一場面を描いたものです。紀元30年頃のユダヤ社会には、自分の農地を持たない日雇い労働者 がいました。
ある農園主 が夜明け頃に町に出かけて行って、1日1デナリオン の賃金 を支払う約束で労働者 を雇い、ぶどう園に送りました。農園主はその後もたびたび労働者を雇い、「ふさわしい賃金を支払う 」と言って、ぶどう園に送りました。その日、早朝から働いた者たち、9時頃から働いた者たち、正午頃から働いた者たち、午後3時頃から働いた者たち、午後5時頃から働いた者たちがいました。夕方6時頃になると主人は管理人に命じて、最後に来た者から始めて最初に来た者まで順番に、労働者全員に1デナリオン ずつ賃金を支払わせました。
すると、最初に雇われた労働者たちが農園主に不平を言いました。 「俺たちは、この暑い日に一日中、辛抱して働いたんだ。それなのに、なぜ1時間しか働かなかったこの連中と俺たちの賃金が同じなのか」 農園主は応えて言いました。 「私は不当なことをしていない。あなたは私と1デナリオンで契約したではないか。私はこの最後の人たちにも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ。 自分の金を自分のしたいようにして、何がいけないのか」
1デナリオン はローマ帝国の銀貨で、当時、一日の労賃の標準 となっていた金額です。 午後5時頃に雇われた労働者たちは、その時刻にそこに来たのではありません。彼らは一日中そこに立っていたのですが、誰も彼らを雇ってくれなかったのです。雇用者は当然ながら、能力の高い労働者 から雇って、連れて行きます。最後に残るのは、能力が低い労働者たちです。元気で勤勉な青年男子 は真っ先に雇ってもらえますが、老人や女性、子ども、病人、障がい者、外国人 などは後に回されがちになります。けれども、生活費 として一日に1デナリオンを必要としているのは、どこの家庭も同じでした。
イエスは「天の国は次のようにたとえられる」と言って、この話をしました。「社会主義の国を造れ」と言っているのではありません。天の父がひとりひとりの人権と生活に配慮しておられる こと、神の御心が実現する世界ではこの世と異なった価値観が支配する ことを、イエスは教えたのです。 10兆円の予備費と失業問題
さて、新型コロナウイルス 対策を推進するために編まれた今年度 第2次補正予算 が6月12日の参院本会議で可決、成立しました。一般会計の追加歳出は補正予算として過去最高の 31兆9114億円 であり、財政投融資や民間融資なども含めた事業規模は 117兆1000億円 にのぼります。第1次補正予算と併せた事業規模は GDP (国内総生産)の 4割 にあたります。
第2次補正予算は(1)雇用調整助成金の拡充(2)資金繰り対応の強化(3)家賃支援給付金の創設(4)医療提供体制の強化 が柱となっていますが、さらに10兆円の予備費 が計上されています。これを用いて、コロナ危機による失業問題 を解決する方策を、筆者はここで提案します。 “コロナ危機による失業問題の積極的な解決策について −金井 望−” の 続きを読む