最近の韓国のアンチ反日の動きについて(2)−西岡力−

<写真> 2021年1月26日(火)に首相官邸にて、「ソウル中央地方裁判所の慰安婦判決に抗議する日韓法律家・知識人共同声明」を加藤勝信官房長官に手交した時の写真( HARC 1/26 より)

 

西岡力

日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  主筆歴史認識問題研究会会長・モラロジー研究所教授・麗澤大学客員教授

最近の韓国のアンチ反日の動きについて(2)

*『 歴史認識問題研究 』 第8号 (2021年3月19日)より転載

<その1より>

Ⅰ 実証主義歴史学者による啓蒙活動 (1)

1)植民地近代化論論争と慰安婦タブー

 すでに韓国史学界では主として経済史専門家らによって、侵略と収奪という従来の学界の見方に反対して、日本統治時代に近代化が進んだとする植民地近代化論に立つ実証研究が1980年代から積み重ねられていた。(注2)しかし、学界内部では激しい論争が続いているが、韓国社会全体に対する啓蒙活動はそれほど活発ではなかった。(注3)

 特に、慰安婦問題や朝鮮人戦時労働者問題など、日韓の外交紛争については、結果的に日本側を弁護することになる実証研究結果を対外的に明らかにすることはほぼなかった。あるいは大きなタブーがあって、事実上できなかった。(注4)

 このタブーを破ったのが李栄薫ソウル大学教授(当時)だった。

 李教授は韓国経済史が専門で、植民地近代化論の旗手で、韓国の歴史教科書が左傾偏 向しているとして教科書改善運動の先頭に立ってきた学者の一人でもあった。たとえば、李教授は2007年に韓国で出版した『大韓民国の物語』(日本語版は2009年、文藝春秋から 出版された)で次のように書いている。

〈教科書には「日本は世界史において比類ないほど徹底的で悪辣な方法で我が民族を抑圧 し収奪した」と書いてあります。

 敢えて私は言います。これは事実ではありません。たとえば、米の半分が日本に輸出 されたのは総督府が強制したからではなく、日本内地の米価が三十%程度高かったからです〉。(注5)

 しかし、同書でも慰安婦については、李教授の主張は歯切れが悪かった。同書出版の2年半ほど前に当たる2004年9月、李教授はあるテレビ討論番組で慰安婦問題について討論する過程で、野党議員から「慰安婦を公娼という日本の右翼の主張と同じだ」と批判され、それをインターネット新聞が「李栄薫が慰安婦を公娼と呼んだ」と報じて、すさまじい抗議を受けたことがある。李教授は同書でも、自分は慰安婦を公娼だなどとは発言し ていないと弁明しながら、慰安婦は性奴隷だったと書いた。

220168月、タブーを破る李栄薫教授のユーチューブ発言

 しかし、同書出版から9年経って、2015年12月に日本の安倍政権と韓国の朴槿恵政権 が、慰安婦問題に関する合意を結び、過半数以上の元慰安婦がそれを支持しているという状況の変化の中で、李教授はついに勇気を持って慰安婦問題に関する従来の性奴隷説を否定する発言をはじめたのだ。

 李栄薫教授は2016年8月、インターネットの連続講義の中で「慰安婦制度は軍の統制下にあった公娼制度だ」「慰安婦は性奴隷ではない」「朝鮮人慰安婦は前借金や詐欺によって女衒が集めた」「朝鮮人慰安婦20万人説は根拠がない、5千人くらいだ」と明言した。

 李教授は、保守言論人鄭奎載氏(韓国経済新聞主筆・当時)が主宰するインターネットテレビ「鄭奎載TV」で、韓国近現代史の連続講義を行った。12回にわたってなされた「李栄薫教授の幻想の国」というタイトルの講義の最終回が、「慰安所の女性たち」だった。2時間を超える講義が、2016年8月22日と23日に3つに分割されてアップされた。

李教授は講義をやや緊張した顔つきで、次のように始めた。

〈今日の講義題目は「慰安所の女性たち」になります。日本軍慰安所の女性たち、いわゆ る慰安婦と私たちが呼んでいるその女性たちに関してです。ご承知の通り1991年に世間 に熱いイッシューとして提起されました。これまで25年間、この問題は韓国と日本の関係を規定するもっとも熱く激しい問題として持続してきました。両国間の外交関係だけでなく経済、社会、文化すべての交流で深刻な影響を及ぼしてきた主題でした。それだけでなく、この主題をめぐりこの間、韓国の反日民族主義はたいへん強力に燃え上がり、それは日本との関係だけでなく、韓国内において韓国人の知性、文化、歴史意識にまで深刻な影響を及ぼしました。したがって、私がこの「幻想の国」を扱う講義で、この問題を避けていくことはできないだろうと考えました。

