・写真:武庫大橋と皇帝ダリア
この度、大橋秀夫牧師が、SALTYからの執筆依頼に快く応じてくださり、『新型コロナウィルス感染拡大と教会』の一文を寄稿されました。
世界各国の危機的な状況の中で、日本の教会が直面している課題を明らかにしつつ、今後の歩むべき道を問いかけ指し示しておられる内容です。
3回の連載として掲載いたします。
皆様、ぜひ、ご一読くださいますよう、ご案内いたします。
● 3回の連載:<第1回>
大橋秀夫
「日本教会成長研究所」
(現、JCGIネットワーク)
コメンテイーター、理事、全国講師
日本福音自由教会
クライストコミュニティ教会 顧問牧師
新型コロナウイルス感染拡大と教会
はじめに
それは2019年11月末の新聞の国際面一番下に15行前後の小さい記事だった。 新しいタイプの「ウイルスか?」と言うような見出しだった。WHOは、毎年その年のインフルエンザウイルスを特定するために中国へ調査団を派遣している。しかし、この新型ウイルスを発見したのは、WHOの調査団ではなく、中国の医師だった。
私は、これはきっと大きな問題となるに違いないと思い、その後も新聞に目を凝らしていた。案の定、12月に入ると中国で感染拡大のニュースが広がった。新たな事態をSNSで拡散させたとして、周医師は拘束され、自身が感染して亡くなってから、中国は国際的な非難を避けるために同氏を「英雄」に仕立て上げた。WHOがパンデミックを宣言したのは3月12日だった。この時にすでに感染はヨーロッパからアメリカへと拡大していた。
我が国では、大型クルーズ船内の感染拡大を食い止められなかったことが人々の不安を一気に搔き立てた。クライストコミュニティー教会では、3月1日の総会と礼拝をインターネットで行った。そのころ都知事が「不要不急の外出は控えてほしい」との発言に、「礼拝は不要求に当たるか。」と反発する牧師たちもいて、多少の批判を頂いた。しかし今は、誰も言わなくなってしまった。4月7日、一部の地域に緊急事態宣言が出される。そんな中で迎える4月12日のイースター前夜、私は次のような祈りを日記に書いた。
主よ、人々の直面している困難に御目を向けてください。痛みや苦しみの中でこの朝を迎えた沢山の人々をあなたはご存じのはずです。彼らと寄り添って懸命に戦っている人々がいることも、
人々が苦しみの中から目を山に向けて、「私の助けはどこから来るのか」と叫び求めるようにしてください。
もしも彼らが、そうできないのならば、主よ。もしも彼らが、目を向けるべきところを知らないのならば、彼らの血の責任を、主よ。あなたは私に求められるのでしょうか。
それならば主よ。私を赦してください。私の罪を赦してください。彼らに知らせなかったのは、ほかの人ではなくて私だったのです。
1,社会の反応
4月、5月になると、社会の中からこれを社会的問題として取り上げる人々が様々な声を上げ始めた。これまでの国際化(グローバリズム)に対する危惧や、人々が抱いていた普遍的な価値観(実は、ヒューマニズム的世界観の中でのだが)に対する揺らぎが見えてきた。そのいくつかをご紹介しよう。
社会経済学者の佐伯啓思は「文芸春秋」5月号の「グローバリズムの復讐がはじまった」と言う論文で、「これがグローバリズムの完成形」と皮肉る。そして人、金、物に加えてウイルスも世界を急速に移動した、と指摘している。
生態学者の五箇公一は、「中央公論」の5月号で「人獣共通感染症との闘いに終わりはない」と述べている。そして地域固有の生態系の中で宿主と共生していたウイルスが、人間活動で移動させられなどして変異し流行する。一つを収束させても別のウイルスが必ず現れる。これは予想されていたことなのだと述べる。
国際政治学者の中西寛は、「VOIS」7月号で、「ゲリラプラ戦型のウイルスであるコロナが、政治、経済、社会の既存の亀裂を拡大させる。それは「医療か、経済か」、「公共か、プライバシーか」の選択を迫っている。
評論家の山崎正和は、「中央公論」7月号で、コロナ禍が「近代人の秘められた傲慢に冷や水を浴びせた」と、人類が自然に勝り、文化は進化するというのは迷信であると言っている。
アジア近代史が専門の平野聡は、「民主主義か権威主義か」と題して、コロナの抑え込みに関する中国とアメリカなどの民主主義国との違いを取り上げる。それと同じ「WEDGE」8月号で国際政治学者の細谷雄一が、「コロナ後の世界秩序」で、リベラルな国際秩序が終わる可能性もあると語る。
少々長くなったが、どれも現在の社会に対して新型コロナウイルスの与える影響の大きさを察するには十分であろう。社会はこれほどの危機感をもって対応しようともがいているのである。
<第2回に続く> <—– クリック!
2,教会の対応
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参考文献
・アルベール・カミュ著
「ペスト」(新潮社)
・フレデリック・F・ジャートライト著
「歴史を変えた病」(法政大学出版局)
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*・写真:武庫大橋と皇帝ダリア
・撮影場所:国道2号線:武庫川の「武庫大橋」にて
・撮影: Shinichi Igusa ・2020-12/20