なぜ朝鮮学校への補助金に反対するのか −西岡力−

 

 

西岡力

日本キリスト者オピニオンサイト -SALTY-  主筆
「救う会」 会長
(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)

なぜ朝鮮学校への補助金に反対するのか

 私は北朝鮮に拉致された日本人を救う国民運動のリーダーとして、朝鮮学校への地方自治団体からの補助金を中止すべきだと訴え続けてきました。今年(平成30年)の「家族会(*1)」・「救う会(*2)」の運動方針でも、「朝鮮学校に対する自治体補助に対して、拉致に関する教育内容の観点などから反対する。各自治体への運動を継続強化する。朝鮮大学校の各種学校認可取り消しを求める運動を行う」ということを決めました。

朝鮮学校への補助金に反対する理由

 私が朝鮮学校への補助金に反対する理由は、拉致問題に関する教育内容があまりに偏向しているという点です。そもそも、この問題が浮上してきたのは平成21年、鳩山内閣が高校無償化を打ち出し、外国人学校もその対象とするという方針を明らかにしたときからです。翌平成22年、高校授業料無償化法案が可決された。このさい、朝鮮高校については教育内容がわからないから「第三者機関」を設け検討して判断するとされた。

 その頃から、北朝鮮問題専門家らから朝鮮学校の教育はカルト集団の洗脳教育のようなものであり、公的資金で補助すべきではないという意見が多数出ました。元「赤旗」平壌特派員で朝鮮問題研究者の萩原燎氏らがそのころ、朝鮮高校の現代史教科書を全文翻訳し、補助に反対する運動を展開しました。そもそも、朝鮮学校は教科書を公開しておらず、公的補助を受けるための議論の材料が不足していましたが、萩原氏らの活動によって教育内容が公開されたのです。

 驚いたことに平成22年段階で朝鮮学校の高校段階で使用されていた現代史教科書では、拉致問題について、悪いのは日本政府だとする次のような許しがたい記述がありました。

http://www.sukuukai.jp/report/item_2360.html

〈2002年9月、朝日平壌宣言発表以後、日本当局は「拉致問題」を極大化し、反共和国・ 反総連・反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることによって、日本社会には極端な民族排他主義的な雰囲気が醸成されていった。〉
(高級部3年「現代朝鮮歴史」122ページ)

 この記述では2002年9月に金正日が拉致を認め謝罪したことも、北朝鮮が一方的に横田めぐみさんたちを死亡と通報して偽の遺骨まで出してきて、多くの日本国民の怒りを生んだといういきさつも、まったく分かりません。ただ、日本当局、つまり日本政府が拉致問題を悪用して「反共和国・ 反総連・反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げ(た)」として、悪いのは日本政府だと非難しています。

重大な人権侵害であり国家主権の侵害である拉致問題について、ここまで歪曲した教育をしている学校に公的資金で補助することは絶対許せないと、私たち、被害者家族と支援者は強く考え、反対運動を展開しました。

 

 平成23年度に入り朝鮮学校は教科書の拉致に関する記述を変更しました。
余りにひどい記述に怒りの声が集まり、地方自治体からの補助金がもらえなくなることを恐れてのことでした。

〈2002年9月、朝日平壌宣言発表以後、右翼反動勢力たちにより、反共和国・反総連・ 反朝鮮人騒動が繰り広げられ、総連と在日同胞社会ではかつてない困難な状況が醸成された。〉 (高級部3年「現代朝鮮歴史」)

その変更は私たちからすると改悪でした。被害者の人権侵害問題を一切取り上げず、家族会・救う会などの国民運動を「右翼反動勢力たちによ(る)反総連、反朝鮮人騒動」ときめつけて誹謗し、あたかも私たちが在日朝鮮人の人権を抑圧しているかのように記述し、そのように子供達に教えています。

 私たちはこの記述変更が明らかになった直後に声明を出して以下のように批判しました。

1.修正後も金正日と朝鮮総連の拉致認定と謝罪を書いていない上、
2.「《拉致問題》」という語を削除したため、2002年9月以後、日本で拉致問題が大きく取り上げられたことさえ隠蔽している、
3.修正後も救出運動を「反朝鮮人騒動」と中傷する部分は変化ない、
4.反朝鮮人騒動の主体を「日本当局」から「右翼勢力」にすり換えている
5.総連が被害者であることを一層強調している、

以上5点により、私たち家族会・救う会などの国民運動をよりひどく中傷す内容となっている。

 

地方自治体による公費補助の現状

 朝鮮学校では今日までこの教科書が使われ続けているのです。このような反人権的教育にいまだに多くの地方自治体が公費で補助をしています。文部科学省も強い問題意識を持ち、平成28年3月に各地方公共団体に、朝鮮学校への補助金について、①公益性、②教育効果、③住民への情報提供等の検討を促す通知を出しています。しかし、その翌年の平成28年度の地方自治体による朝鮮学校への補助金は約3億円でした。14道府県が1億2300万円、106市区が約1億7100万円支出しており、合計2億9400万円です。

http://blogos.com/article/241737/

 

 私は朝鮮学校の偏向教育が是正されない限り、公的補助に強く反対し続けます。

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 <注>

(*1)—– 「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」
(家族会)

(*2)—– 北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会
(救う会)

*上記の写真(二枚:高級部3年「現代朝鮮歴史」122ページ)は、「救う会」のサイトより転載。
これが朝鮮学校教科書だ! 「拉致問題」「大韓機爆破事件」

・日本語訳版は、「星への歩み出版」発行の『現代朝鮮歴史 高級3』より転載。ハングル版は、日本語訳版の元の朝鮮高級学校教科書より転載 (同出版社提供)。 赤色のアンダーラインは救う会にて追加。