 アダム・スミスは、人間にはだれでも自分の心の中に公平な観察者であるもう1人の自分を持っていると言いました。知恵を持つものは自分の心の中にいるもう1人の自分、いつでも自分を公正、公平で厳格に監視しているもう1人の自分の指示に従って心の平和を得て、生活の幸福を得る道だと話しました。

 私も私の心の平和を得て生活の幸福を得るために、私の心の中にいるもう1人の私の命令に従って、当初の計画にはなかったのですが、また躊躇もしましたが、この主題を最後に扱おうと思います。〉(注6)

 ここで李栄薫教授が「当初の計画にはなかったのですが、また躊躇もしましたが、この主題を最後に扱おうと思います」と言っていることに注目する。タブーを破る大きな一歩が、このとき始まった。内容は後日、『反日種族主義』に書かれたものの原型だった。

 放送の最後で李栄薫教授は、「性奴隷規定だとか(20万人という)数字推定について客観的に多くの問題がある」と、講義の結論を語った。この時点でここまでのことを言うことは、大変な勇気がいることだっただろう。(注7)

3)戦時労働者判決が引き金になった「反日種族主義」ネット発信

 2017年2月に李栄薫教授はソウル大学を定年退職し、韓国の一般国民を対象とした現代史学校というべき李承晩学堂を開設し、その校長になった。李承晩学堂は「李承晩大統領の政治哲学、独立運動、建国業績を正しく認識し、それを広く国民的教養として伝え ることを目的として設立された」という。(注8)

 同学堂は四つの堂訓を掲げているが、その4として「われわれはウソを排撃し名利に幻惑されない」を掲げている。これが「アンチ反日」啓蒙活動の基礎となっている。(注9)

 李承晩学堂は受講者を集めて講義をするだけでなく、「李承晩テレビ」というユーチューブテレビを通じて啓蒙活動も行っていた。その李承晩テレビが2018年12月から満を持し て、「危機韓国の根源:反日種族主義」というタイトルのネット講義を開始した。講師は 李栄薫教授のほか、4人の学者(金洛年、朱益鐘、鄭安基、李宇衍)と1人のジャーナリスト(金容三)が担当した。

 その第一回目(12月10日公開)で、李栄薫教授は次のように連続講義の目的を語った。

  「李承晩テレビは今後、約40回のシリーズ講義を通じて、反日種族主義を批判し告発しようと思います。

 わが韓国人が知っている日本支配期の歴史、それに対して無限に憤怒する感情がどれほど非科学的なのか、実際の事実とかけ離れているか、わが文化、わが精神に潜伏しているシャーマニズムとトーテミズムに根拠するものであるのか、についてもれなく解剖し批判するつもりです。

 目下、司法府で問題になっている、このどうしようもない司法府の騒動を起こしてきた日本の朝鮮労務者動員の問題も扱います。数多くの朝鮮青年が日本軍に志願し入隊したその時代の実態を、ありのままに伝えるつもりです。日帝が食糧と土地をほしいままに収奪したという歴史学の通説が、どれほどでたらめなものなのかについても暴露するつもりです。過去26年間、日本との外交を破局に追いやった日本軍慰安婦問題が、実は当時の公娼制度とどれくらい密接な関係を持っているのかについても、隠さずに指摘するつもりです。独島が果たして朝鮮王朝の領土だったのか、その客観的な証拠があるのかについても、果敢に発言するつもりです。」

 ここで李栄薫教授が語っているように、この連続講義が始まる約一ヵ月前の2018年10 月30日、韓国最高裁判所は日本企業に対して、元朝鮮人戦時労働者の原告4人に慰謝料 支払いを命じる驚くべき判決を下し、日韓関係がかつてなく悪化した。李栄薫教授らは、この判決の歴史認識のでたらめさに強い危機感を感じたのだ。

 当初は「危機韓国の根源:反日種族主義」の中で扱われる予定だった慰安婦問題が、別 途「日本軍慰安婦問題の真実」というタイトルで独立した。その結果、「危機韓国の根源: 反日種族主義」が30回(注10)、「日本軍慰安婦問題の真実」が16回の連続講義としてアップされ、最後の「日本軍慰安婦問題の真実」第16回が、2019年6月20日にアップされた。

 

