最近の韓国のアンチ反日の動きについて(1)−西岡力−

 

 

西岡力
日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  主筆

歴史認識問題研究会会長・モラロジー研究所教授・麗澤大学客員教授

最近の韓国のアンチ反日の動きについて(1)

*『 歴史認識問題研究 』 第8号 (2021年3月19日)より転載

はじめに

 二年前から、韓国人の対日観に革命的変化が静かに起きている。その一環として、令和2年(2020)12月、拙著『でっちあげの徴用工問題』が韓国語で全訳され、書店に並んだ。訳者は『反日種族主義』の共著者の1人である李宇衍博士、韓国語版のタイトルは『ねつ造された徴用工のいない徴用工問題』だ。出版社は、慰安婦問題について事実に基づく発信を続けている「メデイア・ウォッチ」(黃意元代表)だ。

 同書出版直後、いくつかの保守ユーチューブテレビが好意的に取り上げた。チャンネル登録67万人のペンアンドマイクTVもその一つだ。ペンアンドマイクTVでは1月12日に、過去『月刊朝鮮』の特ダネ記者として有名であり、『反日種族主義』の共著者であるジャーナリスト金容三氏が、拙著の翻訳者李宇衍氏と約1時間、本を紹介する対談番組を放映した。その中でつぎのようなやりとりがあった。

金容三     この本を書いた西岡先生の心情を、私はある程度推察してみたのです。「本当に韓国人たちはあまりにもひどすぎる。政府もそうだし、最高裁もそうだ。集団的な 一種の精神疾患にかかっているのではないか」と感じるくらいですよ。歴史的事実とは全く関係がない一種の虚像を根拠にして、2018年10月の戦時労働者判決が出たのですが、これを私たちはどうすれば良いのか。
私はこの西岡先生の本を読みながら、本当に辛かったです。われわれはこの程度でしかない国なのか。韓国の集団知性はこの程度の、ゴミ箱にしかならない状況なのか。

李宇衍  2年前だったとしたら、このような本を翻訳したならばひどい目に遭ってしまったでしょう。いまは大きく変わったではないですか。この本は世界自由保守叢書第一巻です。日本の自由右派たちと交流をし、討論し、連帯しなければならないと考えて、この本を翻訳しました。

 いまや、われわれは正常な国にならなければならない。事実にないことを根拠にし て、最高裁までこのような判決を出せば、大韓民国の知性はないとみるべきではないですか。良心も正義もないということだ。どうして大韓民国政府と最高裁が、その悪辣な何人かの左翼知識人たちに惑わされてこのようなことをするのか、ということです。

 すでに革命的変化が起きている。自由右派の新党の釜山市長候補である鄭奎載先生や、ソウル市長候補の金大鎬先生が、公約で反日銅像、慰安婦像と労働者像を撤去すると言える時代にすでになった。時代が変わったのです。2年前でも考えることもできなかったものです。そこで、国民的な精神改造運動が必要だ。そのための有力な方法の1つが、日本の右派知識人たち、自由派知識人たちと交流し、討論し、連帯することだ。すぐに政権を変えることも重要だが、長期的にわれわれが脱朝鮮王朝できる根本的な道だ。

  コロナが少し収まれば、本当に日本に対して謝罪団をつくって、土下座して申し訳ないという謝罪からしなければならないのではないか。ここまで、でたらめ、ウソ判決と無理すぎる主張をする政府を持つ国に希望がありますか。

     そこでまず、市民たちの小さな行動として、いま、毎週水曜日の12時に日本大使館前で慰安婦銅像撤去デモをしています。いま、59回になりました。1年を超えました。

  慰安婦運動がデモをやっている場所の近くですね。

    いわゆる「少女像」のところの挺対協、正義連のデモのすぐ横の場所です。そこで、私たちは「慰安婦像撤去、水曜集会中断、正義連解体」を叫んでいます。そして、1時 半には龍山駅前で、そこにある労働者像の前で、像撤去を求めるデモをしています。

     この本は、日本の本当の良心的知識人が韓国人の知性と良心に訴えるものです。矢のように心に突き刺さる内容にあふれています。このような本を通じて、われわれは徴用工の問題が何であり、そして今後どのような大きな影響をわれわれに及ぼすのか、 徴用工問題を主張している韓国最高裁と韓国政府と韓国の左翼がいかに勉強をしておらず、無知で嘘つきなのかについて、目覚めなければならないと思います。

 

 ここで李宇衍氏が「2年前だったとしたら、このような本を翻訳したならばひどい目に 遭ってしまったでしょう。いまは大きく変わったではないですか。」「すでに革命的変化が起きている」「時代が変わったのです。2年前でも考えることもできなかったものです」と発言していることに注目したい。

 私は二年前から韓国で起きているこの「革命的変化」を「アンチ反日」と名付けて、そ の実態を何回か断片的に報告してきた(注1)。なぜ、「親日」と呼ばず「アンチ反日」と呼ぶのかを説明したい。

 この動きの主人公は、日本専門家や日本との関係が深いビジネスマンらではない。そ の意味で親日と呼ぶのは適当でない。主人公は、韓国史の学者、韓国現代史を取材してきたジャーナリスト、そして文在寅政権が大韓民国の正統性を根本から崩そうとしているとして戦ってきた行動的活動家(左派も含む)らだ。彼らは日本と親しくなろうと反日を 批判しているのではない。ウソにまみれた反日を利用して、文在寅政権とその背後にいる従北勢力(北朝鮮に従属する勢力)が韓国を滅ぼそうとしているという強い危機感から、反日を批判している。だから「アンチ反日」と呼ぶのが適当だと、私は考えている。

 本稿では現段階で私が接することができた範囲内ではあるが、二年前から急速に拡大 してきた「アンチ反日」の流れを概観したい。その流れは大きく分けて2つある。

1.   実証主義歴史学者による啓蒙活動

2. 「アンチ反日」運動の誕生と活発な活動

順を追って概観していく。

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(注)

1. 「ソウル大学教授が「慰安婦性奴隷説」を全否定」『絶望の韓国、悲劇の朴槿惠(月刊Hanadaセレクション)』飛鳥新社2018年4月9日、
「韓国人教授が反日韓国を徹底批判 」『Hanada』2019年5月号、
「月報 朝鮮半島(第24回)韓国にもいる「噓を嫌う」良識派」『Will』2019年8月号、
「月報 朝鮮半島(第25回)韓国人はなぜウソつきなのか」『Will』2019年9 月号、「「反日」の本質を暴く : アンチ反日との思想的内戦」『正論 』2019年10月号、
「月報 朝鮮半島(第26回)韓国の良識派、命懸けの戦い」『Will』2019年10月号、
「大韓民国の亡国の危機を告発する憂国の書 (特集『反日種族主義』の徹底解剖)」『歴史認識問題研究』6号、
「韓国で広がる「アンチ反日」」『正論』2020年1月号、
「嘘の歴史観が破壊する韓国の自由民主主義」『正論』2020年6月号、
「月報 朝鮮半島(第39回)『反日種族主義』の著者を死刑に!?」『Will 』2020年12月号、
「月報 朝鮮半島(第41回)韓国良識派 真実(タブー) への挑戦」『Will』2021年2月号、
「月報 朝鮮半島(第42回)韓国のアンチ反日と労働党大会」『Will』2021年3月号など

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→  <続く>:最近の韓国のアンチ反日の動きについて(2)

 

<参考>:『李宇衍博士らが出した慰安婦像撤去を求める声明
2019年12月4日

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