安全になったイスラエル –明石清正–

 

 

明石清正
カルバリーチャペル・ロゴス東京 牧師
ロゴス・ミニストリー 代表

日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  論説委員


ITベンチャー企業とイスラエル

 「イスラエル」と聞けば、「紛争の起こっている国だけれども大丈夫?」と言うのが、大抵の人々の反応です。けれども、それは情報が入っていないだけで、イスラエルを訪れる旅行者の数は、年々増えていくばかりであり、2017年には360万人でした。その中でテロ事件によって死んだ人は、ほとんどいません。海外旅行に慣れている人は分かってきますが、往々にしてマスコミの情報はその国のごく一部で起こっていることであって、現地の本当の姿とはかけ離れていることが多いです。日本であっても、原発事故が起こったのに外国人の旅行客は年々、上昇しているのと似ています。

 イスラエルの国がちょうど70年前(1948年5月14日)に建国した時以来、おそらく今が最も平和で安全で、繁栄していると言えるでしょう。もちろん他の国々と同じように諸問題を抱えていますが、先進国に並ぶ生活を一般の人々は享受しています。領土は四国より少し大きいぐらいしかなく、国防費の比重は高く、半分が沙漠の土地なのに、そこでは農産物を輸出するほどの生産があり、また医療技術とIT技術は、世界の先端を行っています。私たちが毎日いじっているパソコンやスマホの技術は、イスラエルのベンチャー企業がなければ存在しないものばかりです。

2014年にネタニヤフ首相が訪日し、その時に安倍首相と結んだ協定により、アジア諸国の中ではかなり遅れましたが、イスラエル企業と日本企業の技術提携が一気に進んでいます。また東京オリンピックを控えてテロ対策をしなければいけませんが、そのノウハウをイスラエルから学んでいます。

 これまでアラブ連盟によるボイコットを気にして付き合っていなかった日本企業ですが、これだけの急速なイスラエルの発展があり、そして中東の地政学のバランスが根底から変えられています。もはやアラブ連盟が反イスラエルで一致しておらず、むしろ反イランと過激主義との戦いでイスラエルと協調する動きさえ見える中で、日本は安心してイスラエルと付き合えるようになりました。

歴史の化石?!− イスラエル

 しかし、歴史を俯瞰(ふかん)するならば、これは奇跡としか言いようがありません。紀元70年にローマによって都が滅ぼされて、離散の民となった人々です。しかも、激しい迫害を受けてきた民でありますが、それでもなお民族として存続し、おまけに古代言語を現代語にまで復興させ、国までが復興してしまったことです。(しかし、かつての礼拝を中心にした王国とは異なり、世俗の近代国家として続いています。)

 歴史家トインビーは、自身は無神論者であったにも関わらず、ユダヤ民族のことを「歴史の化石」と呼びました。いわばシーラカンスのような「古代生物がなぜか今も生きている」というような感覚です。そして1911年に初版で発行されたブリタニカ百科事典には、ヘブライ語についてこう書いてあるそうです。

「古代ヘブライ語の正しい発音を取り戻す可能性は、中東にユダヤ人帝国が再び建てられる可能性と同じように、程遠いものである。」

 しかし、ユダヤ人はその時には既に次々と約束の地に帰還して、間もなくして建国をしてしまったのです。このように、人々の頭の中には、ヘブライ語やイスラエルというものは、聖書のカナン人やエドム人など、古来に生きていた民族の言語、国はずでした。それが今の時代にあるという感覚を、どうしても持つことができないでいます。そして今も、「聖書」と今のイスラエルやユダヤ人と結びつける感覚が、なかなか持てないのではないか?と思います。

しかし、神は言われました。

あなたがたはわたしの証人(イザヤ書 43章10節)」

 イザヤ書には、このことをまだ生まれてもいないクロスという人を名指しして、彼が捕囚のユダヤ人を解放する、救世主的な存在として出てくることを、前もって告げておられる中で話しておられます。初めから、昔から終わりのこと、先のことを告げることによって、他の神々ではなく、わたしだけが神なのだと宣言しておられます。

イスラエル人が帰還し、国が再興し、安全を確保するまでになることは、紀元前六世紀に預言したエゼキエルによって、こう語られています。

その民は国々の民の中から導き出され、みな安らかに住んでいる。(エゼキエル書 38章8節)」

 次回は、エゼキエルが預言したことにそって、近現代のイスラエルの辿った道をご紹介したいと思います。