(4)2019年7月の『反日種族主義』出版

その講義ノートを整理して、2019年7月10日に韓国で『反日種族主義』が出版された。この本が、なんと11万部売れるベストセラーになった。(同年11月には日本語版が出版され、40万部以上が売れるやはりベストセラーになった。)

ちょうど同書が出版された頃、文在寅政権は日本が取った半導体素材の輸出管理強化 を対韓報復だとフレームアップして、大規模な反日キャンペーンを行っていた。その中   で、反日を批判する同書に対して大手の新聞やテレビは無視するか、激しい非難を加え   た。しかし、それがかえって、そこまで文在寅政権側が批判するなら読んでみようかという、反文在寅側の反応を呼び、ほとんど宣伝をしない同書が静かなベストセラーとなった。

 

  • 「吐き気がする」曹国法相の罵倒

文在寅政権発足時から大統領府で民情首席秘書官を務め、法務部長官に就任するため 秘書官を辞任していた曹国氏が、8月5日SNSに次のような文をアップした。

「(『反日種族主義』の)主張を公開的に提起する学者、これに同調する一部政治家と記 者を「不逆、売国、親日派」という呼称のほか何と呼べばよいのか、私は分からない。

彼らをこのように批判することは全体主義的、ファシズム的発想であり、国民を二つに分裂させる「2分法」だという一部知識人たちの高尚な詭弁には語彙喪失だ。

大韓民国という民主共和国の正統性と存立根拠を否定して、日本政府の主張をオーム のように反復する言動も「表現の自由」として認めよう。政治的民主主義が定着した韓国社会では、憲法精神を否定するこのような内容を持つ本でさえも、「利敵表現物」と規定 されて発禁されはしない。しかし、その自由の行使が自ら招いた猛批判は甘受しなけれ ばならないのだ。彼らがこのような吐き気がする本を出す自由があるならば、市民は彼らを「親日派」だと呼ぶ自由がある。」

曺国氏は法務部長官になる前後から、様々な不正事件が暴露され時の人となった。そ の人物が「吐き気がする」と非難したことにより、むしろ、同書がまともなことを言っているのかも知れないという、静かな評判が広がった。

 

  • 左派テレビ局の執拗な攻撃

左派が支配する民放テレビ局も、悪質な取材と感情的な批判報道を続けた。7月29日 夜、地上波の3大ネットワークの一つであるMBCの「ストレート」という報道番組が同書を取り上げ、「虫唾の走る親日節(ぶし)」だとして激しく非難した。番組では、同書の共 同執筆者である李宇衍博士が7月2日にジュネーブの国連欧州本部シンポジウムで「賃金の民族差別はなかった」と発表している場面の映像や、出版記念会の映像を都合のよいところだけ短く放映し、激しい言葉で非難し続けた。

つづいて、8月4日、日曜日の朝、李栄薫教授が自宅からでたところ、路上で待ち伏せ していたMBCテレビ記者に無理やりカメラを向けられ、インタビューを強要された。強 い調子でカメラ撮影を止めろと繰り返し拒否しても、取材は続けられた。その中で、教 授が突きつけられたマイクをたたき落とし、記者の頬をなぐるという出来事が起きた。

李教授とその支援者らは、路上でのカメラインタビュー強要は、肖像権の侵害だとし て、その映像の使用禁止を求める仮処分申請を裁判所に行ったが、却下され、その映像 が8月12日夜、李教授らを親日売国勢力として誹謗するMBC「ストレート」で長時間放映された。

 

  • 「親日称賛禁止法」制定への動き

翌2020年になっても、『反日種族主義』への執拗な攻撃は続く。合計1千万部以上売れた現代史大河小説の作家である趙廷来(注11)が、2020年10月12日「(『反日種族主義』の著者)李栄薫は新種の売国奴で民族反逆者」「日本留学者はみな民族反逆者」「150万の親日派を、法を制定して断罪しなければならない」と激しい罵倒を行った。

すでに、2020年4月の総選挙で6割の議席を得た左派与党「共に民主党」では、趙廷来 と同じような発想から「親日称賛禁止法」を制定して、李栄薫教授らはもちろん、歴史的事実に反する朝鮮人虐殺や慰安婦性奴隷化があったということを認めない者に刑事罰を加えよう、という議論が高まっている。同党最高委員である薛勳議員は、ネットメディア

