安倍さんは統一協会と関係ない。(3)~敵対関係という「関係」~ −中川晴久−

 

 

 

中川晴久
東京キリスト教神学研究所幹事
日本キリスト神学院院長
SALTY-論説委員

 世間ではまだほとんど取り上げられていない重要な問題があります。それは安倍元総理が第一次政権より「戦後レジームからの脱却」を掲げ、その後も一貫して取り組んできた教育改革です。この教育改革は、統一協会による日本人支配を阻止するために必要不可欠なものでした。本来、統一協会問題を語る上ではもっとも語られるべきテーマなのです。

< そもそも「関係」とは何か >

 とかくアンチ的なメディアは、安倍元総理と統一協会の「関係」を何とかほじくり返したいと躍起になっています。
では「関係」とは何をもって関係というのでしょうか。
 政治家は誰とでも挨拶をします。そのとき、どこまでが「関係」を持ったと言えるのか。どこでその「関係」を持つ持たないの線引きをするのか。その線引きの条件は何か。「関係」があったというならば、それはメディアが騒ぐ意味での「関係」か、まるで違う意味での「関係」か。
さらに、
その「関係」の「関係とは何かという話になってきて、傍論に大きく逸れていくことになります。そもそも敵対関係であっても、「関係」です。ですから「関係」があった無かったというのは言語の問題でしかなく、要らぬ言葉遊びに振り回されるだけに終わるのがこの手の話です。だからそうならないように、もっと本質的なことが語られていかねばなりません。

< 脱会者の回復に必要なこと >

統一協会の『原理講論』には、日本について「日本は女性国家」「サタン側のエバ(の国)」と表現され、韓国中心主義および反日的歴史観で彩られています(『原理講論』第6章第3節3-1等)。このような教えを受ける側の日本人が、学校教育おいて自虐史観を刷り込まれているならば、まるで免疫力がまるでない状態で統一協会の教えに晒されることになります。

 かつて統一協会の脱会者の一人が「脱会後のメンタル回復にあって最も良いのは、小林よしのり著『天皇論』を読むのがいい。」と教えてくれたことがあります。小林よりのりの『天皇論』は、政治的保守の間ではよく読まれているものです。私も読んでみたのですが、その時はなぜこれが脱会者のメンタルに良いのか分からずにいました。しかしある時、はっと気づかされました。傷つけられていた日本人としての自尊心を回復することは、統一協会問題においては最も根本的なのです。

<統一協会の教え>

 統一協会が厄介なのは、教義によるねじれがあることです。統一協会の教えは政治的には保守に見えて、その実は反日です。ここを見ないと訳がわからず、逆にここを押さえれば見えてきます。

 韓国は「神の国」側であり北朝鮮や中国などの共産主義国は「サタンの国」です。日本もまた「サタンの国」側であったけれども、女性型のエバの国という立ち位置です。
 教祖の文鮮明自叙伝『平和を愛する世界人として』の「日本語版によせて【日本が生き残る道】」には、以下のように書かれています。
 「さて、文先生は日本の行くべき道について、どのように語っていらっしゃるのでしょうか。・・・現在、神の摂理から見れば、日本は世界の中でエバ国家(母の国)の使命を担っていると言われているのです。・・・このような神の摂理観から、日本は世界の母親として、たとえ飢えたとしても世界の国々を保護し、経済的援助をして育てていくのです。日本が世界のために投入し、投入したことすら忘れる母親のような立場に立つことができるならば、子供の立場にある世界の国々は日本を慕い、すべての栄光を日本が受けるようになるといわれるのです。・・・ところで日本が母の国であるとすれば、アダム国家(父の国)の立場にあるのはどこの国でしょうか。それが韓国・朝鮮です。そのため日本は世界のために貢献するとともに、朝鮮半島の南北統一のために生きなければならないと語られています。」
エバの国である日本は、神の国側の韓国をアダムとするためにサタンを分立(切り離す)せねばならず、そのためには人間の責任分担としてそれに必要な蕩減(とうげん)条件を立てねばなりません。「蕩減」とは「ある債務者が一部の少額だけを返済することをもって、負債の全額を清算したと見なす」ことと統一協会では教えています。私の表現でいえば、日本が韓国にした歴史的な「罪滅ぼし」をするということです。だから、お金を集めて文鮮明に捧げること(万物復帰)もまた日本の統一協会信者(食口)には必要なことになります。
 日本は特別な存在で、サタンの国なのだけれどもエバの国としての祝福に預かっていると統一協会では教えます。それゆえに日本はアダムである韓国に仕え、ともにサタンの国と戦う必要があるのです。だから、日本は軍事力を持ちサタンの共産主義国と戦うための準備をせねばなりません。だから、統一協会はスパイ防止法も賛成するし憲法9条も変えねばならないもと考えています。しかし、それをもっても韓国に仕えるのです。
 このように統一協会の教えは、ある部分では政治的には保守と親和性があります。しかし、その根底には強度の反日があり、それがカルト性を生み出しているのです。日本人の自虐史観によって罪責感を与え、「罪滅ぼし」の意識を利用して日本人にお金集め(万物復帰)をさせているわけです。
 もちろん、韓国にあって反日は国是のようなものであり、別段に破壊的でも反社会的でもありません。しかし、日本にあっては破壊的・反社会的カルト性を生みます。

