憲政史上最長の宰相…それだけで国葬にふさわしいのでは −田口 望−

写真 安倍元首相の国葬儀の会場となる日本武道館
ウィキペディアより

田口 望

日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  論説委員

安倍元首相を国葬にすべき、最大にして十二分な理由

 国葬の是非について「世論を二分している」とマスコミがいいます。岸田首相は安倍元首相を国葬にする理由として国会の閉会中審査で繰り返し「国政選挙において6回にわたり国民の信任を得ながら憲政史上最長の8年8カ月にわたり首相の重責を担った」ことを説きました。筆者としては憲政史上最長の首相、正直これだけで国葬にすべき十二分な理由であると思っています。

在職年数が物言う外交儀礼

 上皇陛下が天皇であられたとき、平成30年に 在位30年記念式典が開かれました。その時、外交使節団が祝辞を述べたのですが、日本は200近くの国と外交を結んでおり、在京の駐日特命全権大使も200人近くいます。200人全員が祝辞を述べているとそれだけで、式典が終わってしまいますので、世界中の駐日大使の中から外交団長と一人が代表して祝辞を述べました。

 団長に選ばれた大使は中国大使でもなく、米国大使でも英国大使でもなく、サンマリノ共和国の駐日特命全権大使であるマンリオ・ガデロ閣下でした。

 去年の2月23日には今上陛下の誕生日でしたが、そこでも外交使節団が祝辞を述べる機会がありました。外交団長として選ばれたのは独国大使でも仏国大使でもなく、またしてもサンマリノ共和国のマンリオ・ガデロ閣下でした。今年の2月23日の天皇誕生日でも外交団長として祝辞を述べたのはマンリオ・ガデロ閣下でした。

 我が国に集まる駐日大使のすべてを代表する駐日サンマリノ共和国大使…いったいどんな力をもっているのでしょうか?

 実はなんのことない、外交儀礼上国の大小にかかわらず、在職日数が一番長い人を偉い人として建てるのです。マンリオ大使は2002年から駐日大使をずっと続けていてかれこれ20年になります。ですから、サンマリノという、世界地図で見ても豆粒のようにしか見えない、イタリア共和国に周囲を囲まれた小国の大使であっても日本においてはそれだけで必要十分な条件として外交団長として、重んじられるのです。

 この間のエリザベス英女王の国葬での席次もそうでした。英国王族→英連邦の総督・首相→世界の君主(在職年数順)→世界の大統領(在職年数順)→世界の行政長官首相(在職年数順)

その政治家が良い政治家か悪い政治家か…能力が高いか低いかよりも何をおいても、在職年数がものをいうのです。

安倍元首相の首相在任年数最長であることはそのまま偉業とされる

 翻って、安倍元総理の国葬は憲政史上最長の首相在職年数を誇った人の葬儀なのですから、この人と国葬にせずして政治家で誰が国葬になるのか、そして、この人を国葬にしないのなら、その国は政治家、リーダーシップを発揮する人に敬意を払わないのかと逆に奇異にみられることでしょう。
 「国葬にするのに国会を通せ」とか、「解散して選挙して国民に信を問え」などという人もいますが、これもおかしな話で、国葬にするのは安倍総理が憲政史上最長の総理大臣だったからで、ましてや日本は民主主義国家なのですから、在職年数が長いことの中に政治家としての評価が既に含まれているのです。非民主主義の専制国家で長期独裁政権を敷いたのとは訳が違います。

 1年ごとに首相がかわり政情が安定しないことが政治文化があったわが国で、国政選挙に6回連続で勝利し、衆参両院で4回首相に指名されたからこそ、その結果として首相の在職日数が憲政史上最長になったのです。だからこそ国葬をもって顕彰するんです。

 アベ政治の政治的評価が定まっていないとか、安倍さんへの毀誉褒貶(きよほうへん)が激しいという人もいますが、既に評価が出ています。選挙をし、安倍晋三という政治家を8年間も総理にしたのは日本国民自身であり、安倍政治を「OKだ」安倍政治を「このまま続けろ」と国民自身が判断した結果なのです。だからこそその国民の判断に基づいて選挙で勝利し、国会で首相に指名されたわけですし、また、国葬の決定をしたのも、選挙で勝利し、国会で総理に指名された岸田総理大臣が組閣した内閣で決定したのだから、そこに瑕疵はないのです。

 選挙だ、法的根拠が等という人は、いってみれば、かけっこで4回連続で1番になった人の表彰式をするかどうか、「次にもう一回かけっこで1番になった人が決めよう」といってるようなもので、馬鹿げていると私は思っています。