「Eデイリー」(2020年5月14日)とのインタビューで、「親日称賛禁止法」制定の必要性について次のように熱弁した。

「同法を発議する計画がある。昨年露骨な親日歴史書である『反日種族主義』を出した 李栄薫前教授などが、今度は『反日種族主義との闘争』という本を出した。これは慰安婦の歴史歪曲を反復し、被害者たちに対する二次加害をはばからないことだ。李前教授は日本軍慰安所は『高収益市場、強制徴用はなかった』などの主張をくり返した。『強制動 員被害者たちの陳述は嘘の行進』として大法院の強制動員賠償判決まで非難した。」とし て、「親日称賛禁止法」で李栄薫前教授らを処罰すべきだと強調した。

同法制定運動を続けてきた光復会(独立運動家子孫の会)は、4月の総選挙で選挙区立 候補者1109名にアンケート調査を行い、回答者568名のうち96%にあたる546名が賛成したとして、与党に圧力をかけている。

 

  • 元慰安婦らが刑事告発

すでに李栄薫前教授らへの刑事罰を求める動きは始まっている。2020年7月2日、韓国与党「共に民主党」所属で国会の外交統一委員長である宋永吉議員が、元慰安婦や元戦   時労働者の遺族らとともに国会内で記者会見を開き、李栄薫氏と、講義中に『反日種族主義』を取り上げて大学当局から懲戒処分を受けた柳錫春・延世大教授らを「歴史歪曲があまりにも深刻で到底黙過できない」と非難し、名誉毀損、死者に対する名誉毀損、国家保安法違反などで刑事告訴すると発表した。それに対して李栄薫前教授らは会見を開いて、自分たちの主張は学問的研究の結果であり、異なる学説を唱える人たちに公開討論をし ようと繰り返し求めてきた、学問的討論を通じず一方的に「歴史歪曲」と決めつける宋議員らの言動は、言論と学問の自由の重大な侵害だ、と語気を強めた。

7月7日、元慰安婦ら10人が、名誉毀損と国家保安法違反で、『反日種族主義』の著者の李栄薫、朱益鍾、李宇衍の3氏と柳錫春・延世大教授の4人を、ソウル中央地検に刑事告訴した。告訴人は、元慰安婦で最近、挺対協を激しく批判して話題になった李容洙氏と、元慰安婦の遺族3人、元戦時労働者の遺族3人、元海軍軍属で中国で戦死して靖国神社 に祀られている故李花燮氏の遺族1人だ。(注12)

『反日種族主義』の著者が、元慰安婦や戦時労働者の遺族から刑事告訴されるのは今回が初めてのことだ。第3者が行う「告発」とは異なり、名誉を毀損されたと主張する当事 者が行う「告訴」だから、検察が捜査を始めることは間違いない。特に、告訴が提出され たソウル中央地検は今年1月、地検長以下の幹部が文在寅政権寄りの検事に総入れ替えさ れ、それまで進めていた文在寅政権側近らの捜査を妨害する偏向人事だと批判されてい   た。そのソウル中央地検が告訴を受けたのだから、刑事事件として起訴する可能性は高い。李栄薫氏らは「これから長く厳しい法廷闘争を戦うことを覚悟している。学問の自由を

守るため戦う」と語っている。

李栄薫氏らは告訴後すぐ、警察に呼び出され事情聴取をされたが、本稿執筆の2021年 2月初め現在、起訴されるのかどうかの処分が下らずにいる段階だ。つまり、いまだに刑事事件の被告として法廷に引き出される可能性が残っている。

なお、2020年10月29日、ソウル西部地検は柳錫春前延世大教授(2020年8月定年退職) を名誉棄損容疑で在宅起訴した。(注13)

 

  • 保守勢力の沈黙、主流学界の無視

李栄薫教授らが影響を与えたいと思っていた伝統的な保守勢力、すなわち保守新聞、 保守野党は、左派から「親日派」と攻撃されるのを恐れてか、同書を無視するか、あるいは左派の攻撃の尻馬に乗り、読みもしないで批判の声をあげた。また、学界の主流は、 実証的な同書の通説批判に対して学術的な論争をすることを避け、無視した。そして、 主流学会の周辺で政治運動に近い活動をしている反日学者らが感情的な批判をくり返し た。何回か同書を批判するセミナーが開かれたが、李栄薫教授らはいつでも討論に応じ ると明言しているにもかかわらず、その席に呼ばれることはなかった。