 彼らは、思想でなく教義で動きます。
保守思想でなく統一原理で動いているのです。
政治家はそれを見抜かねばなりません。

< 政治家は結果で評価するもの ー戦後レジームからの脱却ー >

 安倍元総理はそのことを別の視点から見抜いていたのだと私は考えています。つまり、それらは「戦後レジーム」が生み出した日本の病理という視点です。
ですから、まさにその部分にメスを入れて、根本からの対処に取り組んでいたわけです。
 政治家は、目に見えるところ本心とは真逆の振る舞いを見せます。しかし、政治家は結果で評価せねばなりません。政治家が結果で評価されるならば、安倍元総理は統一協会とは実質的に「敵対の関係」にあったともいえます。

 第一次安倍政権(2006年9月‐2007年8月)において、2006年4月、自民・公明両党の教育基本法改正に関する与党検討会は、愛国心の直接的な表現を避け、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」とすることで合意しました。これは 特に教育目標(同法2条)にコミットしたものでした。また、この教育目標に沿って第二次安倍政権以降、日本国の尊厳を取り戻すための教育改革が行われました。

 目標設定に対するこだわりについて、安倍元総理が2006年7月に自民党総裁選(同年9月)の準備のために出版した『美しい国へ』(文春秋新書)に書かれています。安倍元総理は第7章「教育の再生」にて以下のように語っています。

 「教育の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家をつくることだ。そして教育の再興は国家の任である。」「まず義務教育は何を目標にするのかを、あらためてはっきりさせねばならない。」

 さらに教育改革をする必要性を次のように語っています。
 「戦後日本は、六十年前の戦争の原因と敗戦の理由をひたすら国家主義に求めた。その結果、戦後の日本人の心性のどこかに、国家=悪という方程式がビルトインされてしまった。だから、国家的見地からの発想がなかなかできない。いやむしろ忌避(きひ)するような傾向が強い。戦後教育の蹉跌(さてつ)のひとつである。」
 このような「戦後レジーム」を脱却するために手本としたのが、1980年代当時のイギリス首相サッチャーによる教育改革でした。
 「サッチャー首相は、イギリス人の精神、とりわけ若者の精神を鍛えなおすという、びっくりするような意識改革を行っているのである。それは、壮大な教育改革であった。」(同書)
サッチャー首相が行った教育改革(「1988年教育改革法」)は2つのことを断行しました。「自虐的な偏向教育の是正」と「教育水準の向上」です。この2つについて、安倍元総理は次のようにいいます。
「お気づきの方もいると思うが、どちらも、日本の教育が抱えているといわれる課題と重なっている。・・・自虐的な歴史教育は、敗戦国に特有のことだと思っていたから、戦勝国のイギリスでもそのような教育が行われていると聞いて、正直、はじめは大変驚いた。聞いてみると、これは長年にわたってイギリスがおこなってきた帝国主義の反動なのだという。・・・かつてのイギリスの植民地政策を思い浮かべれば、イギリスの歴史は収奪の歴史であり、国内に自虐的な自国の歴史観が生まれてもおかしくはない。長い間のイギリス病が、敗戦国シンドロームに似た感性を教育界にはびこらせたのかもしれない。」

< 最後に >

 政治家は結果で判断評価されねばなりません。
 統一協会問題のカルト性の根本は、反日思想にあります。それに対する日本における戦後の自虐史観が呼応してしまい、その被害が甚大なものとなっているのです。
 そのとき、安倍元総理がいかに統一協会の利益とは真逆に、むしろ統一協会から日本国民を守る方向において努力されていたかが分かっていただけたと思います。

※ 文末参照

教育基本法改正
教育の目的:「人格の完成」と「国家・社会の形成者としての資質の育成」。

平成26年1月改正、平成26年度教科書検定から適用
教科書検定の改善等について
〇検定基準のうち、社会科(地図を除く)固有の条件(高等学校の検定基準にあっては地理歴史科(地図を除く)及び公民科)について以下を改正。
・未確定な時事的事象について記述する場合に、特定の事柄を強調し過ぎていたりするところはないことを明確化する。
・近現代の歴史的事象のうち、通説的な見解がない数字などの事項について記述する場合には、通説的な見解がないことが明示され、児童生徒が誤解しないようにすることを定める。
・閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解や最高裁判所の判例がある場合には、それらに基づいた記述がされていることを定める。

SALTY記事
安倍さんは統一協会と関係ない。(1)
https://salty-japan.net/2022/07/10/stopfake/

https://salty-japan.net/2022/07/23/stopfake2/

クリスチャントゥデイ
「統一協会と安倍元総理は関係がない」と私が言う理由
 「心のレイプ」の被害者救済を https://www.christiantoday.co.jp/…/unification-church…