「建国記念の日」に思う 〜「信教の自由を守る日」なのか「信教の自由の日」なのか?〜 −井草晋一−

写真:『カイザルと神』亀井俊博著

 

井草晋一
SALTY 編集長
日本メノナイトブレザレン教団
武庫川キリスト教会  協力牧師

「建国記念の日」に思う
〜「信教の自由を守る日」なのか「信教の自由の日」なのか?〜

 明日(2月11日)は、「建国記念の日」ですが、キリスト教会では、「信教の自由を守る日」と定めて、各地で集会などが開催されます。

しかし・・・

<自らの信仰の告白をもって、いつでも、どこでも、また、誰に対しても「弁明できる(キリストを証しする)」備えをするように。>  (*1)

これがキリスト者にとって全てだと思います。

為政者に対して神が託された「剣」の領域での見解ではなく、キリスト者に向けられた主イエス様の教えとその姿において、一部(時に、あちこちで散見する)のキリスト者が言う「平和」の主張において、「剣(武力)を捨てること」を要求しながら、為政者に対する<抵抗権>を主張することは、聖書の理解において、また、論理的にも矛盾していると、私は考えています。

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青年時代、教会に行き始めた頃(1973年)には、「クリスチャン新聞」や「キリスト新聞」などで、キリスト教会(教界)において、2月11日を「信教の自由を守る日」のような位置付けで、諸集会が持たれることは良いことだ、と考えていました。

大学生時代から法学関係の「ジュリスト(別冊)」の、ホーリネス教会の戦時中の「治安維持法」違反で検挙された牧師達の裁判記録や、「少数者の信教の自由」を読み、また、「津地鎮祭訴訟」の最高裁判決(目的効果基準)の経緯や、「箕面忠魂碑訴訟」、などの新聞記事や「政教分離」に関する資料を読んだりしながら・・・・。

・・・・・

それから、40年が経過し、特に、2015年前後から日本のキリスト教会、また、私自身も所属するキリスト教会(教界)の中の一つの領域の<「福音派」「聖書信仰」の教会>が加入する包括的な団体(組織)が折に触れて出す「声明」や「内閣総理大臣への要望書」や、牧師・信徒の中の活動であっても、慎重に見極めをすることが必要であると、強く思わされるようになりました。

「平和安全法制関連二法(安保関連法案)」や「テロ等準備罪」の国会審議の時期に出された、あたかも<キリスト教会を代表していると一般の国民に思わせてしまう>ような、「キリスト教会のいくつかの組織からの声明」の内容と、一般のメディア(新聞、テレビ)でのそれらの話題を報道する写真や映像を見る中で。

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戦前や戦中の国家体制(国体)における国家の宗教政策の問題点を今も昨日のごとくに指摘し、「歴史は繰り返す」のような視点や、「右傾化」」の一語で、現在の日本の社会や国際関係での対応せざるを得ない「防衛問題」や政府の諸政策を糾弾することは、「平和」と「信教の自由」が守られている日本の「教会」「キリスト者」として、容易(たやす)いことだと思います。

もし、2月11日をキリスト教会において「信教の自由を守る日」と定めるのなら、どうして、アジアや中東、アフリカ、そして世界各地で、困難な政治状況や政治的迫害下にある国々の地域のキリスト者、教会、兄弟姉妹達のために祈り、支える日と定めないのだろうか?、と思うのです。

私は、明日の「建国記念[の]日」を一人の国民として祝うとともに、一キリスト者としては、真の意味での「信教の自由の日」として、与えられた信教の自由を感謝するとともに、現時点で自ら知ることのできる範囲での、世界の「苦難の中にある教会や兄弟姉妹、また、人々のために」祈りつつ、過ごさせていただきたいと願います。

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2/11(火)の「建国記念の日」にあたり、亀井俊博先生の記された著書『カイザルと神』をお勧めします。

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<参考>
あらためて、[の] の意味することの大切を思います。

● 「建国記念の日」の成立の経緯

「・・・具体的に何月何日を記念日とするかについても、議論があった。
日本社会党は日本国憲法が施行された5月3日(憲法記念日)、公明党(旧:公明政治連盟)の設立者である創価学会の池田大作会長(当時)はサンフランシスコ講和条約が発効した4月28日[8]をそれぞれ提案した。民社党は聖徳太子が十七条の憲法を制定したとされる4月3日を主張し、朝日新聞も社説で同じ日付を提案した[9]。

結局、名称に「の」を挿入した「建国記念の日」として“建国されたという事象そのものを記念する日”であるとも解釈できるようにし、具体的な日付の決定に当たっては各界の有識者から組織される審議会に諮問するなどの修正を行い、社会党も妥協。1966年(昭和41年)6月25日、「建国記念の日」を定める祝日法改正案は成立した。

同改正法では、「建国記念の日 政令で定める日 建国をしのび、国を愛する心を養う。」と定め、同附則3項は「内閣総理大臣は、改正後の第2条に規定する建国記念の日となる日を定める政令の制定の立案をしようとするときは、建国記念日審議会に諮問し、その答申を尊重してしなければならない。」と定めた。

当の「建国記念日審議会」は、学識経験者等からなり、総理府に設置された。約半年の審議を経て、委員9人中7人の賛成により、「建国記念の日」の日付を「2月11日」とする答申が1966年(昭和41年)12月9日に提出された。

同日、佐藤内閣は「建国記念の日は、二月十一日とする。」とした「建国記念の日となる日を定める政令」(昭和41年政令第376号)を定めて公布し、即日施行した。

(Wikipedia より)

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(*1) —  新約聖書:ペテロの手紙 第一 3章15節

13   もし、あなたがたが善(良いこと)に熱心であるなら、だれがあなたがたに害を加えるでしょう。
14 いや、たとい義のために苦しむことがあるにしても、それは幸いなことです。彼らの脅かしを恐れたり、それによって心を動揺させたりしてはいけません。
15 むしろ、心の中でキリストを主としてあがめなさい。そして、あなたがたのうちにある希望について説明を求める人には、だれにでもいつでも弁明できる用意をしていなさい。

 

 

『カイザルと神』亀井俊博著