その批判に対して、李栄薫教授らは2020年5月に『反日種族主義との闘争』という二冊 目の本を出して、実証的に批判に反論した。

以上で見たように、2019年7月の反日種族主義出版は、その前年の韓国最高裁の戦 時労働者裁判不当判決が契機となり、それまで大きなタブーの下で実証的研究を積み重 ねてきた李栄薫教授とその弟子たちが、満を持して激しい批判にさらされることを覚悟 した上で、行った勇気ある行動だった。文在寅政権が事実に反する反日歴史キャンペー ンを展開し、日韓関係ばかりか韓国という国そのものを破壊しようとしているという強い危機感が、その行動の背景にあった。そのことについて私は、『歴史認識問題研究』第6号 掲載の拙稿「大韓民国の亡国の危機を告発する憂国の書」で詳しく論じた。

 

→  <続く>:  <第3回>:最終回

Ⅱ 「アンチ反日」運動の誕生と活発な活動

(1)2019年のアンチ反日デモ

 

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<写真>
2021年1月26日(火)に首相官邸にて、「ソウル中央地方裁判所の慰安婦判決に抗議する日韓法律家・知識人共同声明」を加藤勝信官房長官に手交した時の写真
・「歴史認識問題研究会」(HARC) 1/26 より

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<参考の YouTube 動画>

 

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  1. 「ソウル大学教授が「慰安婦性奴隷説」を全否定」『絶望の韓国、悲劇の朴槿惠(月刊Hanadaセレク ション)』飛鳥新社2018年4月9日、「韓国人教授が反日韓国を徹底批判 」『Hanada』2019年5月号、「月報 朝鮮半島(第24回)韓国にもいる「噓を嫌う」良識派」『Will』2019年8月号、「月報 朝鮮半島(第25回)韓国人はなぜウソつきなのか」『Will』2019年9 月号、「「反日」の本質を暴く : アンチ反日との思想的内戦」『正論 』2019年10月号、「月報 朝鮮半島(第26回)韓国の良識派、命懸けの戦い」『Will』2019年10月号、「大韓民国の亡国の危機を告発する憂国の書 (特集『反日種族主義』の徹底解剖)」『歴史認識問題研究』6号、「韓国で広がる「アンチ反日」」『正論』2020年1月号、「嘘の歴史観が破壊する韓国の自由民主主義」『正論』2020年6月号、「月報 朝鮮半島(第39回)『反日種族主義』の著者を死刑に!?」『Will 』2020年12月号、「月報 朝鮮半島(第41回)韓国良識派 真実(タブー) への挑戦」『Will』2021年2月号、「月報 朝鮮半島(第42回)韓国のアンチ反日と労働党大会」『Will』2021年3月号など
  1. 1987年に安秉直ソウル大学教授、李大根成均館大教授が創設した落星台経済研究所が、植民地近代化論研究の中心となった。李栄薫氏は安秉直氏の弟子で同研究所の中心メンバー。植民地近  代化論の初期の研究は、安秉直等編『近代朝鮮の経済構造』(韓国語)比峰出版社1988年、中村哲・安秉直編『近代朝鮮工業化の研究』日本評論社1993 年等を参照。
  2. 李栄薫氏は高校用の韓国近現代史教科書の左派偏向がひどいとして、2005年に教科書フォーラムという団体を結成して共同代表となり、翌2006年『代案教科書』というタイトルの高校生用の  韓国近現代史の教材を共同執筆して出版した。また、2006年、数人の右派学者らとともに当時の主流の左派の歴史観を批判する実証論文集『解放前後史の再認識』を編集出版した。また、そ    の内容を一般向けにまとめた『大韓民国の物語』を出版し、啓蒙活動に乗り出した。なお、『大韓 民国の物語』は、2009年に文藝春秋社から日本語版が出版された。
  3. 『反日種族主義』を刊行するまでの間、自分がそのタブーに縛られていたことついて、李栄薫氏  は次のように率直に認めている。

「二〇一九年七月に刊行された『反日種族主義』は、共著者の一人である私にとって自由人の宣言 のようなものでした。韓国の種族主義が強要した自己検閲によって、実に長い間できずにいた話   を、みなすっきりと明かすことができたからです。一編、二編とペンを進めながら、いかなるタ   ブーも設けまい、と固く決心しました。そして大きな解放感を味わいました」(李栄薫教授編著『反日種族主義との闘争』日本語版4頁。)

  1. 『大韓民国の物語』日本語版57頁
  2. このユーチューブ放送の内容については、前掲拙稿「ソウル大学教授が「慰安婦性奴隷説」を全  否定」参照
  3. かなり長々と慎重に語っていた。その部分の拙訳は以下の通り。

「このような状態の慰安所の女性たちをどのように規定すればよいのか。たいへん難しく、論争的で、政治的な問題です。この問題で最も知られている日本の研究者で   ある吉見義明という人は、性奴隷だと言いました。韓国の多くの学者たちも性奴隷説に従ってい   ます。私も2007年に吉見義明という人の論文や本を読んで、果たしてそうだなと思い、『大韓民国の物語』という本で性奴隷説を支持したことがあります。彼女達は移動の自由がなく監禁され   ていた、日常的な殴打、暴力の下にいた、ほとんど報酬を受けることができなかった、これが奴   隷の根拠になります。吉見義明氏が奴隷説を主張するときにもっとも重視したのが移動、身体の   自由がなかったという点で、思うままに行き来ができなかったとして、いくつかの事例を話しました。

しかし、私が色々な史料を検討してみた結果、そのような程度の身体的な拘束は、公娼制度下   では日常的にあるものではなかっただろうか。先程私が申し上げたように、娼妓たちは貸座敷の   外に出て生活することができない、その地域を離脱することはできないとされている、その程度   の、ある職業による特殊な制約を超えるものだっただろうか、という疑問を持ちます。

文玉珠氏の手記を読んでも月に2回、私が紹介した慰安所管理人の日記でも月に2回は休日で     す。休日は自由に外出をしました。文玉珠氏は、私は今でも目をつぶってもラングーンの市内の    路地裏を思い出す程度だと言いました。異国の都市で多様なショッピングを楽しみもした。勤務    中には離脱は不可能だったが、休日はあったということです。契約期間の前には自由に離脱する    ことはできなかった。この程度の人身的拘束だった。そして契約期間が満了したり、一定の条件   が整えば、廃業申告をすると多くの人たちが受け入れられた、という状況でした。

吉見氏はこれを知らなかったようです。今回再度吉見の本を見たのですが、根拠がとても断片   的で不十分です。そのような意味で、人身の監禁による性奴隷説は根拠がたいへん不十分だと私   はいま、申し上げたいです。

次に報酬を受けられなかったということですが、これは公娼制の基本趣旨と合致していません。 軍の士気と関連する問題であるので、慰安所内で私的暴力が使われることを軍は許すことがで

きませんでした。戦争という状況の中で、私的暴力が容易に容認される雰囲気ではないというこ   とを、私は申し上げたい。慰安所日記のどこを見ても、私的な暴力の行使はない。文玉珠氏の自   叙伝でも、雇い主になぐられたとか前借り金のためいじめられたとかという話はありません。

とても極度の高労働、高収益産業だったので、200円、300円、千円程度の前貸し金は人身を 拘束するくびきにはなりがたかった、容易に返すことが出来た。先程の日記の送金の記録でも、ある人は1万2千円をも実家に送金し、文玉珠氏は5千円を実家に送金し2万5千円を軍事貯金で持っていた。このような高労働高収益産業で、債務奴隷的な状況は発生しなかった。もちろん、 個人によってはそのような状況があったかもしれないが、一般化することはできない。

それから、私はある意味では奴隷専門家です。朝鮮の奴婢について研究したからです。奴隷に   関する本もたくさん読みました。奴隷の本質は何かといえば、法能力の欠如です。法的人格の否   定、人間ではないのです。なぐられても訴えるところもないし、父親や母親が殴り殺されても告   訴する能力もない。

米国の奴隷時代には、奴隷が殺人現場を目撃しても法廷で証言することができなかった。人間   ではないからです。あの白人が犯罪を犯すところを見たと言っても、その証言が法廷で採用され   ることはありませんでした。このように奴隷とは法能力が欠如した状態、法能力を認定する社会   的な人格が否定されている状態、それを奴隷というのです。

慰安婦たちにそのような話しをするのは難しいです。置かれた立場がたいへん弱かったことは   確かだが、法能力が剥奪された無権利状態だったとは言えません。

たとえば、文玉珠氏の場合は、私は今回読んで驚きましたが、慰安所にきた日本人兵士が乱暴をはたらいた。ひどい人で日本刀を抜いて脅したので、立ち向かった。文玉珠氏は凄い人物です。 立ち向かってその日本刀を奪って逆に兵士を刺した。胸に刺さり兵士は死んでしまった。そうしたら軍属裁判が開かれました。私は軍属だと主張したので、軍属の資格で裁判が開かれた。文玉珠氏は、あの人が最初に乱暴してきた。慰安所に来て日本刀を振り回すことはよいことなのか、   私は正当防衛だと主張したので無罪になった。

私が言いたいのは、本当の意味の奴隷であれば裁判を受ける権利もないのです。ところが裁判   を受けて正当防衛が認められて、軍法会議で無罪の判決が下された。ですから私は性奴隷説につ   いて、色々な点でもう1回再検討しなければならない。奴隷という言葉はたいへん誤解を受けや     すい。だから私は朝鮮時代の奴婢について、米国の学者たちが奴隷という言葉を使うことに対し   て相当なる留保をしなければならない、という主張を多くしている人間です。

性奴隷とはとても扇情的な表現ですが、厳格な意味で、学術的な要件を備えているかというこ

とについて、私は懐疑的です。」

  1. 李栄薫氏はホームページに掲げている「李承晩学堂校長の挨拶」で、次のように設立目的につい  て書いている。

「大韓民国は自由人の共和国だ。解放後、多くの人が左右合作をしてでも統一政府を立てなけ     ればならないと主張した。李承晩はそれに反対した。共産主義と妥協すれば、遠くない将来に共   産主義の国になることは世界の多くの国の歴史が証明している。

李承晩大統領がいなければ、大韓民国は生まれなかったか、別の国になっていただろう。李承   晩大統領は今日まで続く国家の基礎を据えた。国民直選による大統領中心制の政府形態の樹立、   農地改革の実施、共産侵略戦争の防衛、韓米軍事同盟の締結、国家経済の基礎工業の建設など、   彼の建国功績は青史に長く輝く。

それにもかかわらず、我が国国民の彼に対する評価は低い。我々の歴史の真の姿に対する理解   が不足している中で、多くの誤解と偏見が無防備な状態で伝わってきたためだ。それでは自由人   の共和国としての大韓民国の将来も明るくない。本学堂は李承晩大統領の政治哲学、独立運動、   建国業績を正しく認識して、それを広く国民的教養として伝える目的で設立された。

自由民主の市民であれば、誰でも学堂の活動に参加できる。」

  1. 「李承晩学堂の堂訓
    1. 我々は自由で独立した個人だ
    2. 大韓民国は自由人の共和国だ
    3. 我々は自由通商と永久平和の世界を志向する
    4. 我々はウソを排撃し名利に幻惑されない」
  2. 30回の講義のタイトルと担当者を紹介する。
  • 反日種族主義打破シリーズを始めるにあたり 李栄薫    2018年12月10日
  • 嘘の国民、嘘の政治、嘘の裁判 李栄薫
  • 鉄釘騒動 金容三
  • 強制連行の神話 李宇衍
  • 果たして強制労働だったか 李宇衍
  • 中央庁解体の真実——大韓民国の歴史を消す 金容三
  • 朝鮮人労働者賃金差別の真実 李宇衍
  • 荒唐無稽「アリラン」 李栄薫
  • 学徒志願兵、記憶と忘却の政治史 鄭安基
  • 食糧を収奪した? 金洛年
  • 陸軍特別志願兵、彼らは誰なのか? 鄭安基
  • 日本の植民地支配方式 金洛年
  • 片手にはピストルを、別の片手には測量機を? 李栄薫
  • 最初から請求するものがあまりなかった— 請求権協定の真実 朱益鍾
  • 厚顔無恥と愚かさ、韓日会談決死反対 朱益鍾
  • 亡国の暗君が啓蒙君主に化ける 金容三
  • 誰のための徴兵か 鄭安基

18 「乙巳五賊」李完用のための弁明     金容三

  • Never ending story —「賠償!賠償!賠償!」朱益鍾
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    1. 趙廷来は80年代に「太白山脈」という、日本統治の終焉から朝鮮戦争までの時期を扱った全10巻の現代史大河小説を書き、合計700万部も出る大ベストセラー作家となった。80年代に大学に 通った者たちの大多数がむさぼり読んだ小説だ。これを読んで反共意識を捨て去った者らが多  い。建国直後の韓国を転覆するために武力蜂起した共産主義ゲリラの活動を同情的に描いて物議    を醸し、国家保安法違反容疑で捜査されもした。その後、趙廷来は日本統治時代を舞台にした「ア リラン」という全9巻の大河小説を書き、こちらも350万部のベストセラーになった。しかし、「ア リラン」では日本警察が裁判もなしに罪に定めて衆人環視の下で朝鮮人を射殺するなど、荒唐無    稽な反日叙述が多い。李栄薫前教授から「狂気がこもった憎悪の歴史小説」「捏造だ」などと厳し く批判されていた。
    2. 60頁以上にもなる大部な告訴状に、西岡力の名前が2カ所で出ていた。名誉毀損にあたる李栄薫  氏らの主張をまとめた部分で、慰安婦に関する記述と、戦時労働者に関する記述の中で、次のよ   うに書かれていた。

「慰安婦は日本政府当局の強制募集がなかったという事実を前提にした表現であり…これらの     内容は泰郁彦や日本の西岡力のような代表的右派論客がしてきた主張であり、慰安婦募集過程で   強制連行や就業詐欺があったとしても、その責任は募集業者にあるという論理は、日本の右派論   客たちの専有物です。

すなわち、被告訴人たちは日本の右派論客たちが喜んで使用する論理をそのまま借用して、自   身の著書で慰安婦関連の歴史的事実に関して虚偽事実を記述したということです」

「被告訴人2李宇衍は、実際に朝鮮人に対する強制徴用が実施された時期は1944年9月から1945年4月までの約8ヵ月の『徴用』時期だけで、1939年9月から実施された『募集』とその後につづいた『官斡旋』は強制連行ではなく、朝鮮人たちが自発的に参加した日本行きだったとする、 日本の右派論客西岡力の『強制連行虚構論』をそのまま受容しました。」

ここで強調するが、李栄薫氏たちの慰安婦に関する体系的で実証的な研究から私が大いに学ん   だのであって、私の研究を李栄薫氏たちが借用したことはないし、戦時労働者に関しても私が李   宇衍氏の緻密な実証研究から多くのことを学んだのであって、その反対ではない。その上、ここ   で書かれている慰安婦と戦時労働者に関する事実の記述は、虚偽だとすぐに断定できるものでは   ない。私はこの記述は真実だと考えているが、少なくともいくつかある学問上の対立する学説の   一つであることは間違いない。それを書物に書くことが刑事罰の対象になるなら、学問の自由は   なくなってしまう。

もう一つ見逃せないのは、名誉毀損に加えて国家保安法違反も告訴内容に含まれていること       だ。国家保安法は北朝鮮や朝鮮総連を反国家団体に指定し、その首魁を最高死刑にし、それを称    賛する者も刑事罰の対象としている。しかし、当然のことだが、日本は反国家団体に指定されて   いない。それなのになぜ、国家保安法違反が出てくるのか。

告訴状を見ると、日本右翼が反国家団体だという、次のような奇想天外な主張がなされていた。

「被告訴人の著書および著作物で、日本の植民地政策および強制連行問題などに関する日本右翼     勢力(反国家団体)の論理をそのまま借用して日本の植民地近代化論を強調し、強制徴用および   慰安婦被害者たちを卑下・誹謗し、日本帝国主義の成果を称賛するなどの虚偽事実を伝播して宣   伝扇動する行為は、国家保安法上の称賛・鼓舞罪に該当する犯罪行為です」

  1. 柳錫春「ソウル西部地方検察庁の起訴状を受けて」『月刊 Hanadaプラス』2021年1月8日公開、https://hanada.plus.jp/articles/591

14. 前掲拙稿『正論』2019年10月号

15.「世界遺産登録,韓国民間団体が捏造資料で日本の登録を妨害 日本人写真「強制連行」として悪用」『産経新聞』2016年4月3日

16. 西岡が李宇衍氏から聞き取り。「無関係写真を「徴用工」 韓国、小6社会教科書に」『産経新聞』2019年3月20日、「韓国教科書の「徴用工写真」訂正へ 誤り認める『」産経新聞』2019年3月22日

17. 拙稿「反日民族主義に反対する初めてのソウル街頭集会」『歴史認識問題研究』第5号 2019年9 月19日

18. 「「歴史歪曲反日銅像設置中断せよ」…反日銅像真実糾明共同対策委員会が記者会見」『中央日報』2019年12月3日

19.   https://namu.wiki/w/주동식(정치인)  No.-3.4    2021年2月3日閲覧

20. 「崔德孝反日銅像真実究明共同対策委員会・共同代表インタビュー」『ペンアンドマイクTV』2020 年3月1日

https://youtu.be/c4uDBnN-eTI      2021年2月3日閲覧

21.  https://jinf.jp/feedback/archives/28349   2021年2月3日閲覧

22. 李宇衍氏から提供を受けた声明を、西岡が全訳した。

23.  https://mediawatch.kr/news/article.html?no=244669   2021年2月3日閲覧

24.  黃意元・西岡力(翻訳・解説)「若き韓国人が書いた慰安婦証言の変転」『月刊正論』2020年8月号

25.  拙稿「韓国でも暴かれ始めた慰安婦問題の虚構」『国基研ろんだん』2020年5月25日

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